物忘れが手術で劇的改善…!家族評論家・宮本まき子さんを襲った「治る認知症」を専門医が徹底解説

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昨年9月に病院の廊下で転倒し、左鎖骨を骨折した家族評論家の宮本まき子さん。その際、頭の左側も床に軽くぶつけたが、コブも痛みもなかったため気に留めなかった。しかし、その後、クレジットカードの暗証番号を間違える、孫の名前の漢字を思い出せないなど、宮本さんの身に次々と異変が起こり始める。ついには真っすぐ歩くこともできなくなってしまい…。

前編記事『「軽く頭をぶつけただけ」のはずが、孫の名前を思い出せなくなり…家族評論家・宮本まき子さんの「壮絶体験」』より続く。

「危険なので今すぐ手術が必要です」と告げられ…

尋常ではない身体の異変を感じ、認知症を疑い始めた宮本まき子さんは病院で検査をしようと決心し、翌日、総合病院を受診した。

ところが思いもよらない展開が待っていた。

「いつも担当してくれている主治医に、この3ヵ月で身体に起きた異変を話しました。『いよいよ認知症じゃないか』と冗談めかして言ったところ、突然主治医が真剣な顔つきになって、『あなた3ヵ月前に当院で転んだけど、その際に頭をぶつけませんでしたか?』と聞きます。『そう言えば、コツンと当たりました』と思い出すと、主治医が『大変だ!すぐに検査室でCTを撮ってきて』と急かしました」

検査室からは車椅子で脳外科に直行。診断は「慢性硬膜下血腫」、脳外科部長から驚くべきことが告げられたのだ。

「CT撮影の脳の断面写真に、左脳に三日月状の大きな液状の血腫が写っていて、それが脳を圧迫して認知症のような症状を起こしていると。『100cc近い血腫で、危険なので今すぐ手術が必要です』と告げられ、思いもよらぬ診断に『えー?!』と絶句。頭が真っ白になりました。

自分は何を血迷ってヤクルト一本分の血液を後生大事に貯めていたのかと驚くやら、悔しいやら。木野先生は冷静に『今なら、私も手術室も空いていますから、すぐにやりましょう』と、同意書を何枚か示しました」

宮本さんは迷わずサインした。外科医の女房を半世紀以上やってきたから、「ことは重大、時間との勝負」を暗に言われたとわかったという。「内科の先生が気づいてくれたお手柄です。すぐに手術に入りましょう」と慌ただしく立ち上がった。

そのまま手術室に直行し、局所麻酔を打たれ、手術は始まった。手術は頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を排出する「穿頭洗浄術」。

木野医師は「脳外科では一般的な手術で決して難易度は高くありません。予後は概して良好で術後1週間で退院されるケースがほとんどです。再発率は約1割で、たとえ再発しても血管内治療など新たな選択肢もある。決して治せない病気ではない、むしろ治せる可能性が高い病気なんです」と強調する。

手術翌日から記憶力が劇的に回復

宮本さんは即日手術を受け、翌日から劇的な回復を実感した。

「忘れていた文字や言葉が次々に出てきて、マス目からはみ出していた書体も元通り。下手になった漢字・ひらがなは、書道一級の腕前に自然に復帰していました。まるで霧が晴れたようでした」

宮本さんの入院例だと、術後1日目に頭の穴からドレーン(血液を排出するためのシリコン製の細い管)が除去され、医療用ホチキスで傷口を閉じる。2日目には点滴も外れ、3日目からは認知症テストやリハビリ運動等。患部の感染予防を続けた後、退院前日にCT検査とホチキス針の「抜糸」をする。術後9日で退院し、1ヵ月後には仕事復帰を果たした。

宮本さんは「もしあのまま放置して血腫が大きくなっていたら…。偶然見つけてもらえて、すぐ手術で除去されたのは本当に幸運でした」と語る。

「もっと早くに来院すべき症状だったと叱られました。医師の夫が入院中でなければ、1ヵ月目で受診を促されたでしょう。特にひとり暮らしだと都合よく考えがち。冷静に判断する能力も必要ですね」

木野医師は「放置した場合、最悪のケースでは血腫がどんどん脳を強く圧迫して意識障害になり、やがては生命維持に欠かせない器官と言われている脳幹をも圧迫して、脳ヘルニアで死に至ります」と話す。

たとえ脳幹を圧迫するに至らなくても、手足が麻痺して身動きが取れなければ食事や水分が取れず、また誤嚥をしたり、合併症により死に至るリスクもあるという。 決して素人判断で様子見するということはあってはならないのだ。

さらに木野医師はこう呼びかける。

「私のところにも、もっと早く診察に来てくれたら治せたのにという予後が良くない患者さんも中にはおられます。病名からして深刻なイメージを持たれるかもしれませんが、決してそうではありません。

慢性硬膜下血腫による認知症機能障害というのは手術をすれば治せる病気なんです。脳外科疾患の中でも治せる、患者さんがハッピーになれる疾患の一つです。少しでも身体に認知症の初期症状の異変を感じたら、脳神経外科や神経内科のある病院で受診して頂きたいです」

最後に宮本さんは強くこう訴えた。

「物忘れや歩きにくさを恥ずかしがらないでほしい。“年のせい”と決めつけず、少しでもおかしいと思ったら受診してください。それは老いを認めることではなく、自分の人生を守る勇気です」

認知症が増える時代だからこそ、すべてが治らないわけではないという事実を知ることが重要だ。慢性硬膜下血腫という“治せる認知症”の存在を覚えておこう。

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