女は、直感にしたがい、時として大胆にお金をつかう。

その瞬間、彼女たちが心に描くのは、とびきりの夢や幸せな未来。

この連載で紹介するのは、“ある物”にお金をつかったことで人生が変わった女たちの物語。

欲しい物にお金をつぎ込み、夢を見事に叶えた女や、それがキッカケで人生が好転した女もいれば、転落した女もいる。

これまで、子供の塾代に500万円支払う女性やドクター争奪戦に敗れた女性や、結婚相談所に130万円かける女性、美容医療に240万かける女性が登場した。

さて、今回登場するのは?




Vol.5 ゴルフセットに8万円支払った女性


名前:大野里香さん(仮名)
職業:内科医
年齢:34歳

「人生を変える買い物、というのは金額の大小ではないと思うんです」

少しはにかみながらそう話してくれたのは、都内のクリニックで内科医として勤務する里香さん、34歳だ。

「私の人生を大きく変えてくれたのは、”8万円のゴルフクラブセット”でした」

彼女がそう言い切るには、こんな理由があった。

「ゴルフクラブセットを買ったおかげで、私、離婚後1年で再婚できたんです。だから、人生で一番買ってよかったものです」

ゴルフバッグの写真をみせながら嬉しそうに語る里香さん。瞳が大きく小動物のような愛くるしい表情に、ボブのヘアスタイルが小顔を引き立てている。

「離婚後に、友人と恵比寿のゴルフショップにに行った時のことを、いまでも鮮明に覚えています。“これから新しい人生始める!”って高揚した気持ちでした。ハイブランドのバッグを購入したときとは比にならないくらい、期待感や高揚感は、あの時がダントツに一番でした」

日本の離婚率は3組に1組という時代。彼女が離婚に至った理由を聞くと、声を潜めてこう答えた。

「元夫との離婚の原因、今だから笑って話せますが…、実は“レス”なんです…。」


元夫との離婚事情、レスに至ったきっかけとは?


レスの兆候は結婚前からあった


「元夫・涼介とは、医学部時代の先輩の紹介で知り合いました。学生時代の仲間とは、社会人になってからもよく集まっていて、年末年始にみんなでハワイに集合したときに、先輩が連れてきたのが涼介でした」

このとき、里香さんは28歳。1つ年上の涼介は、都内の大学病院で働く眼科医だった。すぐに意気投合し、付き合って1年で結婚に至る。

「とんとん拍子だったから周りには“運命だね”なんて言われたんです…でも、本当は、当時から誰にも言えない悩みがありました」

付き合っているときからレスの予兆はあったようだ。しかしお互い仕事で忙しく、きっと結婚すればなんとかなると、その時は見てみないふりをしていたのだ。

「今思えば、30歳までに結婚したいという焦りもあったんでしょうね。小さな違和感をかき消すように付き合って1年、29歳の時に結婚しました」

そんな小さな違和感を大きな現実として直面することになったのは、結婚式を挙げた直後、新婚旅行で訪れたオーストラリアでの出来事だった。

「10日間オーストラリアに行ったんですけど…」

グレートバリアリーフを見ながら極上リゾートでの新婚旅行、と”レス解消”のための条件はそろっているように思えた。

「それなのに…10日間全く何もなかったんです。キスやハグはするのにそれ以上何もないんです!信じられます?」

幸せ絶頂であるはずの新婚旅行中から悶々としたわだかまりを抱え、そのとき“離婚”という二文字が既に頭をよぎっていたとのこと。




一方で、“レス問題”以外は、いたって順調だった。二人とも多忙だったがお互いを理解し合っていたし、休みの日は一緒にデートもする。

「“それ”以外は、夫婦関係はわりと上手くいっていて。涼介はいつだってよき理解者だったから、余計に悩みました。私は贅沢なんじゃないかって」

そう言って、ため息をつき、里香さんは飲んでいたカフェラテに視線を落とす。

センシティブな問題で、かつ周りから理想のカップルと思われていたこともあり、当初は友人に相談もできなかったという。

そうして結婚2年目、そんな生活から目をそらすように、他の男性との関係を繰り返すようになった。

「今考えれば、ちょっと精神的に壊れてたのかもしれないですが…不思議と罪悪感はなかったですね」

“女としての自信”と“離婚へのエネルギー”を貯蓄していた時期だったと語る。

そうこうしているうちに、結婚生活も丸2年が過ぎ結婚3年目の31歳になったとき、真剣に子供が欲しいと思うようになった。そして、ようやく目をそらしていたレス問題に向き合わなければと自覚し、ついに勇気を出して涼介と話し合うことにした。

「この2年ずっと悩んできましたから、本当に意を決しての話し合い、のはずでした」

しかし、その話し合いで二人は決裂することになる。


レス問題を解決したい!そう思った話し合いだったはずが、決裂した理由とは?


