イラン攻撃で進む「航空網」の大再編…!「ポスト・ドバイ」で浮上する新ハブ空港の危うい正体
ドバイ崩壊が引き起こした「空の大変動」
「安全なハブ」として国際社会で地位を築いてきたドバイ。それが突如として揺らいでいます。
前編『イラン攻撃で崩壊したドバイ神話…!戦火が揺るがした「安全地帯の資産拠点」、その悲惨な現実』で見てきたように、アメリカによるイラン攻撃の戦火は周辺諸国に飛び火して、ドバイの都市機能だけでなく、人々の生活や投資判断までも一変させています。
ドバイは中東の中でもセーフヘイブン(安全地帯)であることを売り物に、世界中からヒト・モノ・カネを集めていました。今回の攻撃で、ドバイの根幹が揺らぐこととなったのです。
一刻も早く日常が取り戻すことを願っていますが、ドバイを拠点としてきた人々にとって、世界の航空事情も大きく様変わりする現実にも驚かされています。
こうした変化は、世界の航空ネットワークそのものの再編を意味します。では、その歪みのなかで、いま何が起きているのでしょうか。
欧州―アジア路線が寸断される現実
イランからの反撃は、ドバイ経済の心臓ともいえる国際空港のみならず、港湾施設をも直撃しました。
特に、ドバイの国際空港は、年間の国際旅客の利用者数で世界一を誇っていました。空港機能が一時的に停止しただけでなく、今も機能低下を余儀なくされていることは世界のフライト網に大打撃を与えています。
私たち家族も、娘が英国のボーディングスクールに所属している関係上、欧州とシンガポールや日本などアジアとの間を頻繁にフライトで移動しますが、多くの場合、ドバイやカタールのドーハでのトランジット便を選んできました。小さな子供を連れて10時間以上の直行便の利用はハードであることに加えて、同地を経由したほうが費用面でも大幅に安いためです。
ロシアとウクライナ間の紛争に続いて、イランと中東湾岸諸国の紛争の発生により、欧州とアジアを結ぶフライトはアゼルバイジャンとジョージアの上空を飛ぶ狭いルートか、北や南に大きく迂回するルートしか選択できなくなってしまいました。大幅に減便されている上、費用も数倍に高騰しています。
イランによるホルムズ海峡の封鎖もあり、これにアジア圏での燃料費の高騰も加わることで、この欧州―アジア間のフライトを就航させている航空会社はこれ以上の費用高騰を避けようと、ドバイやドーハに代わる新たな中継地点を必死に探し始めています。
この中で浮上してきているのが、スリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港です。
なぜ、この場所が注目されているのかにはいくつかの要因があります。
まず、スリランカはインド洋の中心に位置しているために、世界の2大紛争から遠く離れているという立地上の強みがあります。同時に、欧州とアジア全域のどちらに対しても、おおむね10時間以内のフライトで移動できるために、乗員の交代や給油の場所としても適しています。
「空白」を埋める新ハブ争いが始まった
そして、何よりもこのスリランカ南部にあるマッタラ空港は、世界でも最も「ガラ空き」であったということがこの局面では強みとなっています。
この空港は、スリランカのラジャパクサ元大統領が、建設地として選んだ地元であるハンバントタを、コロンボに次ぐスリランカ第2の都市として押し上げたいという政治的な野心が起点となっています。
そのために、確たる需要の見込みもないまま、世界最大の商業機であるA380も離発着できる3500メートルの滑走路を備えた巨大な国際空港を作りました。コロンボからは遠く離れているため、当然ながらビジネス利用は皆無で、近隣のリゾートの集客力も今一つでした。
2013年の空港開港時にはエミレーツなども定期便を就航させましたが、すぐに撤退してしまいした。昨年までは空港スタッフの一番の仕事が「滑走路に近付く野生のゾウを追い払うこと」とまで揶揄されるほどの閑散ぶりでした。
それが、中東の経由地を代替するハブ空港として急浮上したのです。それだけイラン攻撃のインパクトは大きかったのです。ロシアとウクライナ間の戦争に続き、グローバルのハブ空港を複数擁していた中東の湾岸諸国全域も戦火に包まれてしまったことで、マラッタ空港の需要が高まったのです。
実際に、ドバイのエミレーツ航空もカタール航空もこの空港を中継地として使用する交渉をすでに始めています。早ければこの4月にもマッタラ空港を中継地とした欧州とアジア間のフライトがスタートするでしょう。燃料の確保や利用増に伴う空港や入国管理スタッフの人員増強ができれば、という条件付きではありますが、5月以降には本格的な定期便の就航が始まる予定です。
“世界一ガラ空き”だった空港の逆転劇
もし、この夏までイラン紛争が続いていて、中東の湾岸諸国を経由するフライトの復調が難しい場合は、私もこのスリランカのマッタラ空港を経由するフライトを利用してみようと考えています。
マッタラ空港の近隣にあるヤラ国立公園は世界的にも有数のサファリツアーが楽しめるようですから、中継地としてだけではなく、当地に数日滞在して家族で観光してから欧州に移動するのもよいなと計画しています。
さらに連載記事『川崎宗則が大活躍中!野球の新天地・ドバイを支える“和製スリーダイヤ”の秘密』では、数か月前のドバイの栄光について紹介しているのでぜひ参考にしてください。
