引っ越しシーズンで“外国人お断り問題”浮上…「OK物件」のリスト化でも解決できない理由
引っ越しシーズンもたけなわだ。毎年、この時期になると外国人が日本の家を借りにくいという問題がたびたび取り上げられる。だが、物件オーナー側の「外国人お断り」の理由が掘り下げられることは多くない。
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賃貸退去後の原状回復を担うリフォーム会社の元社長は、現場の実感をこう明かす。
「外国人入居者の住まいは、内装の傷みが激しいと感じる時もある。文化や生活習慣の違いだろうか。もちろん個人差はあるが、現場ではそうした感想がしばしば聞かれる」
オーナーが外国人入居に慎重になる背景にあるのは、根拠のない偏見だけではない。言語対応や退去時対応への不安、そして過去の苦いトラブル経験がある。
日本賃貸住宅管理協会の2022年度調査でも、家主800人の半数が外国人への「拒否感」を持つと回答。理由にはゴミ出しや騒音などの生活ルール、外国語対応への不安が挙がった。
こうした不安が「属性による拒否」へと短絡的につながるのは問題だ。本欄で注目したいのは、現状に生じている負担についてである。
日本で部屋探しをする外国人は、賃貸仲介店で物件を紹介してもらい、物件管理会社へ問い合わせ、申込書類を準備、入居審査を行う。そこまで進んでから「オーナーが外国人は不可と言っている」で終わることが、現場ではしばしばある。
ある賃貸仲介の社員はシビアな現実を語る。
「外国人入居者を避けているオーナーの中には後ろめたいのか、すぐに断らない人もいる。しかし、審査まで進んで結局は断るならば、問い合わせの時点でさっさと『外国人NG』と言ってもらった方が、お互いに無駄が省けることも事実だ」
冷たいようだが、否定しきれない合理性もある。
ならば、最初から「外国人歓迎」の物件だけリスト化した方が効率的という考え方もある。不動産サービスを開発するIT系企業の幹部は「あらかじめ整理しておけば、無駄なマッチングも起こらない。外国人の部屋探しは、いまよりずっと楽になるはずです」と言う。
しかし、属性ごとに受け入れ先を整理する発想は、危うさもはらむ。実際、アメリカの不動産業界ではSteering(ステアリング、誘導)と呼ばれる慣行が長く問題視されてきた。「あなたに合った地区」と善意のように見える案内が、結果として人種ごとの居住エリアの分断を強めてしまったからだ。効率化は、社会の分断を見えにくく固定する入り口にもなりうる。
「共生社会」という言葉は聞き心地がよい。しかし、賃貸経営というビジネスの現場にあるのは、契約、苦情対応、多言語での説明といった極めて重い実務の連続だ。
最近では賃貸ビジネス向けの多言語対応サービスも増えてきた。まずは現場が抱える苦労と苦悩の実態を知り、実務的なサポートをどう構築するか。真の共存は、そこから始まるのではないか。
(ニュースライター・小野悠史)
