楽天モバイルが挑戦するのは世界初・日本発の5G世界 イノベーションで携帯業界を変える

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今春からの5G本格サービス開始に向け、いよいよカウントダウンのタイミングに入ってきた。

楽天モバイルは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに続き、今年6月から5Gの本格サービス開始を目指している。
2019年10月には「楽天・ジャパン・オープン・テニス・チャンピオンシップス2019」
2019年11月には「Inter BEE 2019」
これらの会場で5Gの実証実験も実施している。

5G(ファイブジー:5th Generation)とは、移動体通信における第5世代の通信システムのこと。
・高速かつ大容量
・低遅延
・多接続
これらの特徴により、通信環境やサービスが大きく変わると期待されている。

5Gは、実際に我々の生活をどのように変えていくのだろうか?
・5Gで目指す世界
・5G時代に向けた取り組み
これらを、本格サービス開始前の各社に迫ってみたい。

第4回は、楽天モバイルで事業戦略を担当する執行役員 事業戦略本部 本部長 佐藤祐介氏に、楽天モバイルにおける5Gサービスの戦略などについて聞いた。


■8K映像の伝送を実現
楽天モバイルが直近に実施した5Gネットワークを使った実証実験は、2019年11月に幕張メッセ(千葉・千葉市)で開催された「Inter BEE 2019」の会場において、NHKテクノロジーズ社と共同で実施した「8Kライブ映像のストリーミング配信」だ。

これは、NHKテクノロジーズ社の8Kクラウド配信システムを活用し、楽天モバイルの5Gネットワークで8Kライブ映像をストリーミング配信するというもの。クラウド映像配信サーバーへのアップロード、ダウンロード共に5G無線伝送を使用しており、専用回線などを使わず公衆インターネット回線を使用しているのが特徴だ。


執行役員 事業戦略本部 本部長 佐藤祐介氏

佐藤祐介氏
「本実証実験では、クラウド映像配信サーバーへのコンテンツのアップロードとダウンロード双方に5G無線伝送を使用しました。こういった事例は、我々が知る限りでは初めてだと思います。

代々木上原(東京・渋谷区)で撮影した映像を、Inter BEEの会場(幕張メッセ)に生中継のような形で送り、NHKテクノロジーズさまにご用意いただいたもの凄く大きなスクリーンに8K映像として流す、という実験をライブで実施しました。

放送業界の関係者の皆さまや、他キャリアの方々、特に技術者の方にたくさんお越しいただき、『本当にできているんですか?』『凄いですね』と。そこはライバルでありながら応援もしていただいていることを感じました。」

多くの来場者が集まり好評を博したため、1日4回のライブ配信の予定だったが、1日8回程度に増やして実施したという。

佐藤祐介氏
「テストとはいえ、8K映像をライブで配信することが実現できたというのは、放送業界にはもの凄く大きなインパクトだろうと思っています。

我々は映像のプロではないですが、やはり8Kの映像を大画面で見ると臨場感が全く違いますし、思わずインタラクティブなやり取りをしたくなるほど変わってきます。

将来的には、エンドツーエンドのネットワークスライシングもあわせた形で、サービス提供ができれば非常に画期的で面白いと考えています。」

概ね予定通りに進み、成功を収めた8K映像の伝送デモだが、一定のタイムラグの発生や、さらなる高速化が必要など、今後に向けた課題も見つかったという。

一方、これまで楽天モバイルが実施してきた5Gの実証実験は、今回の「Inter BEE 2019」や、10月の「楽天・ジャパン・オープン・テニス・チャンピオンシップス2019」、7月の「Rakuten Optimism 2019」といったイベント会場が中心だったが、今後は様々なパートナー企業と組んで、公共の場で体験できるサービスも検討しているという。


■後発がゆえに完全仮想化ネットワークを目指すことができた
通信システムの世代交代は、前世代の通信システムと併用しながら、次第に新システムに移行していく手法がとられることが一般的であることは、連載第1回目のNTTドコモ編でも触れた。

