【関係者は大激怒】亀田興毅のボクシング興行が「二ヵ月連続中止」に…キルギスで開催できなくなった「知られざる舞台裏」
亀田興毅のイベントが突如として中止
井上尚弥と中谷潤人の世紀の対決で盛り上がった日本のボクシング界。互いの次戦は誰なのか、今もその余韻は続いている。そんなボクシング界の熱気に水を差すようなトラブルが起きた。
5月23日、24日と2日間に渡って中央アジア・キルギス共和国で開催される予定になっていたボクシング興行「SAIKOULUSH Vol.5&6」が中止になったのだ。主催者は「適切なファイトマネーの支払いならびに、安全かつ質の高いイベント運営を担保できないと判断し、苦渋の決断に至りました」とコメントしている。
この興行に大きく関わっているのが、イベントのファウンダー(創業者・統括)を務めるプロボクシング元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏(39歳)だ。すでにネット上では、亀田氏に対する批判や日本のボクシング界に対するマイナスの影響を憂う声が早くも出始めている。
ここで亀田氏のここまでのキャリアについておさらいしたい。亀田氏は、現役を引退後、亀田ジムを設立。しかし、その後は災難が続く。統一選でスーパーフライ級の亀田大毅選手が試合に敗れながらIBFの世界王座を保持していた問題でJBC(日本ボクシングコミッション)から亀田ジムのライセンス資格がはく奪処分を受けてしまう。
これをめぐって亀田氏側は法廷で争い、長年の裁判の結果、亀田氏側が勝訴。ライセンス資格を取り戻した。しかし亀田氏側に不信感を持つJBC側とは水面下での確執は続く。亀田氏が関係しているジムの有望選手が日本チャンピオン大会に出場できなくなるなどの不穏な事態が起きていた。
こうした現状に嫌気がさしたのか、亀田氏側は「アホな村社会に嫌気がさしている。ボクシング協会もジム制度も必要ない事を一緒に証明しましょう」と語り、中央アジアのキルギスで興行を行うことを目指し始める。古いシステムに対抗したアウトサイダーの戦いとして、応援する人も少なくなかった。
タイトルマッチも組まれていたのに
今回中止になった大会には、日本人のボクサーも多く参加する予定だった。亀田京之介選手のWBAフェザー級暫定王座決定戦や、佐野遥渉(さの・あゆむ)選手のWBA世界スーパーフライ級暫定タイトルマッチもあった。日本ボクシングコミッションはタイトル乱立を防ぐ目的から、この試合は公認していないのだが、世界中から有望なボクサーを集めた2日間に渡る国際的なイベントであることは間違いなかった。
実は、亀田氏を中心としたボクシング興行「SAIKOULUSH」が中止になるのは4月に続いて2度目である。あるボクシング関係者はこう語る。
「4月17日〜19日と3日間にかけて行う大々的な興行『SAIKOU×LUSH Vol.5・6・7』を、開催直前に中止にしていました。ところが、すぐに『5月にキルギスで興行をする』と発表。そこからまた直前に中止になったのが今回のケースです。2ヵ月連続で二度の興行中止は日本のボクシング界でも異例の事態ではないでしょうか。世界中から選手を集めていた訳ですし、WBAの世界タイトルマッチも組んでいた訳です。たくさんの関係者が被害者と言っていいでしょう」
4月に開催予定だった興行は、今回中止になったイベントよりも規模が大きかった。日本人選手が挑戦する世界タイトルマッチのほかに、かつて井上尚弥選手からダウンを奪った”悪童”ルイス・ネリ選手とフィリピンのカシメロ選手の対決など、注目カードが集まっていた。世界タイトルを狙っていた佐野遥渉選手は、SNS上で「世界暫定タイトル戦が延期になりました。かなりショックですが強くなる期間が増えたと前向きに考えて頑張ります」と気丈に語っていた。
同じく4月のキルギス興行に出場する予定だった若手のホープ・横山葵海選手(第42代OPBF東洋太平洋スーパーフライ級チャンピオン )は、興行が延期になった際、筆者に辛い気持ちを語ってくれた。
「私なりの思いをお伝えさせていただきます。正直なところ、急な中止による落ち込みがなかったと言えば嘘になります。しかし、今は『自分がさらに強くなるための準備期間が伸びただけだ』と前向きに捉えています。いつ試合が決まっても最高のパフォーマンスを見せられるよう、日々トレーニングに励んでおりますので、自分としては全く問題ありません!」
選手たちにはチケットも届いていなかった
当時、主催者側は中止の理由について「国際情勢の影響」とした。中東情勢などの悪化で選手の安全性が担保できないというのが理由であった。ところがボクシング興行中止の理由をめぐっては、業界内では疑念が広がっていた。前述とは別のボクシング関係者は、こう声をひそめる。
「キルギスにおける外務省の渡航情報を見ると、危険度は最も低いレベル1です。中東情勢の悪化というのは無理があるでしょう。実は一部の選手に対して、未払い金や海外選手の渡航費未払いが発生していました。なので、4月の興行延期の理由は『資金不足なのではないか』と囁かれていました」
この証言と符合するように、4月に開催予定だった興行の延期理由は「国際情勢の影響」だったにもかかわらず、今回の興行の中止理由は「大規模興行におけるリスク想定や資金計画に甘さがあった」と認めている。
今回の中止が発表される数日前に筆者は、中南米を拠点にする複数のボクシング関係者に取材をしていた。
「興行の開催が10日後であるにもかかわらず、キルギス行きの航空券が送られて来ていません。キルギス共和国まで丸一日はかかりますから、そろそろ出発しないといけません。しかしチケットがなければ行くことが出来ません。彼らの言う事はインチキだと思っています」(海外プロモーター)
