本来なら憧れのキャンパスライフを送っていたはずだったが…

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「東京で暮らすことは憧れでした。渋谷と原宿、あと浅草にも行ってスカイツリーを生で見れたのが思い出ですね……」

 大分県出身、東京都杉並区在住のフリーター・玉置勇翔さん(19歳・仮名)は、つい先日まで都内の中堅私大に籍を置く、ピカピカの大学1年生だった。とはいえ、大学には一度も通っていない。新型コロナウイルスの影響により、入学式すらなかったのである。

◆一度も大学に通えないまま辞めた

 玉置さんが住んでいたワンルームアパートには、綺麗なパソコンと十数冊のテキストブックがフローリングの床に置かれているのみ。ベッドやテレビはいずれ買おうと思っていたが、外に出るタイミング……いや、勇気が出ず、買い揃えなかったという。

「初めての東京で、コロナが拡がって、怖くなって。家に帰ろうと親に相談したんですけど、帰ってくるなと言われて。本当にひとりぼっちなんだ、と。最初は大学の授業……といってもパソコンで受けるんですけど、参加していましたよ。ただ、まわりには友達もいないし、気が滅入ってきて……」(玉置さん、以下同)

 7月の頭、いよいよ一睡も出来ないほど精神が不安定になり、兄のすすめで精神科を受診。すると「うつ病性障害」と診断されたという玉置さん。

 心配した兄が、このままでは命に危険が及ぶ可能性があるとして玉置さんを保護。現在は南関東某県にある玉置さんの兄宅に居候し、療養中だという。

「大学に行きたいな、友達がほしいな、東京でいっぱい遊んだり働いたりしたいとずっと思っていました。しかし、何ひとつできないまま、コロナのニュースを見ているうちに東京が怖くなってきて。兄に言われて病院に行くまで自分が病気だとは思いませんでした。大学に籍があると、治療も中途半端になるかもしれないと思って退学しました。なんでこうなったのか、コロナのせいだと思いますが、どこにも気持ちをぶつけられない」

◆授業料だって払っているのに…

 同じように、憧れの東京生活を始めた矢先にコロナ禍に遭遇、この3か月はほとんど自宅マンションから出ていないというのは、新宿区在住の大学生・田中みずきさん(18歳・仮名)。

「コロナは大丈夫かな、でもまさかね……と親に相談しながら、新宿に引っ越したのは3月の中旬でした。入学式も授業もないし、アルバイトも友人のツテで決まっていたのに、なかったことになりました。大学生らしいことはまったくしておらず、外にもほぼ出ていません。毎日、お母さんから送られてくるカップ麺やお米を食べて、パソコンで大学の授業を受ける……だけですね」(田中さん、以下同)

 田中さんは岩手県出身。コロナ感染者が7月29日まで確認されていない地域だったからか「コロナだらけの東京」(田中さん)から地元に帰るのはためらいがあったという。ただ、それでも、なぜ大学生だけがいまだに外に出られない状況なのかと憤りを隠さない。

「社会人の方も、高校生も中学生も小学生も、それこそ保育園生だって外に出ているのに、大学生だけなぜ授業が始まらないのか全然理解できません。授業料だって普通に払っているのに……。パソコンで授業をしますと言われても、全然頭に入ってこないし、何らかの対策をとって登校させてほしい」(田中さん)

 実際に田中さんは、所属大学宛に、何度かメールを送っているという。しかし、我慢してほしい、と返ってくるばかりで、具体的な対応に言及されることはないという。

「そうこうしているうちに第二波が来ているんじゃないですか? ますます身動きができなくなります。私たちは本当に放っておかれています。どうにかしてほしいんです」

「大学生活を送りたい」という大学生の普通の思いが叶わない現実。彼・彼女らの存在は、コロナ禍においてまさに無視されているようにすら思える。<取材・文/森原ドンタコス>