多忙な合間を縫って取材に応じてくれた谷口。33歳の名手が新たな決意を口にした。写真:中田徹

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 昨季は不振に喘ぎ、薄氷を踏む思いでベルギー1部リーグ残留を決めたシント・トロイデン(STVV)は、気持ちを新たに2025−26シーズンに向けた準備を進めている。7月5日にはファン感謝デーが開かれ、選手を代表して谷口彰悟が壇上で「新加入の日本人2人(松澤海斗、畑大雅)もいい選手。僕もチームも頑張ります」と抱負を述べた。
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 このファン感謝デーは、ウェステルローとの練習試合(非公開。3−1でSTVVの勝利)直後に行なわれた。関係者によると後半45分間プレーした谷口は大声で指示を出し続けたということもあり、ファンへの挨拶で声がやや枯れていたのだという。そんな谷口にイベントの合間を縫って話を伺った。

 1年前、カタールのアル・ラーヤンSCからSTVVに移籍した谷口は、最初こそコンディション作りに苦しんだが、瞬く間にSTVVのDFリーダーとして君臨しはじめ、地元メディアから称賛の記事が繰り返し掲載されるようになった。日本代表でハイパフォーマンスを発揮したのも、この時期。板倉滉(ボルシアMG)、谷口、町田浩樹(ユニオン・サンジロワーズ→ホッフェンハイム)のトリオで組んだ最終ラインのコンパートメントは、ワールドカップ・アジア最終予選初戦の中国戦(4−0)から4試合でわずか1失点という盤石ぶりだった。

「(板倉、町田との3バックシステムは)自分の中でもしっくりきた。やりやすいし、自分の特徴も出しやすい形だったので手応えがありました」

 好事魔多し。クラブでも日本代表でも際立った存在感を示していた谷口だったが、昨年11月9日、メヘレンとのホームゲーム(2−1)でアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまった。

「怪我をした悔しさは相当ありました」

 復帰したのは今年5月10日、昇降格プレーオフ最終戦のコルトレイク戦(2−2)。半年ぶりにメンバー入りした谷口は、残り2分のところでピッチに立った。そのとき、いろいろな思いが去来したのでは?

「もちろん、感慨深かったです。久々に試合の雰囲気をピッチレベルで感じることができた。リハビリも長く辛かったですし…。そういうのを頑張って良かったと実感できたし体感できた。欲を言えばもうちょっと出たかったですけれど、チームとしてしっかり結果を出して(1部残留を果たし)、僕自身はピッチに立ったことで今に繋がっている。そういった点では、今シーズンに繋がる試合でした」

 昨季は何度もダウンしかかったSTVVだったが、最後はチーム、そして各々の選手がキャラクターを示して1部に踏みとどまった。そんな苦しい思いをした昨シーズンの収穫は?

「収穫は1部に残れたということ。監督もシーズン中、2回も代わったほどチームの状況が厳しかったですけれど、目の前の結果を求めて泥臭く戦いました。その結果、1部に残留できたのは、このクラブにとって大きな収穫だったと思います。ただ、正直、上の順位で争いたいという思いがあるので、そこを見据えるとまだまだ足りない部分がたくさんあると感じてます。

 自分がピッチに立ってトレーニングやゲームができるようになったので、気付いたこと、上げていかないといけないこと、やらないといけないことを口酸っぱく言わないといけない。そうやってチームのベースを上げていきたいと思ってます」
 
 この日はファン感謝デー。彼らは谷口がプレーしているときにも、怪我したときにも、復帰したときにもチカラになったはず。

「その通りです。怪我したときもポジティブな声をかけてくれました。それはベルギーのファンもそうですし、日本で応援してくださる方もそうでした。そういった沢山の方々に応援されて支えられて自分はプレーすることができるんだなと、あらためて実感しました。そういった人たちにもう1回元気にプレーしている姿を見せて恩返ししたいという気持ちが強い。まずはシント・トロイデンでしっかり試合に出て、『帰ってきたな』と思ってもらえるよう、しっかり準備したいです」

 STVVの新シーズン開幕戦は7月27日、ホームのヘント戦。シーズン終了後にはワールドカップのある大事な1年だ。今度の7月15日に34歳の誕生日を迎える谷口は25-26シーズンに向けて抱負を語った。

「重要な1年になるのは間違いない。まずは怪我なく1年戦い抜きたい。まずはやっぱりそこ。その先に“代表”というものが見えてくる。自分が納得するパフォーマンスを出せるようにしっかりトレーニングしていきたい。

 チャンスはどこにどう転んでいるかわからない。常に貪欲に、いつでもチャンスを掴めるような準備をしておきたい。それは代表でも、クラブでもそう。サッカーはなにが起こるかわからないので、その準備は常にしておきたいと思います」
 7日から開幕するE-1選手権(東アジア選手権)の日本代表に、植田直通(鹿島アントラーズ)が実に3年3か月ぶりに招集された。大津高校サッカー部の後輩でもあるCBの代表復帰に、自らも代表への返り咲きを期す谷口も嬉しかったり、勇気づけられたり、競争心をたぎらせたり、自身のエネルギーに変換されるような気持ちを抱いたはずだ。

「ちゃんと頑張って、しっかり結果を出している選手はもう1回、“代表”というところに戻ることができる。直通はそのことを証明したと思います。彼のような選手が出てくると、自分にとっても刺激になります。自分ももう1回あの舞台に立ちたい、日本代表に帰りたいという思いは強い。今度は自分がそうなれるように、しっかり目標を持ちつつ、しっかり目の前のことを頑張っていきたい」
 
 今シーズンの俺、ここを見てほしいというところは?

「ディフェンスリーダーとして、ボールを持っているときもそうですが、ボールを持ってないときも含めて自分が仕切っていかないといけない。失点数も減らしたいですし、身体を張って泥臭く守るところをよりこだわって魅せていきたいと思ってます」

 卓越した守備範囲の広さを誇るCB谷口彰悟は、「アキレス腱の状態も含め、自分の身体と相談しながらコンディションとパフォーマンスを上げていきたい。トップフォームに持っていける自信はあります」と力強く復活を誓った。

取材・文●中田 徹