つまり、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクは、現行の第3.X世代や第4世代と併用しながら、次第に5Gシステムへと移行していく。20年以上かけて全国に構築してきた基地局や通信システムの基盤を所有する3社とは異なり、楽天モバイルは2014年から、いわゆる格安SIMといわれるMVNO(仮想移動体通信事業者)として通信事業を営んできた。

楽天モバイルの通信事業は、NTTドコモ、KDDI(au)の回線を借り受けるMVNOから、自前の設備を用意し、全国に展開するMNO(移動体通信事業者)に移行する。

MNOとしての楽天モバイルは、2019年10月から4G回線による限定的なサービスを開始した。元々5Gネットワークを見据えてMNOとして参入したのだが、5Gの本格サービス開始については、3社に続き、2020年6月の予定だ。

佐藤祐介氏
「我々としては、まずは4Gの計画に対して着実に達成していくことを目標にしています。

元々、5G商用サービスのスタートは2020年6月を予定していますので、他社さまは少し早いですが、当社としては着実に計画通りに進めようと考えています。」

第4の携帯キャリアとして注目されている楽天モバイルだが、MNO参入、5Gサービス開始ともにスケジュール的に3社からは後発となる。しかし、後発であるがゆえに実現できるメリットもあるという。

佐藤祐介氏
「後発のメリットという意味では、我々はネットワークを仮想化している点が、やはり一番の差別化になってくると思います。

特に、コアから無線ネットワークまでをクラウド化することによって、ネットワークスライシングのような5Gサービスにおいて求められる機能を、柔軟に、かつ早いタイミングで実現し、SA(Stand Alone)へのアップデートもソフトウェアベースで可能になります。

そこが大きな違いの1つであり、後発だから、既存の設備がなかったからこそできたメリットであると思っています。

楽天モバイルでは、『4Gのネットワークを作る』ことが目的ではなく、最初から5Gを見据えたネットワークアーキテクチャになっています。

もちろん他社さまも一部は仮想化を開始されていますが、楽天モバイルは最初からエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネットワークを構築しており、当初から5Gを見据えているということは、今この時期にゼロから立ち上げるメリットだったのかなと思っています。」

既存の設備を持たない楽天モバイルは、無線機一体型アンテナの先を仮想化する「完全仮想化クラウドネットワーク」を世界で初めて採用し、構築を進めている。

そもそもネットワークを仮想化することで、どのようなメリットが生まれるのだろうか。

佐藤祐介氏
「(仮想化ネットワークは)楽天モバイルが発明した訳ではないですが、各社が様々な移行を進めている中で、我々はこのタイミングで新規参入しゼロから構築したことが大きな特徴になっています。世界で初めて商用サービスで導入できるというのは、最大のメリットでもあると思います。

一般のお客様にとっては、クラウドネットワークの構造が何であれ、繋がることが当然であるということは重々承知しています。

しかし、新しい技術を採用し、効率的な設備投資や運用を実現することによって、少なくともリーズナブルな価格を提供できればと考えています。

クラウド化することによって、コストダウンができる点、また様々なサービスをシンプルで迅速に導入できる点が、お客様にとって大きなメリットになるでしょう。

また、店舗での契約にかかる待ち時間軽減など、お客様への新たな体験の提供も目指しています。」

全国にネットワークを構築するには、膨大な時間と費用がかかる。しかし、仮想化ネットワークの導入により、従来のネットワークに比べてコストダウンができるのであれば、既存キャリアよりも安価にサービスを提供することも可能になってくる。

