「まるでプラモデルのパーツだ」遺骨が整然と並んだ異様な光景…1万人を見送った職員も絶句した「火葬の現場」
元火葬場・葬儀屋職員の下駄華緒さんが、1万人のご遺体を見送ってきた経験を元に原作をつとめた『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(漫画:蓮古田二郎)が、シリーズ累計23万部を超える大ヒット作となっている。
3月19日には、最新刊となる『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常(5)』が発売された。その衝撃的な内容が、ネットを中心に話題沸騰中だ。
一般人がほとんど知らないディープなその世界を、下駄さんに案内してもらった。
前編記事『なぜバラバラになった遺体の火葬では「頭部の状態」が最も重要なのか…火葬場職員が明かす「驚きの理由」』より続く。
整然と並んだ遺骨の異様さ
そんな「バラバラのご遺体」をめぐって、火葬の現場である出来事が起きた。
水難事故で亡くなった中年男性の遺体が運び込まれたときのことだ。発見時にはすでに白骨化しており、警察の検視が行われたのち、火葬場に搬送されてきた。
検視の過程で、ご遺体は部位ごとに分けられた状態になっていた。その際、足は足、腕は腕というように、それぞれのパーツがトレイの上に整然と並べられていたのだ。それはまるで組み立て前のプラモデルのパーツのような不自然な光景だった。
最大の問題は火葬を終えたあとだった。前室で遺骨を整理すると、水死の影響で骨が水を吸っていたためか、ほとんど崩れることなく残っていたのだ。
「これじゃまるで人間のパーツの陳列だ。このままご遺族にお見せしたら、驚かれるんじゃないか……」
その異様な光景に、下駄さんたちは思わず顔を見合わせた。できるだけ人の形に戻したほうがよいのではないか――。そう考えながらも判断に迷い、葬儀社に確認したうえで、最終的にはそのままお骨上げを始めることになった。
正解がない火葬の現場
ところが、遺族が遺骨を目にした瞬間、その表情が大きく揺れた。思った以上に強い衝撃を受けたようだった。
その日の休憩室では、この出来事が話題になった。同僚たちも首をひねりながら、それぞれ考えを口にした。
「私は、先輩が正解だったと思います。だって葬儀屋さんがそう言ったんですから」
「私は、ご遺族に確認してからにしたほうが良かったんじゃないかと思う」
「僕は……正直、よく分かりません」
意見はまるでばらばらだった。火葬場の現場には、正解のない答えがいくつもある。
下駄さんは、現場でのとっさの判断の難しさについてこう語る。
「ご遺体がバラバラの状態だった場合、棺の中で必ずしも人の形に整えられているとは限りません。そうしたときに、バラバラの状態のままお見せするのがいいのか、それとも人の形のように並べ直しておくのがいいのか……どちらが正しいのかは、とても難しい問題です。
もしバラバラのままお見せすれば、先ほどのエピソードのように遺族がその光景を目の当たりしてショックを受けるときもある。一方で、勝手にお骨を並べ直したことで、かえって不信感を持たれる可能性もある。どちらが正解ということはないんです」
だからこそ、下駄さんが大切にしていたのは「自分たちだけで判断しないこと」だった。
「火葬場で働く私たちよりも、葬儀社の方のほうがご遺族と長く時間を過ごしています。ですから、お骨上げの前に葬儀社に確認し、判断を委ねることもあります。そのほうが、遺族の気持ちに沿った形になりやすいからです」(下駄さん)
遺族にとって、火葬場での時間は人生でも指折りの辛い瞬間だ。正解のない現場で、それでも最善手を考え続ける。火葬場で働く人々の仕事は、そういう積み重ねでできているのだ。
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《イベントのお知らせ》
元火葬場職員・下駄華緒氏が監修する体験型展示会【火葬場を覗く展】
開催期間:2026年3月21日(土)〜29日(日)
会場:文春ギャラリー
公式ホームページ:https://www.kasouba-nozoku.com/
火葬場を覗く展予約ページ:https://livepocket.jp/e/weahf
