友人は母親がそこまで飛び上がって喜ぶとまで想像がつかなかったらしく、とにかくびっくり、というのが本音のよう。

 長く一緒に暮らしていても、家族の“好き”の深さって、意外と知らないものなのかもしれません。彼女にとっても、友人にとっても、嬉しい出来事となったようでした。

◆“持っていなければいけないもの”ではない

 ここまで喜んでもらえるなんて。やっぱり「推し活」は偉大なり。こちらまでホクホク。そんなことを思い出していたとき、以前、ある人から聞かれた言葉をふと思い出しました。

「自分には推しがいないんだけど、何か推せるものを見つけたい。どうしたらいいと思う?」というもの。

 そう、「推す」という概念自体よくわからないという方もいらっしゃいますよね。

 推しは、頑張って見つけるものなのか、それとも自然と出会うものなのか、どちらなのでしょう。

 少なくとも、推しというのは、履歴書の趣味欄のように“持っていなければいけないもの”ではないはず。

 でも、気づいたら好きかも、というレベルで始まっていた距離感が、もしかしたらいつのまにか自分の人生の根幹をなす存在にまで大きくなることもあるわけで。

 断言できるのは、札幌ドームで聞いた「怪獣の花唄」の大合唱や、雑誌を見て飛び上がるほど喜んだ友人のお母さんの姿を思い出してみれば、推しというのは、人生を間違いなく明るくするし、平和にしてくれるということ。もし少しでも「気になる」ものに出会ったら、ちょっとずつ深掘りしてゆくと良いことがあるかも。

 国際情勢も緊迫している昨今。誰かを存分に推せる状態があるというのは、穏やかな日常がある証拠だし、「同じものが好き」という状況は不思議な連帯感を人々にもたらします。

 推し活は平和への近道。この、好きなものを思い切り好きと言える当たり前の日常がずっとずっと途切れることなく続きますように。

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne