日本代表が韓国代表に0-1で敗れたE1選手権。試合が行われた釜山のアジアード競技場は5万4千人の収容人員で、発表された観衆は2万8千人だった。しかし実際のスタンドには半分以上、空席が広がっていた。試合の結果以上に、スタンドがガラガラだったことに驚かされた。

 日本で行われても韓国で行われても、日韓戦と言えば、そのスタンドは満杯になるものと決まっていた。熱気や緊張感で溢れる中で行われる一戦であることに価値があった。

 拍子抜けとはこのことだった。お互いベストメンバーにはほど遠い試合だったので、やむを得ない面はたしかにある。とはいえ、少なすぎやしないか。いったい韓国はどうしちゃったんだ。相手を一瞬、恨みたくなったが、日本人サポーター席に目をやると、こちらに対しても同様な思いを向けたくなるのだった。

 その数もごく僅かだったからだ。多く見積もっても200人程度。広いスタンドのほんの一角を占めたに過ぎなかった。

 前回、韓国で開催された時(2013年)の日韓戦は違った。舞台となった蚕室競技場のゴール裏席は、現地に詰めかけた日本人によってしっかり埋められていた。その数が数千人だったのに対し、今回は200人がせいぜい。日本と韓国が政治的によくない関係にあることも、激減した理由の1つに挙げられるが、これまでの経緯を見ると、それが真の理由であるようには思えないのである。

 1年前にUAEで開催されたアジアカップに駆けつけた日本人もまた少なかった。日本はそこで決勝戦まで7試合を戦ったが、いずれの試合もサポーターの数で対戦相手を下回っていた。決勝でカタールに敗れたことと同じくらい、それは寂しい話だった。

 当地では、その直前にクラブW杯が開催されていて、鹿島アントラーズが出場していたが、日本代表サポーターはその大会に臨んだ鹿島サポーターより少なかったほどだ。

 2018年のロシアW杯は、2002年日韓共催W杯を除けば、日本がこれまで出場したW杯の中で最も近い場所で行われた大会だった。ところが、現地のスタンドを埋めた日本人サポーターの数はごく僅か。この大会の観戦環境は、過去のどのW杯より優れていたにもかかわらず、だ。

 10万人が現地まで駆けつけたとされる98年フランスW杯。2006年ドイツW杯でもその流れは生きていた。しかし、日本から遠く離れた、行きにくい場所で開催された2010年南アW杯、2014年ブラジルW杯を経てみると、状況は一変していた。ジョホールバルに2万人以上の日本人が駆けつけたフランスW杯アジア予選プレーオフ対イラク戦から始まった海外で日本代表戦を観戦する習慣は、すっかり失われてしまった。

 いま振り返れば、それは一時、襲われた熱病に見える。約10年間という一過性の出来事だったと言った方が適切ではないか。海外観戦する意欲の低い国。これが本来の姿に見える。

 五輪がいい例だ。日本人は自他とも認める五輪好きの人種だが、これまで現地まで観戦に出かけた人は、選手の親族、友人以外にどれほどいるだろうか。過去9度(夏季大会5度、冬季大会4度)五輪を現地で観戦取材したこちらの経験に基づけば、各大会とも1万人に遠く及ばない数だったと推測できる。

 今年の東京五輪には海外から観戦者が大挙押しかけてくるとばかり、そのインバウンド効果を期待する日本人は少なくない。何兆円という経済効果が見込まれると、大はしゃぎするのは結構だが、日本人は過去の五輪で現地にどれほどお金を落としてきただろうか。インバウンドの話をする人は無数にいるが、アウトバウンドの話をする人はほぼゼロに近い。格好のいい話ではまったくない。現地に行ったこともないのに、訪れる人のことがよく分かるなと思う。