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 女優の郄石あかり(23)がヒロインを務め、今月27日に感動の最終回(第125話)を迎えたNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)の主人公のモデルとなった松江藩家臣・小泉家の娘・小泉セツ(節子)による夫・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の回想録「思ひ出の記」が、地方出版社の書籍としては異例のヒットを記録している。八雲の代表作「怪談」出版120年を記念し、地元の「ハーベスト出版」(島根県松江市)が2024年9月に刊行した新装版。年明けから注文や問い合わせが急増し、売上は当初の想定の約5倍となっている。

 「バイプレイヤーズ」シリーズやNHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」など会話劇に定評のある、ふじきみつ彦氏がオリジナル脚本を手掛けた朝ドラ通算113作目。松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で日本の怪談を世界に紹介した明治時代の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに、怪談を愛してやまない夫婦の何気ない日常を紡いだ。

 最終回、雨清水トキ(郄石あかり)による夫レフカダ・ヘブン(雨清水八雲)(トミー・バストウ)の回顧録「思ひ出の記」がついに完成。トキの懺悔は逆転し、ヘブンと歩んだ人生は肯定された。“この世はうらめしい。けど、すばらしい。”――。

 今作の制作にあたり、重要な参考文献となったのが、八雲との13年8カ月にわたる結婚生活をセツが口述した回想録「思ひ出の記」。キャスト・スタッフは「思ひ出の記」を目指して進んでいった。

 昨年最後のオンエアとなった第65回(12月26日)は、トキとヘブンの心が通じ合う姿を夕暮れの宍道湖畔の散歩で美しく表現した“神回”。ハーベスト出版の担当編集者・沖田知也氏によれば、今年に入り、2人が夫婦になってから一気に反響を呼び、増刷を重ね、累計発行部数は2万部を超えた。最終回の放送を受け、同社の「思ひ出の記」は「Amazon」の「本の売れ筋ランキング」4位に浮上した。

 「素晴らしい最終回を迎え、版元としても、また地元のいち市民としても、感謝の気持ちでいっぱいです。放送開始直後から、これまでにないほど多くのご注文をいただき、その反響の大きさを実感しています。この作品がつないでくれた想いと熱を、これからは地元企業である私たちがしっかりと受け取り、新たな発信を続けていきたいと思います」

 印刷会社の出版部門として1991年の設立以来、主に山陰地方の歴史や文化を扱ってきたハーベスト出版。今回、一般書籍としては同社最大のヒットとなった。

 最終週に登場した「小さい瓶」「返り咲きの桜」などのエピソードは「思ひ出の記」に書かれている史実。沖田氏は「『ばけばけ』に思いを馳せながら、小泉セツさんが遺した『思ひ出の記』も手に取っていただけるとうれしいです」と呼び掛けた。

 八雲の代表作となった怪奇文学作品集「怪談」は、最晩年の1904年(明治37年)4月に出版。セツが語る民話や伝承に、八雲が独自の解釈を加えて再構成。“夫婦の共同作業”により「再話文学の傑作」へと昇華した。

 今回、小泉八雲記念館監修の下、現代仮名遣いに直して読みやすくなった新装版。セツの手記2編「オヂイ様のはなし」「幼少の頃の思い出」(ともに池田記念美術館所蔵)が初収録されている。