ミラノ・コルティナ五輪閉幕!日本勢の大大大活躍に加え、形式も文化も新たなスタンダードを生み出した転換点となる大会だった件。
ありがとうミラノ・コルティナ五輪!

17日間の熱い冬、ミラノ・コルティナ五輪の幕が下りました。五輪ともなればすべてが穏やかとはいかないのが世の現実ではありつつも、大きな事故、大きな問題などなく閉幕まで楽しく進んでこれたことを嬉しく思います。このあとにつづくパラリンピックも楽しくつつがなく進むことを祈ろうと思います。

今大会は初の広域開催となりましたが、現地はさておきテレビで見ているぶんにはひとつの都市での開催でないことは何の問題も違和感もなく、むしろこれまでは「札幌でやってますが東京五輪なので…」というどこかぎこちない感じであった各地域が、これは自分たちの五輪なんだと感じながらの運営となっているようで、新しいスタンダードになる大会だったなと思います。今までがウソをつき過ぎていた、が正しいかもしれませんが。

そんななか日本勢は大大大活躍でした。歴史上で獲得した総数の4分の1にも相当する多くのメダルを獲得。金メダル個数順で言えば10位とかになりますが、純粋なメダル獲得個数で言えば全体5位に相当する活躍ぶりで、毎日がお祭り騒ぎのような日々でした。スピードスケートで入賞なるかどうかくらいの滑りに少し無理のあるメダルの期待を寄せて、解説者の「いいですよー」の声に嘘でもつかれたような気持ちになるのが常であった冬の五輪はもう遠い過去です。

たくさんの喜びと讃え合う美しさを届けてくれたスノーボード、ときに悲壮感と向き合いながらあたたかい喜びを届けてくれたフィギュアスケート、木美帆さんという巨星が自分をさらけ出しながら燃えたスピードスケート、理不尽に打ち勝ったりまた敗れたりして悲喜こもごもだったスキージャンプ、次はあなたがキングをつとめるのだと早くも4年後への気持ちを高めてくれたフリースタイルスキー、今大会もたくさんの名場面を見守ることができました。

時間帯も深く、気力体力も年々衰えるなかで元気に楽しく大会期間をまっというできるだろうかと不安を覚えながらの開幕でしたが、選手たちが毎日届けてくれる元気と勇気を補充しながら駆け抜けることができました。ひとつだけの人生を燃やして灯した眩しい光、見させていただいてありがとうございます。また4年後へ向けて、お互いにひとつだけの人生を燃やしていきましょう。実り多い日々になることを祈ります。

↓競技のフィナーレを飾る男子アイスホッケー決勝は、アメリカが46年ぶりの金!大熱狂!

フィギュアスケート Life Extra ミラノ・コルティナ五輪2026



そして迎えた閉会式。何と今回の会場は、「ロミオとジュリエット」の舞台でもあるベローナの市街にある、古代ローマ時代の円形闘技場なのだとか。世界遺産でやる壮大な閉会式、うーむこれは東京も古墳とかでやってやったほうがよかったかもしれません。「円形闘技場で人間が競い合う姿を見たい」という人間の想いはずっと変わらない、ずっと人間ってそんなもの、そんな時の河を見るような気持ちです。



青白い光の柱があがる円形闘技場。屋根はまったくありませんが、天候にも恵まれたのは幸いでした。「Beauty in Action(躍動する美しさ)」をテーマにした閉会式は、オペラ「椿姫」の開演準備を模して始まります。映像ではイタリアの著名人が次々に登場して、それぞれの準備をする様子が描かれていきます。やがてその輪はオペラ「リゴレット」「アイーダ」「蝶々夫人」「セビリアの理髪師」に広がり、セビリアの理髪師が椿姫のヴィオレッタの装いを整える…夢のような光景が広がります。やがて円形闘技場で実際に始まるオペラ。各オペラの主人公が集い、火柱が上がると、「雨だったらどうしたんだろう?」と気になってきますが、そこは気合でいくんですかね。



