ハリウリサさん(撮影/渡邉智裕)

写真拡大

 テンション高く叫ぶダウンタウン浜田雅功……の、ものまねで人気を博す芸人・ハリウリサさん。今注目の若手ものまね芸人のひとりだ。また、歌がうまいことでも知られており、カラオケ番組出場者の常連でもある。

【写真】幼少期、学生時代のハリウリサさん

本人公認のものまね芸人へ

「浜田さんのものまねを始めたきっかけは、先輩方のアドバイスでした。ものまね芸人の先輩方と、楽屋に置いてあったさまざまなカツラをかぶって新たな可能性を探っているときに、おかっぱのカツラをかぶった私の風貌が『笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)の定番ネタ“女装をした浜田さん”にそっくり、と楽屋が沸きまして(笑)。そのままの勢いでステージに上がると、過去最高にウケたんですね」

 当初は“女装の浜田雅功”でステージをこなしていたが、その後は“普段の浜田雅功”のスタイルに移行。それから数年後には、ダウンタウンがMCを務めるバラエティー番組で本人との初対面も果たした。

「番組出演時に『ずっと続けるなら(ものまねしても)ええよ』と、浜田さんご本人から公認してもらいました。ただ、緊張のあまり『しばくぞ、コラ!』と、なぜかご本人にツッコミを入れるという、痛恨のミスを犯してしまいましたね(笑)」

 のちに私物のスカジャンも贈られ、本人公認のものまね芸人となったハリウさんは、松本人志(59)のものまねで話題のJP(39)とYouTubeでコラボしたり、所属しているホリプロコム主催のものまねライブ『本人不在』に出演したりと、忙しい日々を送っている。

念願の歌手としてオリジナル曲が完成

 そして、10月に行われた単独ライブ『ハリウリサイタル』にて、自身初のオリジナルソング『ヴィルマ』を発表。作詞作曲は『佐賀県』でおなじみのお笑い芸人・はなわ(46)が務めた。

「もともと歌手になるのが夢で、ボイストレーニングにも通っていましたが、ボイトレの先生から『あなたの容姿では歌手の道は難しい』と諭されたんです。それでも諦めきれず、得意だった歌まねでこの道に入りました。当然、ものまねも厳しい芸の道ですが、いつか自分の歌を歌いたいという思いを同じ事務所の大先輩・ホリさん(45)に相談していたんです。すると『おまえはほかの人とは違う人生を歩んでいる。そのストーリーを歌にしなよ』と言われ、はなわさんを紹介していただきました」

 ハリウさんは、日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。そんな彼女のルーツと決意、そして、太陽のように明るく、愛情深い母・ヴィルマさんへの思いを歌うことになったという。

「まず、私自身のエピソードを文章にしてはなわさんに渡し、曲と歌詞を作っていただきました。完成した歌詞には、貧しくても音楽と笑顔が絶えなかった幼少期の思い出や、心配性な母に反発して家を出た日のことも綴られていたんです。すべての情景が鮮明に蘇り、初めて読んだときは思わず泣いてしまいました。それくらい、私の心情を深く捉えた歌詞だったんです。曲のタイトルも母の名前『ヴィルマ』に決まりました」

「リサは誰にも迷惑をかけていない」

 ハリウさんはこの曲の中で、自身が“性的マイノリティ”であることもカミングアウトしている。

「私もまだ明確に認識できていないのですが、自分が女性なのか男性なのかを限定せず、性にとらわれない“Xジェンダー”が、私のセクシュアリティに最も近い印象です。恋愛対象は子どものころから女性だったので、友達に好きな人を訊かれたら女子の名前を答えていました。でも、学年が上がると『女の子が好きなの?』と周りが不思議に思っているのを見て、自分はほかの人と違うのかも……と考えるようになりました」

 それからは、男性が好きなフリをして、女性らしい服を着るなど“女の子”になる努力をした、とハリウさんは振り返る。

「この仕事を始めてから、自分のセクシュアリティについて事務所の先輩にも相談しました。隠すつもりはありませんでしたが、私のデビュー当時はまだ、女性のLGBTQは扱いにくいという理由で、大々的な公表は避けていたんです。でも最近になってLGBTQの話題がポジティブに扱われるようになり、ホリさんやはなわさんと相談して、曲にも入れる決心をしました。何より、母が私の性を受け入れてくれた事実は“母の曲”を歌ううえでとても重要な出来事なので、避けることはできなかったですね」

 彼女が語るように、『ヴィルマ』の歌詞には、ありのままの自分を受け止めてくれた母への感謝の言葉があふれている。

 そんなハリウさんの家族へのカミングアウトは、突然訪れたという。

「実は一度だけ『もしかしたら好きになれるかもしれない』と感じた男性と、お付き合いした経験があるんです。それでもやっぱり、男性は恋愛対象になりませんでした。そのお相手は先輩の男性芸人さんなのですが、数年前にある番組で、私たちが元カップルである過去が暴露されたんです。すると、放送を見た母から『リサが男性を好きなはずがない!』と言われ、初めて自分の性について親と話すきっかけになりました」

 ヴィルマさんも、ハリウさん自身が女性らしく振る舞うことに違和感を持っていて、恋愛対象が女性であることにも気づいていた、と話してくれたという。

「母が私に、女の子らしくしてほしい、と思っているのはわかっていました。それでも昔、周りの保護者に『リサちゃんは女の子なのに男っぽくて変』と言われたときには『リサは誰にも迷惑をかけていない。あの子はこのままでいいの』と、反論したそうです。今は“リサらしくいてほしい”と言ってくれていますね。少し過保護すぎて衝突することもありますが、母はいつも私のいちばんの味方でいてくれています」

『ヴィルマ』には、わが子のすべてを受け入れる母の姿も描かれているのだ。

 さまざまな思いが詰まったオリジナル曲を聴いた、ヴィルマさんの反応やいかに?

「母はものまねよりも“ハリウリサ本人”として歌手活動をしてほしいと常々言っていたので、とても喜んでくれています。ただ、曲中に『ひとりで生きていく』という歌詞があるのですが“リサは私から離れるつもりだ”と勘違いして『あの曲は発表しないで!』と反対されちゃいました(笑)。あれは“自立”という意味だよ、と必死に説明して、なんとか納得してもらえました。今は応援してくれています。日本語って難しいですね(笑)」

 芸歴9年目にして、歌手としての第一歩も踏み出したハリウさん。今後はさらに活動の幅を広げたいと語る。

「これからも、ものまねの腕をしっかり磨きながら歌の仕事にも邁進していきます。また、私のようなルーツで、マイノリティの立場の芸人が舞台に立つことで、勇気づけられる人もいるかもしれないので、どんどん発信していきたいですね」

 母の愛を一身に受け、ハリウさんは今日も歌う。

ホリプロコムものまね軍団ライブ『本人不在』
ホリプロコム所属のものまね芸人たちが一堂に会する、業界最大級(!?)のものまねライブ。あの男性アイドルや超有名女優がステージを彩る! 
日時:11月13日(日) 13:00〜/16:30〜
会場:埼玉県・飯能市市民会館大ホール 
チケットは各種プレイガイドにて発売中

はりう・りさ●1993年、東京都生まれ。東京アナウンス学院を卒業後、ものまね芸人活動。主なレパートリーにダウンタウン浜田雅功、ホイットニー・ヒューストン、AIなど。歌唱力にも定評がある。

(取材・文/とみたまゆり)