(左から時計回りに)『ピーター・パン』©1953 Walt Disney Productions、『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』©2015 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved 、『ラプンツェルのウェディング』©2012 Disney Enterprises Inc.

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 5月29日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』(2015年)と『ラプンツェルのウェディング』(2012年)、そしてディズニークラシックの名作『ピーター・パン』(1953年)の3本立てが放送される。この3つの作品は、東京ディズニーシーの人気エリア、ファンタジースプリングスのテーマにもなっており、SNS上では「ファンタジースプリングス欲張りセット」という声もあがっている。

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 2024年にオープンしたファンタジースプリングスは、“妖精が住むといわれる「魔法の泉」が導くファンタジーの世界”として、『ピーター・パン』、『塔の上のラプンツェル』(2010年)、『アナと雪の女王』(2013年)をテーマにしている。オープン以来どのアトラクションもレストランも、長蛇の列ができる人気エリアだ。

 ここではこれらファンタジースプリングス関連の3作品が、なぜディズニー作品のなかでも“ファンタジー”の代表格として愛されているのか、同エリアの人気と絡めながら考えていきたい。

■他作品とは違うファンタジー展開の『ピーター・パン』 一般的に“ファンタジー”とは、「現実には存在しない超自然的、幻想的、空想的な事象をプロットの重要な要素あるいは主題や設定として用いるフィクション作品のジャンル」を指す。ディズニーアニメーションの多くが、この定義に当てはまることは疑いようがないだろう。ではなぜディズニークラシックの作品のなかで、『ピーター・パン』だけが今回ファンタジースプリングスのテーマとして選ばれたのだろうか。それは、この作品にしかないある特徴のためだ。

 ディズニーの初期作品である『白雪姫』(1937年)や『ピノキオ』(1940年)、『シンデレラ』(1950年)をはじめとするほとんどのディズニー作品には“魔法”の要素が関わっている。魔法は主人公たちが暮らす世界に存在しているのだ。とはいえやはりそれは特別なもので、“魔女”や“妖精”といった特別な存在がもたらすものとなっている。しかしそのなかで『ピーター・パン』だけが、「“現実世界”から“魔法が存在する世界”に移動する」という、ほかの作品とは違う展開があるのだ。これは現実世界に暮らす人々、特に子どもたちにとってわくわくする展開だ。「自分もいつかネバーランドに行けるかもしれない」、そんな想いを抱くこともあるだろう。『ピーター・パン』は、ほかのファンタジー作品以上に、夢を身近に感じさせてくれるのだ。これは、後述するファンタジースプリングスのアトラクションの特徴と関係がある。

■ラプンツェルとエルサの共通点が与える勇気 『塔の上のラプンツェル』と『アナと雪の女王』は、『ピーター・パン』以外のファンタジー作品と同様に「魔法が存在する世界」を舞台としている。しかしこの2作品に特徴的なのは、「魔法の力を持つプリンセス」が主人公であることだ。厳密には、エルサは女王なのでプリンセスではないが、主人公が魔法の力を持っているということでまとめてしまおうと思う。彼女たちは魔法の力をもつ「誰か」に助けてもらう存在ではない。自らの力で運命を切り拓く、力強い存在だ。その姿は多くの観客に鮮烈な印象と勇気を与え、「自分も自分の力で人生を歩んでいきたい」と思わせる。

 ラプンツェルとエルサが魔法の力を持っていること、「“魔法”が自身にとって自分事である」ことは、やはりファンタジースプリングスのアトラクションに通底するものがある。

■ファンタジースプリングスのアトラクションの没入感 ここで、ファンタジースプリングスのアトラクションを見てみよう。『アナと雪の女王』をテーマとした「アナとエルサのフローズンジャーニー」は、映画の物語を追体験できるアトラクションだ。オーディオアニマトロニクスやプロジェクションマッピング、そしてボートの動きを駆使して、まるで映画の中に入ったかのような没入感が味わえる。映画のあの感動的なエンディングも、間近で見ることができる。

 「ラプンツェルのランタンフェスティバル」は、映画の名シーンを再現したアトラクション。ラプンツェルとユージーンのロマンティックなデュエットが彩る、あの美しいシーンが目の前に広がる。

 『ピーター・パン』関連のアトラクションは、映画の再現ではなく、その世界観を舞台とした新たな冒険を体験できる「ピーター・パンのネバーランドアドベンチャー」だ。入園者はロストキッズの一員となって、フック船長たちにさらわれてしまったジョン(ウェンディの弟)救出ミッションに向かう。3Dメガネをかけて楽しむこのアトラクションもまた、その没入感が人気の理由の1つだ。また、「フェアリー・ティンカーベルのビジーバギー」では、自分が妖精サイズになってティンカーベルとともに荷物を配達する体験ができる。

 またすべてのアトラクションに共通しているのは、順番待ちのキューラインも物語の世界観を反映した凝った装飾になっているということだ。たとえば「フローズンジャーニー」のキューラインでは、アレンデール城の各部屋を巡り、映画ではこの部屋であんなことがあった、ここでこんなことがあったと思い出し、ライドに乗るころにはすっかり映画の世界に入り込んでいる。その後、最新技術を駆使した臨場感たっぷりのアトラクションを体験すれば、どっぷりとその世界に浸ってしまう。この“没入感”こそが、ファンタジースプリングスのアトラクションの真髄だ。

 今回放送される短編『エルサのサプライズ』は、これまで自分が引きこもっていたためにお祝いできなかったアナの誕生日を盛大に祝おうと、エルサがサプライズを準備するストーリーだ。かわいい新キャラクターも初登場し、微笑ましい姉妹愛が描かれる。

 『ラプンツェルのウェディング』は、そのタイトルのとおり、彼女の結婚式の裏話。パスカルとマキシマスが主人公となる本作はセリフがほとんどなく、コミカルな展開がつづく、年齢問わず楽しめる作品になっている。

 魔法が存在する「ここではないどこか」を描くファンタジー作品は、現実とは違う世界で夢や希望、勇気を与えてくれる。特に今回放送される3作は、“魔法”を観る者のそばに引き寄せる魅力を持っている。ファンタジースプリングスのアトラクションもまた、作品世界を私たちのそばまで引き寄せ、強い没入感で入園者を非現実の世界へと誘う。ファンタジーの世界で夢や勇気を受け取った私たちには、現実世界で明日へ向かう元気が湧いてくるのかもしれない。(文=瀧川かおり)