妻のSOSに気付けなかった夫。43歳主婦が家庭の外に救いを求めた切実な理由【著者に聞く】

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40代を迎え、ふと立ち止まったときに感じる「自分の人生はこのままでいいのか」という漠然とした不安。セミフィクションコミック『心の不倫は罪ですか?』の主人公・胡桃(くるみ)は、まさにそんなミッドライフクライシスの渦中にいます。
家庭での居場所を失い、孤独に押しつぶされそうな彼女が、偶然出会った男性に「ただ寄り添うこと」を求めた心理とは? 今回は著者であるとげとげ。さんに、胡桃というキャラクターに込めた思いを語っていただきました。


主人公は43歳の母親、胡桃。「いい母親」であろうと必死に家庭を守ってきましたが、中学生の息子は不登校、高校生の娘からは軽蔑され、夫は上から目線の小言を繰り返すばかり。家庭内に居場所を失い、心がひび割れていく日常の中で、彼女は宅配業者の男性・匠と出会います。


二人が共有したのは、肉体関係ではなく、たださびれた公園でコーヒーを飲み、たわいもない話をすること。家族には見せられない弱音を吐き出せるその場所は、彼女にとって唯一の「安全地帯」となっていきます。しかし、家族以外の男性に心のよりどころを求めていることに気づいた彼女は、その関係性に葛藤して……。
■誰の身にも起こり得る「日常の延長線上の不幸」
――主人公の胡桃(くるみ)というキャラクターは、どのような女性像として描かれましたか?
とげとげ。さん:胡桃は、会社員の夫と高校1年生の娘、中学1年生の息子を持つ母親という設定です。短大卒業後すぐに結婚して家庭に入ったため、ほとんど社会人として経験がなく、「自分には何もできない」と、どこかで諦めを抱いている女性として描きました。
もともと大人しく口数も多いほうではなく、友人関係でも聞き役に回ることが多いタイプです。誰かの言うとおりに生きるのが当たり前で、自分で何かを決めてきた実感があまりありません。娘が一番本音を話せる相手であり、そこに少し依存している部分もあります。


――身の回りにリアルにいそうなキャラクターだと思いました。
とげとげ。さん:そうですね、特別な女性というより、「どこにでもいそうな、自分に自信のない女性」にしたいと思いました。読者の方が自分自身や身近な友人を重ねられるような存在です。少し危なっかしくて、ついアドバイスしたくなる。でも、どこか放っておけない、そんな人物として設定しました。


――胡桃をとりまく「つらさ」はどれも身近でリアルなものですが、それだけに周囲からは「そのくらいのこと」と軽く扱われてしまいます。胡桃の抱える「つらさ」について、このような設定にしたのはなぜですか?
とげとげ。さん:胡桃の夫は悪人ではないけれど、常に上から目線で寄り添わない。不登校の息子を抱え、娘からは「ママみたいになりたくない」と言われてしまう。どれも現実にはよくある出来事で、周囲から見れば「そのくらいのこと」と軽く扱われてしまうかもしれません。
でも、本人にとってはひとつひとつが大きな痛みです。しかもそのつらさを、周りにうまく言葉にできない。支えにしていた娘に距離を取られ、理解してほしい相手からは理解されない、そうした孤独の積み重ねの先に、「心のよりどころ」を求めてしまう気持ちがあるのではないかと思いました。
胡桃が家庭の外に心のよりどころを求めるまでには、それなりの切実さが必要だと感じていました。そのため、彼女を取り巻く状況は決して特別ではないけれど、本人にとって確実に心を削るようなものに設定しました。極端な不幸ではなく、誰の身にも起こり得る“日常の延長線上の現実”として描くことで、読者の方に自分ごとのように感じていただけたら、と思います。
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特別な不幸ではなく、誰の身にも起こり得る孤独の積み重ね。とげとげ。さんが描くのは、ままならない日常を必死に生きる「私たちの物語」です。胡桃の葛藤の果てに何が待っているのか。胡桃と匠の関係性の中に潜む、再生へのささやかな希望に、あなたはどんな思いを抱くでしょうか。
取材・文=レタスユキ

