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多様な学びの場が求められる時代、選択肢のひとつとして高校の通信課程が見直されています。多様な分野のゲストを招いて社会の今を深堀りするRSKラジオの生放送番組『春川正明の朝から真剣勝負』、2026年4月7日の放送では、岡山操山高校通信制課程教諭・宮田拓さんをゲストに迎え、通信制の現状や魅力のほか、冤罪事件を題材にした学習への挑戦など、幅広い学びの実践について聞きました。

【写真を見る】岡山操山高校通信制・宮田拓教諭がラジオで語る 「高校生の10人に1人が学ぶ」通信制高校の魅力・社会課題を題材に学びの幅を広げるゼミ学習にも挑戦

高校生の10人に1人が通う 通信制高校の現在

全国で通信制高校のニーズは高まっていると言われます。実際はどうなのでしょうか。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「今、高校生の約10人に1人が通信制高校で学んでるという時代になってます。背景には不登校の増加だったり、学校に対する意識の変化っていうのがあると思うんですけど、非常に今増えていっていて、社会の中でもちょっと存在感を増してきているっていう、そんな現状がありますね」

岡山操山高校の通信制課程では、授業は日曜日と月曜日に行われているそうですね。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「日曜日が一番生徒がたくさん来る日なんですけど、月曜日は日曜日来られない事情があったり、月曜日に来たいっていう子が来てるっていうような感じですかね」

年齢もさまざま。幅広い層が学んでいるといいます。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「やっぱり一番多いのは10代の生徒ですが、20代の生徒もたくさんいます。それからキャリアアップのためにということで、学び直しにっていう形で来られてる社会人の方もいらっしゃいますよ」

通信制高校ならではの多様な生徒と柔軟な学びのスタイル

「通信制」という名称からオンライン授業を想像した春川さん。宮田さんは、岡山操山高校の通信課程では、対面の授業が中心と説明しました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「うち(岡山操山高校通信制)は、まだなかなかそういうところ(オンライン授業)ができていません。対面の授業を大事にしている学校になります」

宮田さんは、通信制の強みのひとつとして、生徒のバックグラウンドにあわせて柔軟な学び方ができる点をあげました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「個別の事情があって学校に行けなかったり、あるいは行かなかった生徒たちがやはり多いのは多いですね。背景が多様なので一口には言えませんが、働きながらでも学べる学校でもありますし、子育てをしながら学ばれてるっていう方もいます。自分の学びのスパンに合わせて3年以上かけて卒業していくケースもありますし、それがアジャストできる。それが通信制高校の強みかなというふうに思ってます」

ただ、全国的に通信制が注目を集めるなかで、岡山県の公立高校の通信課程は操山高校だけだとも指摘しました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「岡山の県立の高校ということになりますと、うちのこの操山高校の通信制課程一校だけですね」

教員24年目・宮田先生が教員を志したきっかけ

ところで、現在は高校の通信課程で教える宮田さん、そもそも教員を目指したきっかけは何だったんでしょうか。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「小学校6年生のときにいい先生に出会って、それで小学校の先生になろうと思うんですね。そして、中学校3年生のときにまたいい先生に出会って、今度中学校の先生になろうと思うんです。高校3年生のときにまたいい先生に出会いまして、今度高校の先生になろうと思うんですよ」

大学進学後も同様に良い出会いの経験をしたことが、最終的に高校教員という選択につながったといいます。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「大学に行ってまたいい先生に出会うわけですね。今度大学の先生になろうと思ったんですけど、大学は教育も研究も大事な仕事になってきますよね。改めて思い直したときに、高校の先生になろうと思ったんだったっていう自分の原点を思い出して教育実習に行くんです」

教育実習は、自分を試す場だったと振り返ります。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「歴史の授業で教育実習したんですけど、京都や奈良の授業をするっていうことであれば、京都や奈良に行って、現地取材をした授業をやってみようっていう。おもしろい授業を作りたいっていう気持ち、これが自分の原点かなと思ってます」

単位にならないゼミ学習・冤罪「甲山事件」に挑む生徒たち

通常の授業とは別に、宮田さんが取り組んでいるゼミ学習について話してもらいました。通信制だからこそできる、学びの幅を広げるチャレンジです。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「通信制高校に赴任して、通信制だからできることってなんなんだろうなっていうことを考えていたんです。授業の回数自体は少ないですし、全部の授業に生徒が出席するとは限りません。そうすると大学の授業に近い感じかなと思うんですけど、授業以外で学びの時間というのを確保できないかなっていうことを考えて始めたのが、ゼミ学習ですね」

