「彼って…私のこと、どう思っているんだろう」

連絡は取り合うし、ときにはデートだってする。

自分が、相手にとっての特別な存在だと感じることさえあるのに、“付き合おう”のひと言が出てこないのはどうして?

これは、片想い中の女性にとっては、少し残酷な物語。

イマイチ煮え切らない男性の実態を、暴いていこう。

▶前回:社内の年下イケメンに恋した、美人秘書。自己肯定感がだだ下がりになった理由とは…


3週間に1回、定期的に送られてくるLINEの意味って…?(和紗・31歳の場合)


『もうダメだと思っていた彼から、1ヶ月ぶりに連絡がきましたっ!嬉しい…』

― 本当にっ!?しかも、似たような書き込みがたくさんある…!聴いてみようかな。

ここ最近の私は、お風呂上がりにYouTubeを開き、“連絡くる 音楽”を検索するのが日課になっている。

そして、次から次へとでてくる関連動画のなかから、評価が高いものを再生するのだ。

この日、選んだのは528Hzのソルフェジオ周波数が使われた音楽だ。なんでも、引き寄せに効果があるらしい。

穏やかなメロディに合わせて、ハートや天使、鳩が飛び交っている映像を眺めながら、健斗との最後のやり取りを思いだす。

健斗:予定がわかったら、また連絡するよ!
和紗:うん、待ってるね!
和紗:(猫がウキウキした姿のスタンプ)

彼とは、3回目のデートのあと、こんなやり取りをした。

だが、それから3週間連絡がない。

― はぁ。すっかり連絡がこなくなっちゃった。脈なし確定…だよね。もういい加減、これ系の音楽に頼るのもやめなくちゃ。

しかし、いざ気持ちを切り替えようとすると、何の前触れもなく連絡がきたりするものだ。

健斗:お疲れさま!

…連絡が途絶えたのに、しばらくしてから何もなかったかのようにLINEを送ってくる男性は、いったい何を考えているのだろう?


出版社に勤める健斗と出会ったのは、今から2年前。

健斗:和紗さん!先週公開した記事が、ニュースサイトに取り上げられて、PV数がすごいことになってますよ!
和紗:本当ですか?嬉しいです!

当時、彼は女性向けウェブ媒体の副編集長をしていて、私はそこに寄稿するフリーライターという関係性だった。

健斗:じゃあ、次はこのネタなんてどうですか?ヌン活、和紗さんの得意分野かと!
和紗:ホテルのアフタヌーンティー特集ですね?ぜひ!

― 彼って、同い年なのに、仕事ができる人って感じ。メールの返信はいつも早いし、集めるネタも面白いものばかりだし!

私は、健斗のことを尊敬していた。仕事上の付き合いも、良好だった。

ところが、1年ほどたったころ。

彼がほかの媒体の担当になったのをきっかけに、2人の関係にも、変化が起きたのだ。




「和紗さん、お久しぶりです!」

出版社の応接スペースで、担当編集者とタイアップ記事の打ち合わせを終えたとき。すぐそばを、健斗が通りがかった。

「あ、ご無沙汰しています!」
「なんか和紗さんの声が聞こえるなーと思って!えっと、急なんですけど、今夜お時間あったりしますか?」
「今日ですか?そうですね、19時ごろなら大丈夫ですけど…」

半年ぶりに顔を合わせた彼の、人当たりのよさと、ほんの少し強引なところにふと懐かしさを覚える。突然の誘いをOKしてしまったのは、そのせいだ。

その日の夜。

健斗に指定されたのは、神楽坂駅徒歩10分の場所にある『セクレト』。

赤いランプが灯る妖艶な雰囲気の店内に足を踏み入れる。彼は、先に到着していた。シェフと顔見知りのようで、楽しそうに談笑している。

「このレストラン、前に取材させてもらったんだ。とにかく料理がすごいんだよ!」

シェフが、液体窒素で凍らせたフォアグラのテリーヌを、フレンチトーストにかける。そのエンターテインメント性に、好奇心旺盛な健斗は心をくすぐられたらしい。

「“劇場型”って、まさにだよね!ほかの料理も感動的だったなぁ」
「本当ですね!楽しかったです。今日は、ごちそうさまでした」

店を出ても興奮さめやらぬ様子の彼は、まだ目をキラキラさせている。

― またこうやって、2人で会いたいな。

私は健斗に淡い好意を抱くようになったのだった。




2回目のデートは、その1ヶ月後。

健斗の方から誘ってくれて、中目黒の隠れ家和食レストランに行った。そのとき健斗は、今話題の舞台のチケットをくれた。そして、とんとん拍子に3回目のデートの日取りが決定。

さっそく数日後、2人で舞台を楽しんだ。

解散すると、彼の方からすぐに連絡が来る。

健斗:今日は、付き合ってくれてありがとう!
和紗:舞台って初めて見たけど、迫力があって感動しちゃった!こちらこそ、ありがとう。今度は、夏祭りとか行ってみたいな!

