「かばん持ち」なのに 「かばんを持たなかった」社長は、 なぜ、「公開処刑」されたのか?
日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞(2001年度、2010年度)した小山昇氏の新刊『1日36万円のかばん持ち――三流が一流に変わる40の心得』が話題となっている。第5刷が決まり、5/9の「日経新聞」にも掲載された新刊の中から、小山氏に「三流が一流に変わる心得」を紹介してもらおう。
「責任を取る」とは
どういうことか?
ラブリークィーン株式会社(アパレル/岐阜県)の2代目である井上真典社長は、まだ課長だった時代(父親が社長)に、私の「かばん持ち」をしたことがあります。
そしてあろうことか、「かばん持ち」なのに、かばんを持とうとしなかった唯一無二の存在。まさに、職務怠慢!
さて、私はどうしたでしょうか。
私は、経営サポート会員とのランチの席で(しかも、2代目の父親がいる前で)、彼を公開処刑にし(笑)、全員の食事代を井上社長(当時は課長)に支払わせた。
「小山さんに、『全額支払え』と命じられたとき、正直、意味不明でした。『大した給料をもらっているわけでもないんだからさぁ、ちょっと待ってよ。このおっさん、何を言っているんだ?』と思ったんです(笑)。おやじは、隣で笑っているだけですし」(井上社長)
どうして、私は食事代を支払わせたのでしょうか?
それは、井上社長に「責任を取らせるため」です。責任を取るということは、経済的に「損」をすることです。
「責任を取らない」とは、「経済的に損をしない」ということであり、つまり、「出世をしない、社長にならない」ということです。
当時、井上社長は課長でしたが、父親のあとを継ぐのであれば、理不尽な思いを受け止めて、「申し訳ありませんでした」と自腹を切る覚悟を持たないといけません。
井上社長は、「最初はイラッとしましたけど(笑)、身銭を切ったからこそ、『かばん持ちは自分の仕事である』『絶対にかばんを持たなければいけない。そうしないと、お金を取られる』ということが実感できた(笑)」と言います。
責任は、社長にしか取れない。そして、人間は、失敗からしか学べない。
井上社長は、「かばん持ち」初日にして、そのことを学ぶことができたのです。
