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「高級老人ホームは主に、健康で自立した高齢者を対象とします。アクティブなシニアライフを楽しみつつ、安心・安全な住まいで快適な暮らしを送ることができます」

【写真】プロ直伝「高級老人ホーム」選びのポイント“5か条”

 こう語るのは、老人ホーム探しのサポートを事業とする株式会社プランドゥ代表の脇俊介さん。

高級老人ホームで余生を過ごすことが“ステータス”

「設備は豪華かつ充実しており、温泉やサウナ、プール、ジムなどを備えるところも。サービス面は一流シェフによる食事の提供、豊富なレクリエーションをはじめ、万一に備えた医療・介護体制も整い、看取りまで可能です」(脇さん、以下同)

 高級老人ホームの定義に明確な基準はないそうだが、入居にかかる費用がひとつの尺度になるだろう。

「入居一時金が億単位から数千万円は高級クラスにあたり、私の知る施設では最高2億円超の設定です。入居一時金は家賃の前払い金を指し、居住スペースが広く、入居時の年齢が若ければ若いほど高まる。そのほか月額利用料を必要とし、夫婦2人、100平方メートルを超える広い部屋で1日3食付いて月50万から70万円程度が一モデルといえます」

 これだけ高額な金額を支払うのは容易ではない。限られた成功者のみ門戸が開かれているのだ。

「実際、入居希望者の多くは経営者や大企業の役員経験者、早期リタイア組など、いわゆる資産家の方々になります。経済的なゆとりを持つ人にとって、高級老人ホームで余生を過ごすことはステータスであり、老後の最上の住まいとして定着してきています」

 その暮らしにはどんなメリットがあるのか。

「第一は家事全般から解放されるということ。スタッフが担ってくれるため、余暇を楽しむ時間を存分に持てるようになります。また食事はカロリーや塩分などに配慮されていますし、施設内のジムなどで運動を習慣化すれば、健康寿命を延ばすことにつながるでしょう」

 加えて、防犯面の安心・安全も備わっているという。

「近年、高齢者の自宅を狙った闇バイトなどの犯罪が増加していますが、施設の住まいならその危険は及びません。高級ゆえにセキュリティーは強固。不安なしに日々過ごせるわけです」

高級老人ホームで問われる“人との距離感”

 一方でデメリットはどうか。

「金銭面があてはまるかどうか別として、設備・サービスを享受するには大金を必要とします。そして、どんな高級な施設でも隣人がいて、他の入居者と関わりを持つのは変わりなく、自身ではコントロールしづらい人間関係のリスクを伴うのは共通です」

 高級老人ホームは誰にとってもユートピアというわけではなく、なじめる人、なじめない人がいるのを知っておかなければならない。

「年を重ねると、皆さん、自分のペースや考えを大切にするようになるもの。集団生活の中、ご自身のスタイルを優先しようとしがちなんです。そこで他の入居者に対し主張ばかりしていると、衝突は避けられなくなります。一方、うまく折り合いをつけて楽しめるなら、他の入居者と良好な関係を築けるでしょう」

 経営者などの成功者には我の強いタイプが少なくない。互いに譲らなければ、どうなるかは言うまでもない。

「金銭的に無理をして入居した結果、周囲との生活水準や価値観の差から、なじむのに苦労される方もいます。医師や経営者などのグループができていて、その輪に入れず話も合わない。高級な施設も含め、老人ホームを退去する理由で、もっとも多いのは人間関係なんです」

 最後に、施設選びのポイントを学ぼう。「施設側の説明はメリットが強調されやすいため、注意が必要です。だから個人での情報収集が重要になる」と脇さんは指摘する。

「まず、自分の中で優先順位をつけてリサーチします。設備や安全面、部屋の眺望など優先項目を挙げ、インターネットを使ってアンテナにかかる先を探すのです。次に目星をつけたら現地施設へ見学に行き、できるなら食事や宿泊を体験してみる。最終的には1か所ではなく、必ず2、3か所比較検討して決めたほうがいいでしょう。また一人だけで判断せず、家族などと一緒に行って客観的な意見を取り入れるようにしてください」

 紹介会社に頼るのも手。脇さんの会社はそのひとつだ。

「入居一時金を払わず、月額利用料だけで入居することも可能です。月額利用料は高くなるものの、初期償却のリスクを防げる。当初1年は月額利用料を負担し、ここでよしとなったら入居一時金を支払うやり方もできるのです。こうした情報など施設選びのアドバイスを行っています」

実際に起きた理想と現実のギャップ

【事例1】70代男性 人間関係で退去、1500万円が戻らず

 Mさんは妻亡き後、高級老人ホームに単身入居した。入居一時金は5000万円余り。資産家だったため、十分工面できたのだが、入居から数か月後に退去を決断した。他の入居者とうまく人間関係を築けず、精神的に参ってしまったのが原因だ。退去の際、入居一時金の約3割にあたる約1500万円は初期償却としてMさんの手元に戻らなかった。経済的に恵まれていても、重い代償といえるだろう。

「入居後すぐに退去した場合、初期償却として入居一時金の1〜3割が返還されないのは通例。短期間での退去は金銭的なリスクが伴うのを認識しましょう。ただ、一部のセレブには初期償却のコストをそれほど負担に感じず、複数の施設を軽やかに住み替えられる方もいらっしゃいます」

【事例2】70代女性 自宅売却後に後悔、戻る場所がない

 Sさんは夫に先立たれ、夫婦で建てた戸建てでひとり暮らし。70歳を前に寂しさが募り、その家を売却して高級老人ホームへ入居した。しばらくは楽しい毎日だったが、隣人と折り合いが悪くなって退去を考え始めた。しかし、退去しても家を売ってしまったので戻るところはない。もんもんとしながら施設に留まっている。

「高級施設へ入居するために自宅を売るのは好ましい選択ではない。私たちはオススメしていません」

【事例3】60代夫婦 夫婦の価値観の違いが明らかに

 長年連れ添った資産家夫婦のYさん。夫は退職後、元気なうちに夫婦で高級老人ホームへ入居するのを夢見ていた。その夢を現実にすべく紹介機関を訪れ、話し合っているときだった。

 当然のごとく2人部屋を選んだ夫を妻は拒否し、夫婦別々の部屋を望んだのだ。高級老人ホームに入ってまで夫と顔を突き合わせたくないというのが妻の言い分。夫にとっては悲しい現実がそこにあった。

「ご主人はびっくりされるかもしれませんけど、夫婦入居では珍しくないのです」

教えてくれたのは…脇 俊介さん 株式会社プランドゥ代表。同社は老人ホーム紹介事業および老人ホーム検索・情報サイト「マイ介護ホーム」を運営する。脇さんは社長業と兼任し、入居相談員として相談者をサポートしている。

取材・文/百瀬康司