駅でぶつかりおじさんに遭遇! 泣きそうだった私が「思わず吹き出した」通行人の神対応とは
人混みの中で突然ぶつかられ、心ない言葉まで浴びせられる……そんな事故のような出来事に遭ってしまった時に、思わぬ優しさに出会ったという女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆ぶつかりおじさんと遭遇。さらに怒鳴られて
ある朝、佐々木綾香さん(仮名・29歳/会社員)は通勤のため、人の流れが交差する駅のコンコース内を歩いていました。
綾香さんが思わず「すみません」と頭を下げると、男はさらに顔をしかめたそう。
「そしたら『すみませんじゃねぇよ! 最近の若い女はろくに人のこと見えてねぇんだよな』と、わざと私の肩を押し返し、舌打ちをして去っていったんですよね」
一瞬空気がピリッと張り詰め、周囲の人たちは気まずそうに目を逸らしました。
「あれが噂に聞く“ぶつかりおじさん”なんだろうなと、私は呆然と立ち尽くしたまま思いました」
静かに歩き出した綾香さんは、恥ずかしさと悔しさで胸が締めつけられ「勝手にぶつかってきたのはあっちなのに、何であんな言い方されなきゃいけないの?」と泣きそうになるのをこらえ、足早に改札へ向かったそう。
◆女性に声をかけられ、衝撃の事実が……
するとエスカレーターの手前で、ひとりの女性が声をかけてきました。
「『大丈夫ですか? さっきの人、ほんと最悪ですよね』驚いて顔を上げると、年の近そうな女性が優しく微笑んでいたんですよ」
さらにその女性は「実は私も前にあの人にやられたことがあるんです。わざとぶつかってくる常連で、しかも華奢な女性ばかりを狙っているんですよ」と続けたそう。
「警備員さんにも何度か注意されているみたいですけど、時間帯を変えて現れるみたいで。あのおじさんの顔、覚えていますか? 今後見かけらなるべく避けた方がいいですよ」と、アドバイスをしてくれました。
「ですが私は怖くてあんまりはっきりとおじさんの顔は見られずうろ覚えだったので『なんとなく、ぼんやりとは……』と曖昧な返事しかできなくて」
すると女性は何かを思いついたように、バッグからメモ帳とペンを取り出し、さらさらと何かを描き始めたそう。手の動きに全く迷いなく、スッとした線があっという間に形になっていきました。
◆思わず吹き出した!
「女性が『こんな感じなんですけど……思い出せそうですか?』とメモ帳を差し出してきて、そこには眉を吊り上げ、口をへの字に曲げた中年男性の絵が描いてあって、それがぶつかりおじさんそっくりだったんですよ! 似顔絵を見た瞬間に私の記憶がパッと甦ったんです」
しかも、右上には小さく「最悪おやじ」と書き添えられていて……。
「私は思わず吹き出してしまい『すっごく似てます! しかもその文字が最高です! なんかスッキリしました』と笑っていたら、その女性も『よかった。私、美大だったんですよ。口頭で説明するよりこの方が伝わりやすいかな? と思ってつい描いちゃいました』とはにかんだように笑いながらそのメモをくれたんですよ」
そうして2人は軽く会釈し「じゃあ、お互いに気をつけましょう」と別々の方向に歩き出したそう。
◆重たい気持ちが一気に晴れやかに
「私は破ったメモに描いてある似顔絵を見つめながら、とても癒やされている自分に気がつきました。たった数分前まで、重く沈んでいた気持ちがウソみたいに軽くなっていて……あの女性には本当に感謝しかないですね」
時に理不尽な目に遭い傷つけられることはあっても、同じ数だけ優しい人に救われているのかもしれないと綾香さんは思いました。
「それ以来、人混みを歩く時は考え事などせず周りに意識を集中して歩くようになりました。そして、あの時のメモをお守りのようにお財布に入れて持ち歩き、たまに見ては癒やされているんですよね」と微笑む綾香さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

