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680psを活かすためのアップデート

アストン マーティンのニューモデル、『ヴァンテージS』が上陸を果たし、その試乗会が千葉県南房総市のTHE MAGARIGAWA CLUBで開催された。

【画像】超高速域で手応えあり!680psの後輪駆動モデル『アストン マーティン・ヴァンテージS』 全48枚

2023年にオープンしたこの施設は1周3.5kmのクローズドトラックを含む会員制のドライビングクラブだが、試乗会の舞台としても重宝されている。特に今回のヴァンテージSのようなハイパワーモデルを試すステージとして最適といえるだろう。


全方位的にパフォーマンスを高めた改良版『アストン マーティン・ヴァンテージS』。    アストン マーティン

現行モデルは2017年にフルモデルチェンジが敢行され、その際V8ヴァンテージからヴァンテージへと名称も変更されている。2024年にはフロントまわりが大幅に変更され、同時にメルセデスAMGから供給されているV8ツインターボも155psアップとなる665psへスープアップされていた。

今回デビューしたヴァンテージSは全方位的にパフォーマンスを高めた改良版と言える1台で、最高出力は680psまで引き上げられている。そうなるとシャシーはもちろんエアロダイナミクスにも手が加えられているのは当然。パワートレーンを支えるマウント類の固定方法や硬さも変更されているという。

一目でわかるエアロはリアリッドの端を跳ね上げて見せるカーボン製のリップが印象的で、最高速時には44kgのダウンフォースを発生する。車体下の整流も含めると全体的なダウンフォースは110kgも増しているという。

では斜め上方に跳ね上がるドアを開け、カーボン筐体のバケットシートに収まって走り始めることにしよう。

240km/hでも平常心

コースは前半がストレートを含むハイスピード、後半がアップダウンを含むテクニカルなレイアウトだ。走り始めて感じるのは、バケットシートはもちろんだがコクピット全体が体にフィットするような空間になっていること。

スポーツモード+ATシフトのまま最初のストレートを加速してみると、各ギアで6600回転くらいまでキレイに引っ張り、軽く200km/hを超えた。驚くべきはその速度域でも車内が非常に静かなこと。スピードが出過ぎている! という緊迫感もないので、ラジオ局を選ぶことは難しいが、ボリュームを上げるくらいの操作ならできそう。


ブレーキングポイントの手前で240km/hまで最高速が伸びた。    アストン マーティン

ストレートに入る手前の中速コーナーの脱出を頑張った2周目は、ブレーキングポイントの手前で240km/hまで最高速が伸びた。それでも車体が浮つくような感じは皆無で、むしろそこからさらに加速していける実感がある。6000回転で到達する680psよりも、そこに至る中回転域のトルクの太さのほうが印象的。最高速325kmはダテではないのだ。

空力特性を考えるとリアのオーバーハングがもっと長い方が良さそうに思うのだが、それでも全くスタビリティに問題がないのは、今回リアに追加された小さなスポイラーのおかげだろう。200km/hオーバーからのフルブレーキングの最中でもステアリングを修正する必要はなかった。

低い心拍数を保ったまま、コーナーのエイペックスを精確に狙っていける。これこそアストンマーティンが理想とするスポーツドライビングに違いない。

コーナーで踏んでいける2駆

ドライビングモードをスポーツプラスにすると、ターンインしてからのロール剛性が上がっていることが感じられ、フロントに搭載されたV8の重さをほとんど感じなくなる。

前走者の関係でペースが落ちると重厚なアストン マーティンらしい感覚が伝わってくるが、ペースが上がると身のこなしが軽くなり、自信をもってコーナーで踏んでいけるようになる。ターンインで開放スロットルオンで締結という動作を繰り返しているであろう電制LSDの暗躍も見事で、意識的に流そうとしない限りリアもスライドしない。結果としてサーキットレベルの速度でも躊躇なくスロットルを踏んでいけるのである。


サーキットレベルの速度でも躊躇なくスロットルを踏んでいける。    アストン マーティン

これほどの高出力をリアの2輪だけで伝えるスポーツカーは年々少なくなっているし、車重1750kg程度というのも時代やパフォーマンスと照らし合わせればかなり軽い部類に入る。そして何より大事なのは、いかなる速度域でもスーツを着た紳士のようなアストンらしい立ち居振る舞いを失わない点だろう。

そういえば先日訪ねたスーパーGT開幕戦の岡山でも、ヴァンテージGT3がサラッとポールトゥウィンを決めていたし、大きな注目を集めたニュル24時間でも3位表彰台を獲得。今どきのスーパースポーツはクルマ自体の完成度に加え、レーシングシーンでの活躍もオーナーのプライドをくすぐるに違いない。

時代相応のアップデートが施されたヴァンテージSはアストンマーティンのイメージをさらなる高みに引き上げてくれる傑作だ。