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これは国税庁の『統計年報』から推計する、日本で年収が1億を超える人の割合だ。

彼ら“ミリオネア”に出会える可能性はかなりレアだが、その男たちを射止めた女たちは実際に存在する。

それは一体どんな人物なのか?その生態を探ってみよう。

▶前回:「2人目がデキるまでは、男女でいれたけど…」年収“億”夫を持つ36歳の妻が抱える、夫婦生活の悩み




【アプリでミリオネアを射止めた女】
名前:絵里奈
年齢:28歳
職業:フリーのヨガ講師
夫の職業:投資家
夫の年収:1億円


同調圧力の中で満足に生きていた女の転機


「結婚、おめでとう!」

祝福の言葉とともにカチンと鳴ったシャンパングラスの音を、絵里奈は心地よく聞いていた。

昨日は、前職場の同期たちが『CE LA VI Tokyo』で結婚祝いをしてくれた。新卒から入社した大手銀行の同僚たちだ。

絵里奈以外の同期3人は皆すでに社内結婚しており、絵里奈が最後。

絵里奈もいまの夫と出会う前は、同期の男と社内恋愛をしていた。だが、もうすぐ結婚か、と周りから言われている矢先、彼の浮気が発覚。すぐに別れた。

それまで絵里奈は、自分と似た境遇の人としか恋愛をしたことがなかったし、それが幸せだと思っていた。

絵里奈は、きわめて平凡なサラリーマン家庭出身だ。メーカー勤務の父にパート勤めの母、3人兄弟で姉と弟がいる。

普通に大学に行き就職し、結婚するまでは実家住まいで年収は450万ほど。

特別に贅沢した記憶もないが、かといって生活に困ったこともない。

だがその価値観は、元彼に浮気をされ、投資家であるいまの夫・浩介に出会ったことでガラリと変わったのだ。

浩介と出会ってから、絵里奈は彼に猛烈な好意を抱き、約1年で結婚まで進んだ。

接点などないはずの2人の出会いは、アプリだった。


世の中の95%の幸せは、お金で買える。買えないものとは・・・?


絵里奈はそれまで、身近にいる人としか付き合ったことがなかった。

人間関係は同じ学校内やサークル内が全てで、自分が所属するコミュニティ外の人との関係を築くなんて、想像もできない人生だった。

だが同期の彼にフラれて、人生で初めて外に目を向けたくなったのだ。

そのタイミングで、姉がアプリで出会った人と付き合っていると知った。

姉の彼氏は素敵な人で、アプリでの出会いを勧めてくれた。

「職業とかで検索も出来るから」

そう言い姉は、サクッと絵里奈のiPhoneでアプリをダウンロード。

―こうなったら、恋愛のリハビリと割り切ってやってみよう。

女は上書き保存、だ。

幸せそうな姉を見て、落ち込んでいる場合ではないと感じたのだ。

―職業は、投資家とか経営者。今まで出会ってこなかった人にしよう。

年収も、元彼は生涯届かないであろう、“5,000万〜”に設定してみた。

すると想像以上に短期間で、面白いくらい多くの男性とマッチングすることができた。

小顔で前髪があるヘアスタイルがハマる、王道の“可愛い系”である絵里奈は、非常によくモテたのだ。

そして初めてマッチングし、会う約束をしたのが投資家の浩介だった。


お金で買える幸せを感じる次元を過ぎた人


浩介とやりとりを始めてから1週間後には、会う約束をしていた。

彼はとりあえず“一度会いたい”タイプだったのでそれに合わせることにしたが、少なからず心配はあった。

―変な人だったら、どうしよう…。

だがそんな心配は杞憂だった。約束のカフェに現れた浩介に、一目で釘付けになってしまったのをいまでもよく覚えている。




浩介の顔はサクラではないかと疑ってしまうほど、まるでアイドルのような顔立ちだったのだ。

それにファッションも垢ぬけていた。

ブランドのロゴがさり気なく入ったトレーナーに黒のスキニーで、背は高くないが脚の長さが引き立っている。また足元の白いスニーカーがとても綺麗で、デキる男という印象だった。

また話し始めると、彼は想像より良識のある男のようだった。

昔金融系の会社に勤めていたようで、仕事や人間関係の話で大いに盛り上がった。

こんな彼が、どうしてアプリをやっているのか疑問になった。聞くと彼はこう答えた。

「世の中の95%位はお金で買える幸せで、残りの買えないものに価値があったりするんだよね」

聞くところによると、彼は見た目だけよくて金のかかる女に疲れ、金で変わってしまった人間関係に疲れ、お金では買えない“家庭的な何か”を求めているようだった。


ミリオネア妻になるまで。結婚まで進めるための努力と、結婚後の葛藤とは・・・


求めているようなことをする以外、道はない


出会いから5度目のデートで結婚前提の交際を申し込まれ、付き合った。

付き合い始めると、食事に誘われて「どこに行きたい?」と聞かれても、絵里奈は肩ひじ張らない店を指定した。

もしラグジュアリーホテルのラウンジなどを指定するような女だったら、彼は拒絶していただろう。

実際、絵里奈はそうしたところは誕生日や記念日などでしか行ったことがなかったから、思いつくはずがなかった。

家でのデートでも、彼の求めることに対して自然に応えることができた。

東京湾が一望できるタワーマンションの一室で、絵里奈はその場に似つかわしくないような、ごくごくありきたりな和食を作る。

そして疲れて寝てしまった彼を起こすことなく、軽く部屋の掃除をして終電前に家を出た。

そんなことを繰り返していると、浩介から正式に結婚を申し込まれたのだ。

この瞬間、平凡な育ちの絵里奈は、彼の周りにいた煌びやかな女性に勝ったのだった。


愛より、利害。昔捨てた価値観が懐かしく思える


結婚後、絵里奈は好きなことをすればいい、と言われたので銀行を退職し、ヨガの講師として働いている。明らかに以前より肌艶がよく、生き生きしていると言われる。

一方、浩介は変わらず自宅でパソコンにかじりつき、ほぼ家にいる生活だ。

彼に対し不満がないと言えば嘘になるが、経済的な余裕は精神的な余裕に繋がるものだと、妻として心底感謝している。

だが絵里奈は、最近になってようやく分かったことがある。

夫は自分にこだわっていた訳ではなく、“至って普通の人間”を求めていたということだ。




ある日ソファでテレビを見ながら、思い切って聞いてみたことがある。

「ねぇ、あなたは何で私を選んでくれたの?」
「んー…。可愛いし、きちんとした女性だからだよ」

そのときは特に何も思わなかったのだが、いま思い返すと、可愛くて普通の感覚を持ち合わせている金のかからない女なら、誰でも良かったのでは、と思う時がある。

でも自分もそうだったのかもしれない。

経済的な安定を享受している絵里奈と、生活の安定を享受している浩介。

お互い利害が一致しているのだ。

…だがこの頃たまに感じる、凄まじい空虚感は何だろう。

アプリで出会い、お互いの利害が一致していることが早々に分かり、トントン拍子で結婚まで至った。

いまの生活にこれと言った不満はないが、彼に心底愛されている自信が特にない。

とにかく合理性を求める彼は、いままで出会ったことのない人種で、人間としての根本が違うように感じてしまうのだ。

そんなとき思い出すのが、自分が生まれ育った平凡な家庭。

働く父と母、兄妹たち。

あの家にはたしかに、愛と呼べるものがあったような気がする。

絵里奈は結婚して思い切って“外”に出たものの、もしかしたらそれが間違いだったのではないだろうかと、ふいに感じてしまうのだ。

だから朝を迎えると、なんともいえない寂しさに包まれる日がある。

そんな日は朝から、ベッドの隅に座りぼーっとしてしまうのだった。

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