iPS論文の本数、日本は3位・米国や中国との差は拡大…読売新聞分析・「高い質」割合は15か国中最下位
様々な臓器や組織に変化できるiPS細胞に関する国別論文数は、2024年までの10年間で、日本が米国、中国に次ぐ第3位であることが、読売新聞が入手したデータでわかった。
日本では今秋にもiPS細胞から作ったパーキンソン病治療用製品が初めて実用化する見通しで、世界の研究を先導してきたが、近年の論文数で見ると米中との差が広がり、日本の研究力が伸び悩んでいることが明らかになった。
特定分野で見た国別論文数は、各国の研究力を測る指標になる。読売新聞は、専門家による審査を経た1億本以上の論文データベースを運用する学術出版大手「エルゼビア」(本社・オランダ)から、論文数で上位15か国のデータの提供を受け、専門家への取材を踏まえて分析した。
iPS細胞の研究が世界で本格化した15年以降の10年間で見ると、世界の関連論文数は計3万2606本に上った。国別で最多は米国の1万2203本で、中国は5162本、日本は3876本だった。以下ドイツ、英国と続いた。
15年と24年に発表された論文数を比較すると、日本が15年の約1・5倍に増えた一方、米国は約2倍、中国は約3倍で、日本を上回るペースで研究力が向上したことが示唆された。24年1年間の論文数では日本はドイツに抜かれ、英国との差も縮まっている。
研究の質の高さで世界トップクラスと評価された論文の数で見ると、日本は56本だった。米国の8分の1、中国の半分以下で、英独に続く5位だ。日本の全論文の中でトップクラスの論文が占める割合は1・5%で、15か国中最下位だった。
iPS細胞は山中伸弥・京都大教授が06年にマウスの細胞から初めて作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞。政府は、iPS細胞を使った再生医療の産業化を目指し、13年度から10年間で計約1100億円を投じて重点支援した。今年3月にはiPS細胞から作った二つの再生医療製品の製造販売が、世界で初めて条件・期限付きで承認された。
医薬品の研究開発に詳しい仙石慎太郎・東京科学大教授は「論文数で見れば日本の研究は世界有数だ。国が集中支援したことで、再生医療や産業応用の面で、米国に匹敵する成果も出ている。ただ研究の質では世界に見劣りすると言わざるを得ず、日本はiPS細胞の長期的な研究力や、技術革新の力が低下している可能性がある」と指摘する。
【データの分析方法】2015〜24年に各国の研究機関が発表した論文について、エルゼビア社がiPS細胞に関連するキーワードで検索して抽出した。1本の論文に複数の国の研究機関が関わった場合は、それぞれの国の論文として集計した。論文数の上位15か国について、特に質が高いと評価された論文(トップ1%論文)数、国際共同研究の論文数などのデータを整理し、読売新聞が分析した。