オペラの主人公が闘技場の外に繰り出すと、そこにはこの出来事の本当の主人公である各国選手団の旗手たちが。選手たちもオペラの登場人物かのように世界に入り込み、行進していきます。闘技場内ではイタリアのさまざまな人々の表情を映しつつ、舞が披露され、主人公たちの入場を待ちます。各開催地域の人々が携えるイタリア国旗の入場。イタリアのメダリストたちの登場。イタリア国歌の斉唱。リレハンメル五輪クロスカントリーリレーチームが運ぶ聖火の到着。そして各国・地域の旗手の入場へ。

日本からはスピードスケートの森重航さんとフィギュアスケートの坂本花織さんが旗手をつとめます。ふたりでひと棹の国旗を持ち、何故か大笑いしながら振り回しています。開会式で旗手をつとめた森重さんも、団体戦からエキシビションまで活躍がつづいた坂本さんも、長い大会期間中本当に頑張ってくれました。楽しんでもらえているといいなと思います。旗手の入場後は、各選手団が一斉に入場してきました。閉会式は国・地域の隔てなく一斉になだれ込むのが恒例ですが、今回は集合場所から移動してきた流れなのか、何となく各選手団が固まって入場してきている感じも。日本選手団も何となく一団となって入ってきました。日本選手団で最大のバズを記録したりくりゅうペアは、三浦さんをリフトして高いところから記念撮影する大技も披露。フィギュアスケート各国ペア勢は便利な脚立を活用しているようです。

↓いつも楽しそうで素敵です!


↓今回も日本選手団はイタリア国旗を手にして入場!


↓りくりゅうペアはこの先1年間くらいリフトを持ち芸としてやらされてそうな予感!


何やらお土産などを受け取った選手団がスタンドに着席すると、大会の模様を集めた映像上映を挟んで再びステージイベントの時間に。クラシックバレエと現代的なダンスとが競演し、調和していく様子を、五輪での競技の様子になぞらえているようです。鏡張りのボックスやキラキラと光る山のオブジェは今大会の雪と氷を象徴するものでしょうか。幕間の映像ではメダリストたちの栄光の瞬間も映し出され、日本からもりくりゅうペアや木村葵来さん、堀島行真さんの姿が採用されていました。りくりゅうペアは日本だけでなくイタリア運営側からもとても感動的な名場面として認知されているようですね。幕間映像にレギュラー出演する勢いです。

その後は、クロスカントリー女子50キロクラシカルの表彰式、クロスカントリー男子50キロクラシカルの表彰式が行なわれ、今大会最大のスターのひとりでもあるノルウェーのクレボさんが大会を象徴するかのように登場。表彰台の中央で6個目の金メダルを受け取りました。ゾルジ坂をバカっ速で登ってみせたあのクレボステップは、世界にクロスカントリースキーへの興味を大いに広げたことでしょう。雪がない地域の子どもたちも真似するのかもしれませんね。

↓ピンバッジ集めてる人みたいな感じで金メダルをお持ち帰りです!


大会ボランティアの皆さんを讃えるイベント、新たにアスリート委員会メンバーに選出された委員たちの紹介、蝶々夫人をもとにしたステージイベント、「水」をテーマに踊るダンサーに囲まれての名曲「Il mondo」の歌唱、世界的バレエダンサーであるロベルト・ボッレさんの舞とつづくステージ。オリンピック賛歌の斉唱を経て、その後はいよいよ次回の開催地フランスのアルプス地方への引継ぎの儀式へと移っていきます。ミラノ・コルティナの各市長から返還されたオリンピック旗は、次の開催地フランス・アルプス地域へ。日本が強く望めばここに立っているのは札幌の関係者だったはずですが、強く望むほどではない民意でしたので、オリンピック・パラリンピックのためにも意欲あるフランスにお願いするのがよいでしょう。ぜひまた素晴らしい大会を作っていただきたいものです。





いよいよクライマックスを迎える閉会式。大会組織委員会ジョバンニ・マラゴさんのスピーチでは、大会の成功を誇りつつ各方面への感謝を述べ、このあとのパラリンピックへの決意を語りました。コベントリーIOC会長のスピーチでは大会運営の労をねぎらいつつ、「魔法のような大会をありがとうございました、イタリア」と讃えました。そして大会で生まれた歓喜の映像たちとともに、火が落とされていく聖火。その一部には喜び過ぎて転倒したフィギュアスケート団体戦での三浦璃来さんの姿も。もはやこれは大会を通じてのスターの一角となった、そんなことも言えるかもしれません。「りくりゅう」というよりは「Riku-Ryu」になったのかもしれませんね。同じ日本の者としても誇らしくなるような気持ちです。

