60歳目前の夫が「退職金でSUVに買い替える」と言っています。貯金は「800万円」ほど…老後資金として足りるでしょうか?

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「定年まであとわずか」というタイミングで、夫から「退職金でSUVに買い替えたい」と言われた場合、老後資金とのバランスに不安を感じる方もいるでしょう。   希望をかなえたい気持ちは理解できる一方で、手元の貯金が800万円という状況では、その判断が家計に与える影響も気になるところです。本記事では、60代の貯蓄事情や車の維持費、老後資金の考え方をもとに、この選択が現実的といえるのかを整理していきます。

60代の貯蓄額800万円は平均以下? 最新データから見る老後の現実

定年退職が視野に入る60歳目前の時期、貯金が800万円あるという状態は、一般的な水準と比較してどのような位置づけにあるのでしょうか。まずは、平均的なデータと比較してみましょう。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年 二人以上世帯」によると、60代・二人以上世帯における金融資産保有額の平均値は2683万円、中央値は1400万円です。
中央値とは、資産額を少ない順に並べた際にちょうど真ん中にくる数値のことです。これを見ると、今回の貯金800万円は中央値、平均値いずれにも大きく届いていないことが分かります。
平均値が跳ね上がっているのは一部の富裕層が数字を押し上げているためですが、老後には予期せぬ医療費やリフォーム費用が発生します。特に「老後2000万円問題」が話題になったように、年金だけでは毎月の生活費が不足する世帯が多く、貯金はそれらの補てんに回されることになります。
現時点で800万円という資産は、退職金を加味しても、大きな支出については慎重に判断する必要があるといえます。

退職金でSUV購入は危険? 車両代以外にかかる維持費の落とし穴

夫が希望するSUVへの買い替えですが、退職金から数百万円を支出する場合、車両価格だけでなく、「その後の維持費」が老後家計を圧迫する可能性に注意が必要です。SUVは一般的なコンパクトカーや軽自動車と比較して、タイヤ代、自動車税、自動車重量税などが高くなる傾向にあります。
また、車体が重いため燃費性能も一般的なコンパクトカーなどに劣ることが多く、ガソリン代の負担も増えやすくなります。定年後は現役時代に比べて収入が減少するケースが多いため、こうした固定費の増大は家計に重くのしかかるでしょう。

老後資金の不足を回避する! 貯金800万円+退職金で守るべき優先順位

老後の安心を守るためには、資金の使い道に優先順位をつけることが不可欠です。
まずは「生活防衛資金」として、月々の生活費の6ヶ月から1年分程度を確保し、その上で介護やリフォームのための予備費を確保しておきましょう。貯金800万円に退職金が加わるとしても、まずは「公等年金でカバーできない生活費の累計」を算出してください。
SUVの購入を検討する場合には、新車にこだわらず状態の良い中古車を選択することや、現在の車をできるだけ長く使用することで支出を抑えるといった方法も考えられます。
あわせて、抑えた費用を資産運用に充てることで、将来に向けた資産形成につなげるといった選択肢も検討できるでしょう。また、65歳まで再雇用で働くなどして、退職金を取り崩す時期を遅らせることも有効な手段です。
趣味にお金を使うことも人生の豊かさには重要ですが、その前提として、老後において自立した生活を維持できるだけの資金を確保しておくことが重要です。

夫の夢と家計の安定を両立させるために夫婦で話し合うべきこと

退職金でSUVを購入するという夫の希望は、長年働いてきた自分へのご褒美という側面もあると考えられるため、頭ごなしに否定するのは難しいかもしれません。しかし、現在の貯蓄が800万円であることを踏まえると、退職金を大きく削る決断には慎重になるべきです。
まずは夫婦で、これからの30年間にどのようなイベントがあり、いくらお金が必要なのかを「ライフプラン表」などに書き出すことから始めてみることをおすすめします。
老後の生活において最大の不安要素は、手元の現金がなくなることです。夫の夢を尊重しつつも、将来の自分たちが困窮しないための現実的なラインを共有し、納得のいく資金計画を立てることが、円満で安心な老後生活への第一歩となります。
 

出典

金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2025年 二人以上世帯 各種分類別データ(令和7年) 4 金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー