悲願のW杯優勝を狙うイングランド代表。(C)Getty Images

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 先日、6月に開幕する北中米ワールドカップに臨むイングランド代表のメンバーが発表された。

 現在のイングランドには、世界屈指の才能を持つ選手たちが揃っている。そのため選考は極めて難しく、トーマス・トゥヘル監督は“贅沢な悩み”を抱えていたと言えるだろう。

 それでもドイツ人指揮官は情に流されることなく、極めて冷静な判断を下した。実績や知名度に左右されず、たとえ名高い選手であっても、本来の力を発揮できていない場合は、躊躇なくリストから外した。現時点で最高のパフォーマンスを発揮できるメンバーを優先したのだ。

 そのなかで大きな話題となったのが、コール・パーマーの落選。チェルシー移籍後はチームの中心として躍動し、昨夏のクラブ・ワールドカップでは優勝に貢献。大会MVPにも選出された。しかし今シーズンは怪我の影響もあって精彩を欠き、代表では3月の日本戦で、失点に絡むプレーもあり、印象が悪かった。

 それでも、試合の流れを一変させる特別な才能を持つ選手であることに変わりはないだけに残念だ。
 
 また、フィル・フォーデンも同様だ。2023-24シーズンにはプレミアリーグ年間最優秀選手に輝いたが、その後は本来のパフォーマンスを見せられていない。マンチェスター・シティでは激しいポジション争いのなかで苦戦を強いられ、ここ2シーズンは持てる能力を十分に発揮できていなかった。

 そして、最近は代表から遠ざかっていたものの、トレント・アレクサンダー=アーノルドの選外も見逃せない。彼のディフェンスラインからの創造性溢れるパスやセットプレーでのキックは他のどの選手にもない武器だ。イングランドが苦戦する場面で必ず助けになったはずだ。

 一方で、サプライズ招集となったのがサウジアラビアのアル・アハリでプレーするアイバン・トニーだ。エースのハリー・ケインにアクシデントが起きた場合、あるいは試合の流れを変えたい場面に、彼のフィジカルと空中戦の強さは異なる選択肢をもたらしてくれる。さらにPKの名手でもあり、ノックアウトステージでは非常に貴重な存在となるだろう。

 トゥヘル監督は以前からチームの調和や規律を重視する指導者として知られている。今回の選考でも、個々の能力だけでなく、グループ全体のバランスが大きな判断材料になったはずだ。

 現在のイングランドが抱える問題は「誰を選ぶか」ではなく、「誰を外すか」にある。その豊富な才能をひとつの方向へまとめ上げることは容易ではない。それでも名将がイングランドを悲願のW杯優勝に導いてくれることを信じている。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。

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