「まだ私が担当する選手に飛行機のチケットは届いていません。中止や延期の連絡も来ていません。日本のプロモーターは、選手たちの金や時間を奪っている。この件については正式に抗議するつもりだ」(南米選手のマネージャー)
興行を取り仕切る「謎」の女性アーティスト
亀田氏が関係する「SAIKOULUSH」とはどんな組織なのか。調べていくと、キルギス共和国でボクシングのライセンスをとって興行を取り仕切っているのは、静岡を拠点とする女性アーティストのMだと判明した。前出のボクシング関係者が、声を潜めてこう話す。
『SAIKOULUSH』は、ボクシングをキルギスで行うために自分たちと通じた ボクシング関係者を中心に『キルギスボクシングコミッション』を作らせました。
そして、その『キルギスボクシングコミッション』とともに興行をすすめてきました。亀田のライセンスで興行を行うのは国内のボクシング、アーティストを普段行っている彼女名義で興行を行うのはキルギスのボクシング、という使い分けをするためです」
その女性アーティストMは、現在でもライブ活動などを行っている。本名は原田萌子。今回、興行の中止を発表した声明文にも名前が記載されていて、「SAIKOULUSH キルギス大会プロモーター」「株式会社LUSH 代表取締役」と肩書きまで書かれている。
ただ、彼女のインスタグラムを見ると、ダンスや歌をうたっているアーティスト業の投稿がほとんどで、ボクシングに関係した投稿は皆無だった。中にはプライベートジェットでキルギス共和国に旅しているリール動画もあり、国際的なイベントを取り仕切っているようには見えない。彼女が本当に国際的な興行を取り仕切っているのだろうか。そして、ボクシング界を騒がせている「SAIKOULUSH」と深く関係するであろうLUSH社とはなんなのか。
筆者は、LUSH社が本拠地を置く静岡県焼津市に取材に出向いた。
駅周辺にはボクシングジムのほかに関連会社が複数ある。芸能マネジメント会社や動画配信会社、健康器具販売、たこ焼き店やラーメン店、ダンス教室など多岐にわたる。LUSH社のSNSを見ると、ボクシングだけでなく、歌や踊りを融合したボクシングイベントを考えているとのことだった。
LUSH社を取り仕切る 「ボス」の存在
筆者は近所の人に話を聞いてみた。
「ここ5年くらいでジムやらスタジオやらできてきて、少し奇妙だなと思っていました。なによりも、会社の入り口近くに『キルギス名誉領事館』なる施設があるんです。近所ではもっぱら関心の的となっていました」
キルギス名誉領事官は2025年にキルギス政府が公認して開設された公館だという。LUSH社の関係者が、キルギス人脈を通じて設置されたもののようだ。さらに取材を進めると、LUSH社の事情に詳しい人物から話が聞けた。
「LUSH社は、『ボス』と呼ばれるA氏が裏ですべて取り仕切っています。M氏は、ボクシングのことも会社の事業についても深く知らないはず。ましてや興行のことも精通しているとは思えないです。そのすべてを取りまとめているのはA氏ですし、亀田氏を組織に引き入れたのもA氏です。裏では暗号通貨の投資を募る事業も行っていて、ボクシング興行は自分の会社を見栄え良くするためにやっているのではないかと噂している人もいます」
大阪で育ったA氏は、暗号通貨で財を成した人物だという。亀田氏には投資を通じて関係性を深めていったようだ。ここ数年は、「キルギスに暗号通貨の取引所を開設した」と周囲に喧伝し、自らが作った仮想通貨に関する投資を呼びかけている。投資の勧誘を受けた人物に話を聞いた。
「私はA氏から仮想通貨のコインの購入をすすめられました。彼はボクシング興行やリゾート開発などキルギス投資を幅広く行っている人物で、キルギスの大統領とも関係が深い。『これから自分の作ったコインはICO(取引所で広く販売されるようになること)されて何倍にも膨れ上がる』と説明を受けました」
真偽を問い合わせたが……
自社で暗号通貨(トークン)を発行して資金を集める場合、金融庁の登録が必要だ。ところが、筆者が調べる限り、A氏が関わる会社は登録がされていなかった。たしかにA氏は取引所をキルギス共和国に持っている。ところが取引所が海外にあったとしても、日本で金を集める場合は登録が必要なのだ。
それだけでなく、A氏が関連する取引所は、去年12月にキルギス金融市場監督当局からライセンスを撤回されている。つまり日本だけでなく、キルギス共和国内でも暗号通貨で金集めするのは法律に触れる可能性が高い。
今年になってA氏は新しく関連の取引所を作ってライセンスを取得し、事業の継続を図っている。ところが、キルギスの大統領令では、「すべての暗号通貨の取引所は6月30日までに最低資本金を3億ソム(日本円で約5億4000万円)用意しなければならない」と定められている。現地報道によると、A氏関連の取引所の代表が納税した額は日本円で約3600円。到底、6月末までに調達できるとは思えない。ボクシングの選手の航空券も出せない組織が、はたして5億円の金を用意できるだろうか。
暗号通貨に関する真偽や4月の興行中止の件について「SAIKOULUSH」に問い合わせてみたが、期日までの回答はなかった。
「SAIKOULUSH」は6月6日に愛知県でIBFスーパーフライ級王者・矢吹正道選手の防衛戦も予定している。この興行も中止に追い込まれないよう願いたいが、今後の動向を注視したい。
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