その後は、祭りのあとを惜しむように盛大なダンスパーティーへ。選手たちもスタンドで立ち上がって身体を揺らし、宴はつづいていきました。選手たちの楽しむ姿は、見る者にとってもご褒美のような時間。たくさん楽しんで、また次の4年に向かってもらえればと思います。ミラノ・コルティナ五輪、ありがとうございました!

↓各地の聖火が消され、ミラノ・コルティナ五輪が閉幕しました!


↓美しくて爽やかな五輪でした!




さて、今大会はまた新しい潮流を感じるような大会でした。これまでもスケートボードやスノーボードなどのアーバンスポーツでよく見受けられた、勝者と敗者の区別なく挑戦する者への惜しみない称賛と、お互いへの敬意で満たされるような決着が、多くの競技で見受けられたように感じます。

インターネットやSNSの発展で、オールドメディアの国威発揚・勝つか負けるか的な紋切り型の報道の影響が低くなったり、かつては唯一無二の共同体であった国とか地域よりも大きな存在感で「界隈」的なものが心の大きな部分を占めるようになったことも影響しているのかなと思います。そこにいる選手や、そこにいる自分は、何国の何人ということ以上にともにその競技を愛する仲間・共同体であるという感覚。家族でやるトランプでことさらに勝ち誇ったり蹴落としたりしないのと同じで、今日は競い合いだとしても、日常のほとんどは仲間であり協力者として過ごしている者同士では、それが自然な姿なのかもしれません。

敗れた瞬間にまず勝者を讃える拍手を贈る姿。勝者が自分のこと以上にほかの人のメダルを喜ぶ姿。自分自身の報われなかった日々の痛みよりも、ほかの人の報われた日々への敬意と賛辞を笑顔で表明する姿。たくさんの人がそうした姿を讃え、その美しさを讃えていました。きっとこれからもっと、そうしたシーンは増えていくのでしょう。もしかしたら、それがひとつの規範となっていく未来もあるのかなと思います。

それが正しくて、望まれる未来なのかなと思いつつ、僕自身は少し息苦しくなる瞬間もありました。競技とは勝ち負けではなく自分への挑戦、ライバルとは敵ではなく自分を高めてくれる仲間、持論としても頭で考える理解としても僕もそう思っていますので、正しいし望ましいとは思うのですが、「とは言え」と思う人情もあるわけです。自分が勝ったあとなら他人を讃える余裕もあるかもしれませんが、自分が負けたあとでそれをできるほどの人間性はなかなか備わるものではないだろうと。本当は泣いて叫んで、壁でも蹴りながら道具やメダルを投げつけたいくらいの人だっているでしょう。よくない、よくないけれど、その人情は理解できる。けれど、なんだか、その人情すらも悪として否定されていきそうな、そんな気配を覚えるような瞬間もありました。

すべては民意が決めることなので、この先の未来の考え方はどうなっていくかわかりませんし、どうなったとしてもそれに合わせるほかないのですが、僕自身は海のような観衆でいたいなと思いました。仮に、僕に向かって悔しさと怒りと報われなさで大きな叫び声をあげられたとしても、そうだよな、と思って見ているような。メダルを投げつけられたとしても、大事にしな、とたしなめながらかけ直してあげるような。そんな心持ちでいたいなと思いました。なので、もし美しい世界のなかで息苦しさと報われなさを抱えたままの人がいるなら、海がいいんじゃないかなと思いました。海はバカヤローと叫んでも何も言い返してきませんし、SNSに引用リポストとかして点火してきたりもしませんし。まぁ、メダル投げつけたら返してくれないかもしれませんが。

そんな変わりゆく世界を見ていくのも、また楽しいことかなと思います。


すべてのアスリートに感謝!次はまたパラリンピックでお会いしましょう!