現役プレーヤーの関口希望が明かすビーチバレー盗撮問題の現状とは【写真:中戸川知世(左)、本人提供】

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ビーチバレー・関口希望インタビュー第3回 現役選手として明かす盗撮問題の実情

 スマートフォンが普及し、SNSが発達した現代。選手とファンの距離が縮まり、スポーツ観戦の形が多様化する一方で、課題もある。肌の露出が多い水着でプレーするビーチバレーは、試合会場で盗撮被害も発生している。これまでも女性アスリートが抱える問題を取材してきた「THE ANSWER」は“ビーチバレー界の今”に迫った。盗撮問題の現状、「ビーチバレー=ビキニ」という根強い印象により、選手が抱える葛藤とは。現役選手・関口希望へのインタビューで掘り下げた。(全3回の第3回、取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

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「試合後に更衣室のシャワー中に、スマートフォンを下(足元)の隙間から入れられていて……。『撮影されてる!』ってなって。友達と2人でその男を取り押さえて、一緒に警察に行ったことがありました」

 そう話すのはビーチバレーの関口希望。

 中学時代はバレーボール部に所属したが、高校、大学では陸上のやり投げ選手として活躍。大学3、4年時には日本インカレに出場した。27歳でビーチバレーを始め、現在はフルタイムで働きながら、日本最高峰の「ジャパンビーチバレーボールツアー」の表彰台を目指している。異色のキャリアを歩む中で、ビーチバレー界の切実な課題に直面してきた。

 大会は無料で観戦できることが多い。インドアバレーより選手との距離感が近いことでダイナミックなプレーを間近で見られ、試合後は写真撮影などのファンサービスも気軽に受けられる。関口が「朝からビールを片手に観戦するファンの方もいる」と話すように、海辺で開催される大会が多いだけに、レジャーとしての一面も持つ魅力あるスポーツだ。

 一方、ビキニでプレーする選手が多く、肌の露出が多いことも事実。大会は原則、メディアや主催者の許可を受けた人以外の撮影は禁止されているが、関口もサーブで客席に近づいた際、観客に不自然にスマホを向けられ、“隠し撮り”を疑う場面に遭遇することもあった。そして、冒頭で明かした競技会場における更衣室の盗撮など、性犯罪にまで直面した。

切実なお金事情、スポンサー営業で抱える葛藤「ビキニの写真の方が…」

「正直、悲しいというのが一番。最初は違った目的でも、観ているうちにビーチバレーの魅力を知ってくれる人がいれば良いのかなとも思うけど、多分いないと思うので。盗撮されることも、純粋な気持ちで応援されないこともネガティブな感情しか出てこないですね」

 多くの観客はマナーを守って観戦しているものの、本質とは異なる一部の観客の存在に本音を明かす。

 近年、度々耳にするようになった女性アスリートのユニホーム問題。ビーチバレーも昨夏のパリ五輪ではビキニ以外も着用可能に。昨年のルール変更で、上はタンクトップ、下は長めのスパッツなどの選択ができるようになった。

 それでも、選手がビキニを選ぶことには「涼しい」「熱がこもらない」などとパフォーマンス向上へ直結する理由があるという。関口は「私はどっちでも良いタイプなので、ペア(の選手の意向)に合わせる」と話すが、こだわりを持つ選手も多い。

 また、ビーチバレー選手のお金事情も切実。スポンサー収入や賞金で活動できるのは「ランキングでトップ10の人くらい」と実情を明かす。「ビーチバレー=ビキニ」の印象が先行するがゆえに抱える葛藤もある。

「スポンサーさん向けの資料でも、ビキニの写真の方が引きはあるのかなと思います。正直、めちゃくちゃ難しい」。ビキニとタンクトップの選手が対戦した試合を紹介したSNSに「やっぱりビキニだよね」といったコメントがあふれる現実に、世間の認識を痛感する。

安心してプレーできる環境を求めて…ビーチバレー界も変化、対策進む

 ただ、ビーチバレー界も徐々に変わりつつある。ビキニ着用について、肌の露出が多いユニホームが一般的な陸上競技出身の関口は「抵抗はなかった」と話すが、インドアバレーなどから転向を考える選手の障壁の1つにもなる。昨年のルール変更はそうした課題解消に一役買い、国内の競技人口は3238人(2024年度の登録選手数)と増加にもつながっている。

 他にも試合会場では「撮影NG」の張り紙やプラカードが掲示されたり、更衣室付近には人員が配置されたり、人が歩くと音が鳴るブザーが使われたりと、選手が安心してプレーできる環境づくりは少しずつ進んでいる。

 そうした取り組みに感謝をしながら、関口は一人のビーチバレー選手として思いを口にする。

「私が言うのはおこがましいけれど……盗撮などの被害が本当に減ってほしいと思っています。競技に集中できる環境が整えば、それだけで選手のパフォーマンスも変わるはずなので」

 続けてこうも語る。

「ビーチバレーは運営側も人手や予算が限られていて大変なのは理解していますが、それでも少しの見回りや注意喚起があるだけでも防げることはあると思うんです。未来の選手たちのためにも、もっともっと安心できる環境を整えていってほしいですね」

 春高バレー出場やバレーボールの強豪校出身など、インドアバレーボールで実績のある選手が多いビーチバレー。関口は約10年間のバレーボールのブランクを経て、27歳で飛び込み、今も異例の挑戦を続けている。

「自分が上手くなればなるほど、勝ちに近づける。より個をそしてチームを応援できるスポーツだと思う。観ているうちに戦術も分かってくるので、より面白くなると思う」

 本気で競技と向き合っているからこそ、ビーチバレーの真の魅力が伝わることを願っている。

■関口 希望 / Nozomi Sekiguchi

 1994年9月20日、栃木・宇都宮市生まれ。中1から始めたバレーボールで宇都宮市選抜に選出。宇都宮北高ではバレー部がなく、陸上競技でやり投げに専念。大学3年から2年連続で日本インカレに出場し、大学卒業を機に引退した。しかし、大手旅行代理店に勤務していた社会人時代にビーチバレーに魅了され、2022年8月に転向した。競技歴3年で国内ランク30位を記録。今年5月からインドアの実業団・東京スジリエでもプレー。身長170センチ。兄はDeNAなどで外野手を務めた元プロ野球選手・雄大さん。

(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)