いい感じで距離が縮まってきている、といったところだろう。

健斗:予定がわかったら、また連絡するよ!
和紗:うん、待ってるね!
和紗:(猫がウキウキした姿のスタンプ)

だがしかし、このあと彼から返事がくることはなかった。

― 健斗くん、途中で何回も携帯が鳴ってたし、仕事で忙しいのかも。

もともと不定期にやり取りをするような仲だったのだから、仕方ない。そう言い聞かせることで、1週間は余裕で連絡を待てた。

けれど、2週間も経つころには、次第にソワソワしはじめて友人に相談。順調にデートを重ねていただけに、この状況に気が急いてしまったのだ。

「気になる相手から、2週間も連絡がないって…、どういうことだと思う?」
「微妙だねー!もう少し待っても連絡がこなかったら、和紗からLINEしてみたら?」

言われるがまま待ってみるが、3週間近く経っても音沙汰はない。

YouTubeで見つけた“引き寄せ系”の音楽に運を託して、ひたすらに連絡を待つ。

そのときふと、以前取材をした恋愛心理学者が、“付き合う前に、1ヶ月連絡がこなくなったら自然消滅!”と言っていたことを思い出した。

― どうしよう、そろそろ連絡してみる?

スマホを手に取り、健斗とのやり取りを読み返す。

そのとき、なんと1通のLINEが届いたのだった。


健斗:お疲れさま!

― えっ、どういう意味…?今さら、お疲れさまって。

連絡が途絶えていたことへの言い訳も謝罪もなく、軽い感じで送られてきたLINEに首をひねっていると、続けてもう1通。

健斗:今週末、空いてる?夏祭りのイベントがあるんだけど、一緒にどうかな?

イベントへの誘いに、フェードアウトされてしまったものだと落ち込んでいた気持ちが、一気に浮上。

そして、健斗に連れられてデジタルアートのイベントに行くことになった。

プロジェクションマッピングで花火が打ち上げられるさまが見事で、2人そろって圧倒される。




和紗:キレイだったね!本物の花火も見に行きたいなー。

しかし、デートは好感触だったわりに返事はなし。次に健斗から連絡がきたのは、またしてもきっかり3週間後だった。

― 仕事のやり取りだと、すぐに返事がきてたのに…。なんか、あと回しにされてる感じがするんだよね。

思うように関係が進展しないことにいよいよ違和感を覚えたのは、この4回目のデートのあと。健斗からの連絡に喜んだり、落ち込んだり、感情の振り幅の大きさにも疲れを感じてきた。

もはや、彼からの連絡を心待ちにしているのか、それとも意地になって執着しているのかわからない。

それで、LINEでこう切り出してみた。

和紗:健斗くん、今いい感じの人とかいるの?
健斗:んー、いないかな!今はいろいろと忙しいし、なかなかね。

― う、嘘っぽい…。でも、まぁ…わかったわ。

取りあえず、自分が彼にとってのいい感じの相手ではないことと、これから進展する可能性が低いことはよくわかった。

ただ、この中途半端に残った気持ちをどこへ持っていけばいいのかは、まだわからないでいる。


いろいろな女性にモテていたいから(健斗・31歳の場合)


和紗:キレイだったね!本物の花火も見に行きたいなー。

夏祭りのイベントに一緒に行った和紗から、別れた直後にLINEが送られてきた。

そのメッセージを見て、僕はデートプランを思いつく。

健斗:花火が見られる屋形船って、どう?

…今、僕がLINEを返した相手は和紗ではない。その前にメッセージをくれていた、美穂だ。

言っておくがこれは誤爆ではない。

“美穂と屋形船でビールを飲みながら花火を見たい”と思ったのだ。

近頃、2人で会うようになったライターの和紗は、正統派の美人。感性が豊かなところがあるから、彼女にはイベントごとに付き合ってもらうことが多い。

一方の美穂は、しっとりとした大人っぽさが魅力で、お酒にも強い。夜の食事相手には最高だ。ほかにも、アウトドアが好きな梓とは、屋外でのレジャーを楽しんでいる。

つまり、行きたい場所や、やりたいことによって、この3人の女性のなかからピタッとハマる誰かを誘っているのだ。

僕としては、彼女たちが楽しむ姿を見るのが単純に好きなだけ…。あと、独身で彼女もいない今、いろいろな女性からモテたいという願望がないと言ったら嘘になる。

ちなみに、来週は美穂と夕食。その次の週末には、梓とバーベキューの約束をしている。その一方で、和紗はというと…。

― 和紗ちゃんって、いい子なんだけど…ついあと回しになっちゃうんだよなぁ。

“この日”とか、“ここに”とかいう主張がないフワッとした感じのアプローチをされると、ほかの女性たちに埋もれてしまう。

連絡が3週間後になってしまうのは、いつも、ほかの女性たちと会ったあとにふと思い出すからだ。

和紗:健斗くん、今いい感じの人とかいるの?
健斗:んー、いないかな!今はいろいろと忙しいし、なかなかね。

このあいだ、彼女から重めのLINEが送られてきた。

しかし嘘はついていないから、後ろめたさはこれっぽっちもないのだ。

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私から誘えばデートはしてくれる…でも、彼から誘ってきてくれないのはどうして?