高輪ゲートウェイシティだけじゃない「危険な階段」 見えない段差、錯覚起こすデザイン…なぜ完成するまで気づかない?「設計者の危険予測能力の欠如」識者が指摘

高輪ゲートウェイシティにある大階段で転落事故が起きるなど、デザインに潜む危険性が指摘されている。
ニュース番組『わたしとニュース』では、身近に潜む危険なデザインについて、お笑いコンビ・たんぽぽの白鳥久美子とともに考えた。
■「階段なのかベンチなのか」わかりづらい境界線
転落事故が報告されている高輪ゲートウェイシティの階段は、一見普通の階段だが、よく見ると両脇のみが階段で、真ん中の部分はベンチになっている。このベンチの高さは階段3段分で、階段なのかベンチなのかの境目がわかりづらくなっている。
施設を管理するJR東日本によると、昨年3月の運用開始以降、転倒してけがをした事例が2例あるという。先月、階段とベンチの境目にチェーンをつける安全対策を行い、対策後は転倒した人は確認されていない。
今回の事故について、建物のデザインと安全性に関する研究を行っている大阪工業大学の吉村英祐客員教授は、「ベンチと階段が同じ段になっていると誤認識してしまう。実際は3段分の段差があることで勘違いして落下してしまったのではないか」と指摘する。
また、見下ろした時に「水平部分(進行方向に測った幅)が広く見えるため、上から見ると緩い階段と誤認識してしまう」「板張りの部分が重なり連続しているように見えるため、弱視(ロービジョン)の方には段差がなく水平の床が先まで続いていたり、スロープに見えたりすることがあり非常に危険」と分析する。
現場にはチェーンによる対策が取られているが、JR東日本によると設計や工事を進める中では危険性についての指摘はなかったという。
吉村氏は「今回の転倒事故はやがてより重大な事故が発生する予兆と捉えるべき。チェーンで区切るのはあくまでも応急措置。原因を正しく分析し、できるだけ早急に、たとえ当初のデザインが損なわれてでも抜本的な改修をし、重大事故発生の芽を摘む必要がある」との見方を示した。
これを受け、白鳥は次のようにコメントした。
「本当にその通りですよね。例えばお年寄りの方では、ちょっと踏み外しただけで骨折にもつながるじゃないですか。そして、この広いスペースを使えなくなってしまっているのも、結局もったいないですよね」(白鳥)
■錯覚を招くデザインの数々…配慮不足と見た目重視の弊害
今回のようにデザインによって危険になる可能性がある事案は他にもあるという。おしゃれなデザインではあるものの、段差・幅・奥行きすべてがバラバラな階段、タイルの模様で段差がわかりづらいような階段もある。多くは、下から見たときには段差がわかるが、真上から降りようとした時には混乱してしまうようなデザインになっている。
なぜ作るときに危険に気づかないのだろうか。吉村氏は「設計者の危険予測能力の欠如。人間工学に基づく基礎知識(人体寸法・認知能力・視野など)や、それに個人差があることを十分に理解していない。子ども、高齢者、障害者等への配慮不足」と指摘。さらに、「見た目の美しさに集中し、使いやすさや安全性への配慮が著しく欠けている」「組織内のチェック。不十分なデザインレビュー、日常安全に関する知識の不足」などを指摘。
この見解を受けて白鳥は「建築物には、見ているだけで『わ、素敵』と思うものもある。有名な建物もたくさんあり、建築家の方も名を馳せたい、みたいな気持ちもあるのかな」と語った。
建物のデザインによるリスクを回避するため、国交省の関連機関は「建物事故予防ナレッジベース」を公開している。ここには様々な事故の事例や対策等が、専門家の分析とともに掲載されている。
例えば、階段の一番下の段に床と同じ模様のタイルを使ったため利用者が踏み外してしまった事例、立ち上がると頭をぶつけるベンチ、そして、白い壁に白い消火器を置いたケース、などがあげられている。白い消火器のケースは全体として色の統一感を出すことを意図したものかもしれないが、緊急時に存在がわかりづらいという、消火器本来の目的にそぐわない状態がデザインによって生み出されてしまっている。
これらの事例を受けて白鳥は「一番は安全で、いろいろな方が使うことを考えれば、やっぱり優しさをメインに作ってほしいですよね。(見た目の)デザインは、その次で大丈夫なので」と語った。
(『わたしとニュース』より)