ゼミ学習は単位には認定されないにもかかわらず、生徒が積極的に参加しているといいます。取り組んだテーマのひとつに「模擬裁判」があります。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「教科書に出てくるある事件を生徒たちと一緒に膨らませていって、実際に日曜日の授業で模擬裁判をやる。弁護士の先生とか大学の先生にもご協力いただいて実施しているんですけど、模擬裁判を日曜日だけではなく、平日も一緒に集まってやらないかっていう声をかけたところ、ちょっとおもしろそうだからやってみたいという感じで生徒が集まってきてくれたんです」

ゼミ学習では平和学習やヘイトスピーチ問題など、現代社会の重いテーマにも取り組んできました。そして、2年連続で取り上げているのが「甲山事件」です。

甲山事件は、1974年、兵庫県西宮市の知的障害児施設・甲山学園で園児2人が死亡し、当時22歳の保育士として当直をしていた山田悦子さんが殺人容疑で逮捕された事件です。山田さんは釈放され4年後に再逮捕。そして事件発生から25年が経過した1999年に大阪高裁で3度目の無罪判決となり、山田さんの無罪が確定した冤罪事件です。この事件では警察の強引な取り調べや、犯罪報道のあり方などが問題となりました。

生徒が発した「社会に石を投げる」という言葉の重み

宮田さんは甲山事件をゼミで取り上げた理由について語りました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「私自身も山田さんに出会う前、甲山事件のことを正直知らなかったです。でも山田さんとの出会いで非常に衝撃を受けました。冤罪事件が持っている社会の一つ、闇の深さを感じました。一方で甲山事件の中で山田さんが得られてきた思想の深さに感銘を受けたというのがありまして。自分自身も驚きと感動がそこにあって、それを生徒たちにも味わってもらいたいなっていう、そこが出発点ですね」

山田さんの手記を読んだ生徒の反応について、宮田さんは印象的なエピソードを紹介してくれました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「山田さんは『社会に向かって石を投げている』っていうふうに、生徒の一人が表現したんです。個人に向かって石を投げたらだめじゃないですか。でも社会に向かって石を投げるって本当はやっていかなきゃいけないことなんじゃないかって思います。私自身もその生徒の言葉にすごく気づかされましたし、生徒たちも自分たちの気づきや感想をシェアする中で、だんだん考えが深まっていく、そういうことがありました」

宮田さんは、ゼミ学習に実際の関係者を招くことにこだわっているそうです。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「やっぱり生徒に本物に出会ってほしいっていう気持ちはあります。皆さん思いを持っておられるわけじゃないですか。その思いが伝わる、本物のゲストとの出会いは大きいなというふうに思ってます」

通信制ならではの“人にやさしい雰囲気”

宮田さんは、通信制高校ならではの“やさしい雰囲気”が育っていると実感しています。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「全日制の学校と比べると、いわゆるクラスっていう概念がないです。大学の授業に近い、いろんな人が授業に出席してるという形で、その日初めましての生徒たちも多いです。本当に多様な背景を持って、目的を持ってその学びに来てる生徒たちが多いので、いろんな授業を共感的に受け止めてくれる子が多いなと感じます。そこが優しい雰囲気につながってるのかなと思います」

5月31日に岡山で開催・国際人権の講演会を企画

宮田さんは来月、人権をテーマにした講演会も企画しています。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「5月31日の午後5時から奉還町のトンカンオカヤマで、『武器としての国際人権』という講演会を開催します。イギリスのエセックス大学のフェローをされている国際人権の専門家・藤田早苗さんの講演会を仲間と一緒に企画をしています」

「人権についての学び」のハードルを下げたい。宮田さんが講演会を企画した理由です。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「人権について学ぶとなると、どうしても構えてしまって限られた人しか行かないっていうようなことになりがちなのかなと思うんです。私が今教えてるその中高生も含めて、若い人たちといろんな世代の人たちが一緒に学べる講演会にしたいです」

通信制に勤務して知った教育の可能性 社会対立を乗り越える力を育んで

最後に、宮田さんに通信制高校とは社会にとってどういう存在か、またあるべきか、問いかけてみました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「私も通信制に勤務するようになるまで、通信制のことを本当に知らなかった人間の一人です。今は、これからの学校の形だったり、教育の可能性っていうのをすごく考えさせてくれる場かなというふうに思ってます。生徒たちもいろんな経験をしてどんどん成長している姿を間近で見ることができています。時間をかけることがとても難しい時代だと思いますが、生徒たちとゆっくり育んでいくことができるっていうのが通信制高校の魅力であり、勤務していてうれしい時間だなと思ってます」

そして宮田さんは、若い人たちへのこんなメッセージで番組出演を締めくくりました。

(岡山操山高校通信制課程教諭 宮田拓さん)
「いろんなとこで社会対立はありますけど、若い人たちがその間に入って議論していくことで、未来を考えることができるなというふうに思ってます。今、少子化で若者が少ないって言われていますが、やはり未来は若者が中心になっていくわけですから。そういう人たちの存在が社会を変えていくんだっていう思いを持って、生きていってほしい」