TOEIC“700点の壁”を超える「音読10のルール」
■スコアの“粉飾”で伸び悩む人
これからTOEICを受けようという人は、点数さえ上がればいいのか、英語が使いこなせるようになりたいのかを考えてほしい。
「TOEICは、いわば“英語の健康診断”。現時点の自分の英語レベルを、数値で示してくれます。でも、健康診断でもいるでしょう? 検査日1週間前から酒を断ち、酢大豆を食べ、数値を粉飾する人が。本来は健康であることが大切なはずなのに、いつしか目的がすり替わっている。さて、TOEICでも、似たようなことをしている人はいませんか?」
企業は「いよいよ英語が使えなければ戦えない」と考えて、社員にTOEICのスコアを要求する。だが、社員は言われた点数をクリアすることばかりに気を取られ、英語を使えるようになる勉強をしていない。
「以前は社員に700点突破を課していた企業が、750点、800点……と、どんどんハードルを上げているという話を聞いたことはありませんか? いくら高得点を取らせても現場で英語が使えないので、企業もイライラしているんです」
英語が使える、とは「読む・書く・聴く・話す」の4技能が使いこなせることをいう。だがTOEICは「読む・聴く」の2技能テスト。ここに最大の齟齬がある?
「実は、TOEIC自体がそこを心配して、『SWテスト』という“話す・書く”テストができました」
こう聞くと「今のTOEICでも手一杯なのに、さらに2科目追加されるのか……」と思われるかもしれないが、
「テストの問題を解けるようにならなくちゃという意識だから、そういう発想になるのです。英語ができるようになれば、読むも書くも聴くも話すも同じこと。2技能テストでも高得点が取れるし、英語が使えるようになりますよ」
■英語とピアノの共通点とは
具体的に何をどうやればいいかは、後述の「学習プログラムマップ」にある通り。TOEIC対策用の教材を用いるが、使い方は文法でも長文読解でもリスニングでも同じだ。
まずは、文構造や知らない単語を調べ完璧に読解、そしてひたすら音読だ。リピーティング、サイト・トランスレーション、リード・アンド・ルックアップ、音読筆写、オーバーラッピング、シャドーイング、加速トレーニング、ショート・プレゼンテーション……なんと音読のバリエーションだけで八種類もある。
「ときどき“こんなにやらなくちゃいけないんですか!”と驚かれるのですが、これくらいやらないとだめなんです。言語を使いこなすとき、文法がどうだ構文がどうだと考えていませんね。必要なフレーズが自動的に、反射神経で出てきます。それには、口と耳を使って訓練する。英語は勉強じゃない、訓練です」
外国語の学習はピアノのレッスンに似ている、と安河内先生。最初に楽譜や指の運びといったルールを覚え、パートごとに先生の後について弾き、ゆっくり弾き、スピードを速めて弾き、感情を込めて弾き、ようやく自分のレパートリーになる。けれど、そうして覚えた曲は生涯忘れず、次の曲はもっと早く上手に弾けるようになる。
「英語は、机に座ってマークシートを塗るような訓練では上達しません。最低でも50%以上、できれば80%は耳と口を使った訓練に充ててください。静かな図書館や学習室では、英語ができるようにはなりません。それは、どんなに真剣に楽譜を読んでも、楽曲を聴いても、演奏できるようにならないのと同じです」
そうしてテスト間近になったら、満を持して『TOEIC新公式問題集』に取りかかる。最初は本番と同じように、きっかり2時間で終わらせること。さらに、答え合わせをしてお仕舞いにせず、3回でも4回でも繰り返す。何度もやると答えを覚えてしまうかもしれないが、構わない。特にリスニングは何回目かでも満点が取れれば、聴こえなかったところが聴こえるようになった証拠だ。
「少々キツイ学習法を提案したかもしれませんが、語学の習得には必要な過程です。その代わり、このやり方を実践してもらえれば“700点の壁”なんて軽々と超えられますし、満点だって狙えます。大切なのは、すぐ始めること。躊躇している時間は、もったいないですよ!」
■スコア600点台の人のための学習プログラムマップ
[1]文法・単語の勉強……精読ができる文法・単語の理解
[2]リピーティング……音を真似て発音を覚える
[3]サイト・トランスレーション……英語と日本語訳を交互に音読する
[4]リード・アンド・ルックアップ……1節ごと音読→顔を上げて発音
[5]音読筆写……1節ごとに音読→書く(タイプする)
[6]オーバーラッピング……音源にかぶせて音読
[7]シャドーイング……テキストを見ず音源を追いかけ復唱 ※ゆっくりとした速度の音源でやるのがコツ
[8]加速トレーニング……どんどん速く音読できるようにする ※語のつながりによる音の変化(リエゾン)も意識しながら
[9]ショート・プレゼンテーション……“自分の言葉”として言えるように
[10]長文リスニング……音源だけを聴いて理解できるように
■単語も文法も音読で覚える
『新TOEIC TEST 出る順で学ぶボキャブラリー990』神崎正哉著 講談社
……公式問題集から頻出の3300語を厳選。スキマ時間にちょこちょこ聴いて、フレーズごと丸覚え。最終的に暗唱できるまでにすること。CD付き。
『1駅1題 新TOEIC TEST 文法特急』花田徹也著 朝日新聞出版
……パート5、6対策に。文法問題は選択肢に目を通し、精読すべきか速読すべきか区別し、メリハリをつけて本文にアプローチするのがコツ。本書はCDは付属しないが、サイトから音源をダウンロードできる。
■机に向かう勉強は減らせ!
『新TOEIC TEST読解特急2 スピード強化編』神崎正哉、TEX加藤、ダニエル・ワーリナー著 朝日新聞出版
……リーディング用教材はどこでも読めて、つねに英文に触れられることが大事。「特急シリーズ」はコンパクトなサイズもいい。音源はサイトからダウンロードできる。
『TOEICテスト公式プラクティスリスニング編』財団法人・国際ビジネスコミュニケーション協会
……多数の問題を繰り返し聴くスパイラル方式で、リスニング力がアップする。本家本元のIIBCから発行されているので信頼性は抜群。CD付き。
■通勤時間を有効に活用できるおすすめスマホアプリ
NHK WORLD:英語ニュース「NEWSLINE」はリスニング対策の勉強に最適(iOS/Android)
……NHKの国際放送はスマホアプリでも視聴できる。「NEWSLINE」は毎正時放送。
Flashcards Delux Lite:知識はデータベースで管理する。単語帳を取り込むこともできる(iOS/Android)
……スマホは単語帳にもなる。音声をつけたり、ランダムに出したり、覚えられない語だけの集中特訓も。無料版あり。
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1967年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部卒。大手予備校の超人気講師。TOEIC4技能すべて満点、英検1級、通訳案内士など様々な資格を持つ。文科省「英語教育の在り方に関する有識者会議」委員として、英語教育改革に取り組んでいる。著書に『ゼロからはじめて600点取れるTOEICテスト勉強法』などがある。
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(文=渡辺一朗 教えてくれた人=安河内哲也先生)
