ある晩、「彼」は中央線の水道橋駅のホームにいた。手には神田の居酒屋で譲ってもらった飲みかけた一升瓶があった。戦後すぐで物資が不足していた時代。当時の駅のホームの壁は鉄骨に丸太を括っただけの粗悪なできだった。酩酊状態の「彼」はその隙間から一升瓶を抱えたまま10メートルほど落下した。後日、こう記している。「胸を強打したらしく、非常に苦しかったが、我慢して半身を起し、さし込んだ外灯の光で、身体中をて