WBCでハッキリ《野球は飛ぶボールの方が面白い》 NPB元凶の“地味スポーツ化”で噴出する不満と懸念
野球の世界一決定戦・WBCが3月5日に開幕。世界に誇るスーパースター・大谷翔平(31=ドジャース)の凱旋帰国に日本中が沸き立っているが、目の肥えた野球ファンは“微妙な違和感”を察知し、日本プロ野球(NPB)に対する不満の声が漏れている。
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今回の侍ジャパンは大谷を筆頭に、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(レッドソックス)、村上宗隆(ホワイトソックス)、岡本和真(ブルージェイズ)と、メジャー軍団が集結。期待通り、毎試合のように派手なホームランが飛び交っているが、気になるのは本数だけでなく飛距離だ。いくら長距離砲がそろっているとはいえ、打球の飛距離がケタ違いなのだ。
「第1次ラウンド韓国戦の一回裏に鈴木が打ったホームランに、解説者と実況アナの反応は“あれが入るんだ”という感じでしたが、ボールの影響もかなりありそうです。NPBでは飛ばないといわれるNPB球が使われますが、WBCでは飛ぶメジャーの公式球が使われていて、明らかに打球の質が違うのです」(メディア関係者)
WBC開幕前の強化試合では吉田と鈴木がNPB球で京セラドーム5階席まで届く特大ホームランを叩き込んだ。2人ともメジャーの第一線で活躍する超一流打者。メジャーに対応するためにパワーアップしたのかもしれないが、多くのファンはそうは捉えていない。本大会でも一発が量産されていることにXには、
〈やっぱ飛ぶボールの方が見てて楽しいね〉
〈間違いなく日本のボールより飛ぶボールやわ〉
〈NPB球もこれぐらい飛ぶボールにしようぜ〉
といった声が大量に上がっている。背景にあるのは、近年のNPBの極端な投高打低だ。
「ここ数年のタイトル争いを見ると、打撃部門の数字の低さが際立ちます。2024年、2025年と2年続けて3割打者は両リーグで3人、30本塁打以上は2人だけ。2023年のパ・リーグのホームラン王はわずか26本でしたし、昨年のセ・リーグは一時3割バッターが消え、“2割台で首位打者”の可能性もありました。
選手やファンからしばしば上がる“ボールが飛ばない”という声に対し、NPBは“反発係数は規定内である”という公式見解を崩していませんが、これでは説明がつかない点も多い。例えば両リーグの総本塁打数は2021年から2025年でおよそ4分の3になり、チーム防御率や失点数などのデータは向上しました。
一部の専門家は、投高打低の理由として投手のレベルアップをあげますが、これも疑問の余地が多い。例えば、『育成理論の進化で球速が上がりやすくなった』『ラプソードやトラックマンといった計測機器で球質を可視化できるようになった』というのが主な理由ですが、それではメジャーが投高打低になっていない理由の説明がつきません。基本的に日本の練習メソッドはメジャー仕込みのものばかりですから」(同)
■点が入らない野球はつまらない
現場からも、近年の日本野球界の“スモールベースボール化”を危惧する声は少なくない。高校野球関係者はこう語る。
「高校野球では2024年から低反発バットが導入され、ホームランが激減。夏の甲子園のホームラン数は2017年は68本でしたが、昨夏はわずか10本でした。甲子園に出るような強豪校の選手でもホームランを打てないんですから、“その他大勢”の子が低反発バットでホームランを打てるわけがない。大半の選手が野球の華のホームランと無縁なんて、何が面白いんですか。
ホームランが出にくく、ロースコアのゲームが多い上、タイブレーク制も導入されたため、守備の重要性が飛躍的に増し、野球部の練習は守備やバントなど、地味なものばかり。今春のセンバツからDH制が導入されるとはいえ、少年野球でも、打撃練習より守備練習に多くの時間を割くチームが大半です。ただでさえ野球人口が減っているのに、バントや前進守備の練習ばっかりさせられるような地味なスポーツに、今の子どもたちが惹かれるわけがありません」
別のメディア関係者もNPBに対する危機感を隠さない。前出のスポーツ担当記者は、NPBの魅力の乏しさを指摘する。
「NPBが飛ばないボールに固執するのは、“試合時間の短縮を図りたい”“統一球でホームラン数が激減した際に批判が殺到したため、仕様をコロコロ変えたくない”“球場にはファンが入っているから何も問題はない”といった理由でしょうが、投手戦を喜ぶのは野球通だけ。ライト層が見たいのはホームランですよ。
現時点では大谷翔平という不世出のスターがいるので、野球界は盛り上がっているように見えますが、トップ選手のメジャー流出は止まらず、甲子園からもここ数年、スターは生まれていません。さらに今回のWBCは地上波中継もナシ。NPBは今のうちに何か手を打たないと、待っているのは深刻な野球離れですよ」
NPBの投手は今の状況を大歓迎だろうが、飛ばないボールが野球への興味を削いでいる現実にも目を向ける必要がありそうだ。
(石井洋男/ライター)
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ところで、WBC開催にあたり、なぜ日本はいつまでたってもMLBの“金ヅル”から抜け出せないのか。日刊ゲンダイで「マネーボール」を連載中の元ソフトバンクの球団幹部・小林氏は本紙コラムで、「MLB側に苦言を呈したし、提案もした」というが、即座に跳ね返されたという。いったいどういうことか。
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