■みんな自分は頭がいいと思っている

知的な人だと思われるにはどうすればよいか。まず大切なのは、「アピールしないこと」です。人に知的だと思われたいと思ったとき、つい人は自慢をしてしまう傾向があります。自分がどれだけものを知っているか主張したくなるのです。しかし、自慢をしようとすると、それだけで手一杯になってしまい、その意図は相手に伝わるもの。自分はアピールしようとしているのではないかと意識しながら、時々立ち返ってみる必要があります。

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また、余裕をもって相手に接すること。コミュニケーションにおいて余裕はとても重要です。余裕とはつまり、聞き手に回ることです。相手の話を聞いたうえで、話を膨らませていくのです。人は自分の話を聞いてもらっていると感じることで気分がよくなります。

たいていの人は、自分は頭がいい人間だと思っているものです。そのため、自分の話をしっかり聞いてもらえると「この人は自分の話が理解できているようだ。ということは、この人は自分と同じくらい頭がいいだろう」と考えるはずです。もし「自分はバカだ」と思っている人に同じ対応をしたとしても、「この人は自分の話を受け入れてくれている。きっと頭がいいからだろう」という印象を持つはずです。

いずれにしても相手の話を受け入れることで、バカだと思われることは、まずないでしょう。聞き手に回って話を聞く際は、「なるほど」「わかります」と返せば十分です。もし、わからないことがあったときは、素直に聞きましょう。ただし、聞き方にポイントがあります。それは「教えてください」というスタンスを取り、相手を立てること。わかったふりをして話を合わせようとするのではなく、わからないことをインタビューするように聞くのです。

精神科医 ゆうきゆう氏

ものを教えるという行為は、人を気持ちよくさせる効果があります。「この人は自分が教えたことを理解しているな」と気持ちよくさせることで、相手から頭がいい人だと思ってもらえる。相手に教えを乞うことによって、逆に知的に見られることもあるのです。

しかし、自分の知っている話をまったくしてはいけないというわけではありません。あるトピックについて相手は知らなそうではあるけれど、自分はよく知っている、という状況があったとします。このとき、相手の知らない知識を嫌みなく説明できるというのは相手に知的な印象を与えることができます。例えば心理学用語の「単純接触効果」という言葉を使うとしましょう。

「ほら、単純接触効果っていう用語があるじゃない。知らないの? それはね……」

このように、知っていて当たり前というような言い方をすると、まさに自慢になってしまいます。そこで、「心理学では単純接触効果という効果がありますが、これは、人は繰り返し会って話すことによって自然と好感度や印象が高まるというものらしいですよ」と、辞書を引いてみたというイメージでソフトに伝えてみるのです。1度の会話で1、2個の小話であれば、相手も新しい知識を得られたことで少し得をした気分になります。基本的に知っていることをアピールするのではなく聞いて受け入れる姿勢を持つといいでしょう。

■その場しのぎで、終わってしまうパターン

「知的な人」と思われるために知的でない人がとる方法というと、以下のようなものが挙げられます。

・難しい言葉遣い
・知識を披露する

知的な人になりたいと思うがゆえに、難しい言葉を使ったり、知識を披露したりしようとすると、無理が生じてきます。無理をすることによってその場しのぎが生まれてくると考えられます。話している人との長期的ないい関係をつくろうと意識することが大切です。そういった意識があれば、無理に難しいことを言おうとは思わなくなるのが自然です。なぜなら、「相手に賢いと思わせること」よりも「自分の言葉が相手に伝わること」のほうが重要になるからです。

先に述べましたが、難しい言葉をあえて使おうとする人は、バカに見えてしまいます。このような人々は「知的に見られたい」という欲求が強い傾向があります。知識を持っていない人を見て優越感を得たいのです。周りが知らないであろう言葉を口にして、人々がぽかんとしているのを見て喜びを感じるのです。

しかしこれは、自信のなさの裏返しです。結局、目的が「優位に立つ」ことであるため、知識も中途半端であることが多いのです。周りには「なぜこの人は、コミュニケーションを難しくするような言葉や知識をわざわざ使っているのだろう」と思われてしまうでしょう。これが、「バカに見えてしまう」流れです。そのため、変に難しい言葉で話すよりは、簡単な言葉を意識して使って、きちんと相手に伝えるほうがいいでしょう。

■そもそも知的に見える人とは何なのか

純粋な知性の高さはIQやWAISなどのテストで調べられます。ただし、知性の高さが直接、コミュニケーション能力の高さにつながるわけではありません。

クイズが即答できて、パズルが天才的に解けても、周りとのコミュニケーションが苦手な人もいます。ある研究では「IQの高さと経済力は比例しない」というデータもあります。仕事などの成功にかかわるのはコミュニケーション能力なのです。会社を率いる、取引先と付き合っていくなどの行動は、コミュニケーション能力なくしては成立しません。

つまり、「知的に見える」要因は、純粋な知性の高さや知識量ではありません。真の「知的な人」はコミュニケーション能力が高く、洗練されているという印象を周りに持たせる人なのです。よって、知的な人になりたいときに目指すべきなのは、知識を増やすことや難しい話をすることではなく、洗練された知的な雰囲気を発することなのです。

コミュニケーションの中で上記のことを実践できている人が知的に見えるのではないでしょうか。

▼知的に思われるには、余裕をもって相手に接すること
・話の聞き手に回って、相手を気持ちよくさせる
・わからないことは素直に聞き、下手に出る
・「教えを乞う」スタンスで、相手を気持ちよくさせる
▼なぜバカに思われるのか
自らの知識をアピール、自慢してしまう。難しい言葉を選んで使ってしまう
目的が「相手に話を伝えること」ではなく、「相手より優位に立つこと」になってしまう
自信のなさの裏返し。知識の中途半端さが露呈する
バカに見える

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ゆうき ゆう(ゆうき・ゆう)
精神科医
心理学研究者、漫画原作者、作家。ゆうメンタルクリニック総院長。原作を担当した『マンガで分かる心療内科』シリーズはベストセラーとなっている。
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(精神科医 ゆうき ゆう)