「話がしたいと伝えて、涼介に時間を作ってもらいました。

『子供が欲しいと思っているけれど、この状態をどう思っているか?』って聞いたんです。そしたら、彼なんて言ったと思います?」

里香さんは、当時のことを思い出したのか、声がワントーン上がる。

「『何、そんなこと?』ってレス問題なんて一切ないかのように、平然と言い放ったんです。どの口が言うんですかねっ!?」

“結婚してから一度もない”状態なのに、そのことには一切触れず、悩んでいる里香さんをバカにしたような口調で、子供はすぐにできるという言いっぷりに腹が立ったとのこと。

何度尋ねても核心には触れず、彼はレス問題に全く向き合う気がない、ということがはっきり伝わってきたという。

「その瞬間、自分の張りつめていた緊張の糸がプツンと切れました。あぁ、そうなんだって。この人と話し合っても無駄だと思いました」


夫婦関係に見切りを付けスピード離婚を決断


そこから里香さんの行動は、驚くほど早かった。

週末、不動産屋に行って赤坂の1LDKのマンションを即契約。そして最低限の荷物を持ち、二人で住んでいた目黒のマンションを出る。

「あのとき、医者で本当に良かったなって思いました。経済力があったお陰で、迷うことなく決断できましたからね。しかも、生活レベルを全く落とすことなく」

離婚届けを出したのは、別居から2か月ってからだった。

「…一応、別居期間中に二人で話し合いましたけど、彼はレス問題に結局取り合ってはくれませんでした」

1週間で部屋を出て、2か月後に離婚届けを出す。このスピードには、驚かされる。

そして離婚原因は、レス問題だったと周りに話し始めて、実は周りに同じ悩みを抱えた夫婦やカップルが多いという事実を知ったという。

しかし、みんな悩みを抱えながらも、離婚や別れるという決断をするまでには至っていない人がほとんどだとも知る。

そんな中、里香さんが素早く離婚を決断できた理由は、経済的に自立しているのはもちろん、彼女の“決断したら一直線”という性格もあるのだろう。


離婚後1年で、再婚できた理由


離婚後、すぐに「再婚活」をスタートさせ「35歳までに結婚する」と目標を立て婚活市場に舞い戻った里香さん。

「離婚した話を同僚や友人に話すと、みんな離婚して寂しいだろうと、お食事会やゴルフに誘ってくれました。そこで、前々からゴルフに興味があったので、これを機にゴルフを本格的にやろうって」

そして未来への希望を抱きながら、ゴルフクラブを一式購入し、ゴルフを始めた。その夢はすぐに現実となる。

「もちろんゴルフを始めたのは、趣味を通じた出会いを期待していたからです。でも、心機一転、新しいことを始めたいという気持ちもありました」

さっそく、外苑前のゴルフスクールに通い、ラウンドデビューをした。

「そのラウンドデビューの時に、友人が呼んでくれたのが今の夫です。結局、彼もドクターなんですけどね。逆に私の場合、ドクター以外と知りあうことの方が難しくって」




離婚後、再婚相手に望む基準が変わったと話す。純粋に「この人の子供が産みたいかどうか」という本能を、唯一の判断基準にしたようだ。

「独身時代はステイタス重視で選んでいたところもありましたけど、離婚したら、相手の学歴とか経済力とかどうでもよくなって。いざとなれば、自分が稼げばいいやって」

そんな彼女の「決断したら一直線」の性格は今の夫との初デートの時にも表れた。

「初デートの時にかなり攻め込んで、彼に付き合おうって言わせました(笑)」

お互い忙しいので、次のデートがいつになるかわからないと思ったからだという。

「夫に後から聞いたら、“すごい勢いの女だな”と思ったらしいですが、不思議と嫌な気はしなかったって言ってました」

そう、嬉しそうに話す里香さんには、今1歳になる娘がいる。

幸せを掴んだのは、ゴルフセットを購入したことがきっかけだと里香さんは語るが、その決断力と行動力もぜひ見習いたいものである。

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