中国当局が「NVIDIAのGPUにバックドアが仕込まれている」と主張していた件について、NVIDIAが「バックドアもキルスイッチもスパイウェアもあり得ない」と否定するコメントを発表しました。一方で、トランプ政権がAI半導体を追跡するためのソフトウェアあるいは物理的な方法を検討しているとコメントしたことが報じられています。

No Backdoors. No Kill Switches. No Spyware. | NVIDIA Blog

https://blogs.nvidia.com/blog/no-backdoors-no-kill-switches-no-spyware/



アメリカは中国に対する半導体輸出を厳しく規制していますが、2025年7月にNVIDIAやAMDは中国向けのAIチップの販売が認められ、中国市場への販売を再開しました。しかし、中国のサイバーセキュリティ規制当局は、「アメリカのAI専門家が、NVIDIAのコンピューティングチップには位置追跡機能があり、遠隔で技術を停止できることを明らかにした」と主張し、NVIDIAに問題の説明と関連資料の提出を要求しました。

中国当局が「NVIDIAのGPUにバックドアが仕込まれている」と主張 - GIGAZINE



これに対して、NVIDIAは公式ブログで、自社のGPU製品に「キルスイッチ」や「バックドア」、「スパイウェア」といった機能を一切搭載しておらず、今後も搭載しないと強く主張しています。

NVIDIAは「半導体に制御機能を組み込むと、ハッカーや敵対的な攻撃者に悪用される脆弱性となり、世界のデジタルインフラを危険にさらし、アメリカ製技術への信頼を損なうものだ」と述べ、そのようなサイバーセキュリティの基本原則に反すると論じました。

NVIDIAがブログでハードウェアの完全性に関する断固たる姿勢を示した背景には、アメリカ政府による新たな動きがあります。アメリカ経済紙のBloombergによれば、ホワイトハウスは高性能AIチップの中国への不正な流通を防ぐため、チップ自体に位置追跡技術を組み込むことを検討しているとのこと。この動きは既存の輸出規制だけでは密輸を完全に防ぎきれていないという現状を反映したもので、ある報告では、わずか3カ月で10億ドル(約1500億円)相当以上のNVIDIA製GPUが中国に密輸されたとされています。



ホワイトハウス科学技術政策局のディレクターであり、「AI行動計画」の立案者の一人であるマイケル・クラツィオス氏はBloombergの取材に対し、「チップ自体にソフトウェア的または物理的な変更を加えて、より良い位置追跡を行うことについて議論がある」と認めました。このアイデアは、アメリカの技術的優位性を維持するために先月発表されたAI行動計画に明示的に盛り込まれているとのこと。ただし、この追跡技術には課題も多く、GPSはデータセンターでの利用が実用的でないため、安全なタイムスタンプ信号を利用した遅延ベースの検証システムなどが検討されています。

NVIDIAは、国家や経済を守るために重要なインフラを意図的に弱体化させることは決して選択肢となるべきではなく、アメリカの経済的および国家安全保障上の利益に修復不可能な損害を与えかねない過剰反応だと警告しています。その上で、「信頼できるシステムは、厳格なテストや独立した検証、そしてサイバーセキュリティの国際基準への完全な準拠を通じて脆弱性をなくすことによって構築されるべきだ」と述べました。