記事のポイント直近の四半期決算で売上高が35%減となるなど、コンバースが業績不振に陥っている背景には商品展開の進化の遅れがある売上低迷によりブランドマネジメント企業ABGへの売却が噂されるなか、ABGが過去にリーボックを再建した手腕が注目される売却の憶測をよそに、親会社のナイキはコラボレーションや文化的なイベントを立て続けに発表してブランドの地位向上を図るだろう
コンバース(Converse)の「チャックテイラー」は、フットウエアの歴史においてもっとも象徴的なシューズのひとつであるが、それを製造するブランドは苦戦を続けている。ここ数年、コンバースはナイキ(Nike)のほかのブランドと比較して業績不振が続いている。3月末に発表された直近の四半期決算では、コンバースの売上高は35%減の2億6400万ドル(約396億円)であった。新CEOのエリオット・ヒルの下でナイキが変革を続けるなか、コンバースの将来について、ブランドマネジメント企業のオーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group、以下ABG)への売却の可能性を含むさまざまな憶測が飛び交っている。しかし、コンバースはどのようにして現在のような状況に陥ったのだろうか。

チャックテイラー頼みの限界

Glossyが取材した専門家によると、コンバースは同業他社のフットウエアブランドのように、老舗ブランドとして時代の流れにうまく対応できていないと見ている。「コンバースの問題は、ブランドとして象徴的でありながら、SKU(品目)の拡大を可能にするほどに消費者のブランドに対する印象を変化させ、進化させることができなかったことだ」と、Eコマースエージェンシーの2ビジョンズ(2 Visions)の創業者兼プリンシパルで、エクスプレス(Express)やスパンクス(Spanx)のアドバイザーを務めたイェーツ・ジャービス氏は語る。「一方、同じく象徴的なブランドであるニューバランス(New Balance)は、そうした方向転換に成功したブランドの例である」。アシックス(Asics)、ニューバランス、リーボック(Reebok)など、長い歴史を持つ多くのフットウエアブランドがこの10年のスニーカーブームの波に乗ったが、コンバースはそれに乗り遅れた。同ブランドは象徴的なチャックテイラーのシルエットに大きく依存していたが、ナイキやアディダス(Adidas)がもっとも有名なモデルに対して行ってきたようなクリエイティブな実験は行われなかった。「消えたわけではないが、新鮮さを感じさせなくなった」と、ファッションパブリシスト兼トレンドコメンテーターのトレーシー・ラムーリー氏はコンバースについて語る。「何かが安定して広く知られるようになると、そこに新しい興奮を生み出すものがなければ、発見という意味での存在理由を失う。若い層、特に新しい世代は、常に次の新しいものを探している」。

売却観測とABGの戦略

コンバースは今、15年ぶりの売上低迷に見舞われ、2月にはレイオフも実施した。レイオフに加え、3月5日にナイキが提出した規制当局への届出で、約3億ドル(約450億円)を生み出す「組織変更」が明らかになったことが、コンバース売却が間近であるとの憶測をさらに加速させた。もっとも有力な買い手はオーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group、以下ABG)であり、同社は近年、低迷する名門ブランドを買収して再活性化させることを常用手段としてきた。同社はフットウエアブランドのリーボック、ディーシー(DC)、スペリー(Sperry)でも同様のことを行っている。ABGはこのうわさについてのコメントを控えたが、ブルームバーグ(Bloomberg)は以前、同社が関心を示しているものの、正式な交渉はまだ開始されていないと報じている。ABGのリーボックに対する戦略は、同社がコンバースを所有した場合にどのようなことが起こり得るかを示す好例である。2022年にリーボックを25億ドル(約3750億円)で買収したあと、ABGはバスケットボール分野での人気復活に特に力を入れてリーボックに投資してきた。同社はリーボックの新しい欧州本部をロンドンに開設し、デザイナーのジデ・オシフェソやWNBA選手のエンジェル・リース、シャキール・オニールなどのアンバサダーを起用した。ABGがリーボックに注いだ投資は成果を上げており、リーボックの年間売上高は2020年の16億ドル(約2400億円)から2024年には50億ドル(約7500億円)にまで増加した。「正しく行われれば、ABGによる買収は、コンバースに新たな注目をもたらすことができるだろう」と、非営利団体ソールズ4ソールズ(Soles4Souls)を設立したフットウエア業界のベテラン、ウェイン・エルシー氏は語る。「アイコンが資産であるため、チャックテイラーそのものにはいわば手をつけないだろうが、ブランドの象徴的な文化的特性を活用し、音楽コラボレーション、ファッションウィーク、映画を通じて、そして人々が共有するストーリーを通じて、ブランドを社会に浸透させる必要がある」。

ナイキの反撃とコラボレーション攻勢

ナイキはコンバースの売却の可能性に関する質問をかわしている。同社の直近の決算で、エリオット・ヒルCEOはコンバースのチームが「今四半期、ブランドを健全なビジネスに戻すための断固とした施策をいくつか講じた」と述べた。「コンバースは、クリエイティブな文化、音楽、若者とのつながりを通じて、独自の消費者にサービスを提供する愛されるブランドである」と同氏は語った。「コンバースはナイキ社ファミリーの重要な一部であり続け、長期的な見通しに期待している」。レイオフ以降、ナイキはコンバースに対して異なる戦略を取ったようである。エルシー氏が提案したとおり、コンバースはここ数週間でコラボレーションやほかの文化的イベントを矢継ぎ早に発表している。ミュージシャンのタイラー・ザ・クリエイターやブレンドン・バベンジアンのフットウエアブランド、ノア(Noah)とのコラボレーションを発表したほか、先月にはNBA選手のシャイ・ギルジャス=アレクサンダーとのシグネチャーシューズも発表した。そして、ライアン・ゴズリングが演じるキャラクターは、最近の大ヒット映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の全編を通じてローカットのチャックテイラーを履いている。「コンバースにとって、今後の道は再発明ではなく、地位向上であるだろう」と、トミー ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ネッタポルテ(Net-a-Porter)、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)のアドバイザーを務めるファッションSEOエージェンシー、ベルデ・デジタル(Verde Digital)の創業者兼マネージングディレクターのジョー・ヘイル氏は語る。「コンバースはすでにコンバース・ファーストストリング(レザーなどの高級素材を使用したチャックテイラーのハイエンドリミテッドライン)のようなラインでこれを試みているが、さらに踏み込む余地がある。文化的な関連性へのより鋭いフォーカスと、段階的なプロダクト戦略を組み合わせることで、注目と需要の両方を取り戻すことができるだろう」。[原文:Fashion Briefing: How did Nike's embattled heritage brand Converse reach a 15-year revenue low?]Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)