また、楽天モバイルには既存の通信事業者とは異なる強みがある。
それは、通信事業以外の顧客基盤が既にあるということだ。

佐藤祐介氏
「今までの通信会社のモデルというのは、通信で売上や収益を上げるモデルだと思いますが、楽天は今まで携帯通信会社ではありませんでした。

Eコマースやフィンテックなど70以上のサービスと、それをベースにした顧客基盤を既に保有しています。通信以外のサービスと通信を紐付けて、お客様のストレスを最小限に抑え、色々なサービスを包括的に提供していきたいと思っています。」

既存の大手通信キャリアは、本業である通信事業を柱として、様々なサービスを展開し顧客を獲得してきた。しかし、楽天モバイルは、楽天の既存サービスと通信事業と連携させていくことで、相互の利便性を向上させる狙いもある。こうしたアプローチは、今までの通信事業者とは真逆の方向だ。

楽天における通信事業とは、楽天のサービスを飛躍的に発展させる可能性のあるトリガーでもあるのだ。

今までの通信キャリアのように、通信事業がグループ全体の本業という位置づけではない点が大きな特徴であり、注目されている点でもある。


■5Gによって新たに生まれる分野
5Gを見据えたMNO参入だが、楽天モバイルが5Gネットワークやサービスにおいて注目するポイントはどういった点なのだろうか?


佐藤祐介氏

佐藤祐介氏
「5Gになったからこそ、実現できる分野が生まれてくるのかなと。3つの要素(高速大容量・低遅延・多接続)においては、低遅延というよりも非常に高いレベルでのレスポンス、速いレスポンスが、実現可能だと思っています。

超高速も多接続もそうですが、今まで4Gや3Gでは実現できなかった分野やサービスが、生まれてくるでしょう。そうした点において5Gは社会が、今までとは変わっていくきっかけになるのかなと強く感じています。

我々としては、仮想化によって実現するモバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)の部分を活用して、クラウド上で様々なアプリケーションを連携させて多様なサービスを提供する、ということも想定しています。」


■大きな課題は仮想化できない基地局の設置
これまでに掲載してきた既存3社のインタビューにおいて、5Gを普及させるための課題として、
・サービスエリアの展開
・料金の設定
・端末の種類や価格
こうした課題とキーワードが登場した。

MNOとして参入したばかりの楽天モバイルにとっては、なにを置いてもまずは基地局の設置、サービスエリア拡大が急務となる。

佐藤祐介氏
「我々としては当然ですが、まずは基地局ですね。今は4Gも着実に建設を進めているところではありますが、5Gもしっかりやっていきたいです。

まずは自分たちで着実に基地局を展開していくことが重要で、自治体が進めようとしているインフラシェアリングの話もオープンに考えていきたいと思っています。そこで、まず課題のひとつとなるのはサービスエリアですね。

もうひとつはデバイスです。5Gになると、5Gに対応する端末を用意しなければいけませんが、まだあまり価格等の情報が出揃っていません。5G対応端末は、従来よりも高くなるでしょう。どれだけリーズナブルな価格でお客さまに届けることができるかが、今後の課題になってきます。

韓国のように、デバイスやプランを非常に安くして、まず普及させるという方針の国もありますが、そこをどうクリアするかは当社の課題のひとつです。

あとは、通信以外にどういったサービスを提供していくか、ですね。エリア、デバイス、サービス、この3つが当面の課題になるとは思っています。」


■日本の携帯業界を変え、そして世界へ挑戦
楽天モバイルの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
楽天モバイルでは、世界初の完全仮想化クラウドネットワークを国内でしっかり完成させ、足固めをした先には、世界への展開も検討しているという。

佐藤祐介氏
「我々が目指すのは、人々のライフスタイルやワークスタイルの変革です。楽天モバイルが携帯業界にMNOとして参入することによって、5年後10年後に『あのとき楽天が日本の携帯業界を変えた』、『人々のライフスタイルやワークスタイルを楽天が変えた』と言われるような変化をもたらすことが、我々が周波数をいただいた使命だと思っています。

そのために当社は、世界初の技術に挑戦しています。まずは、日本でしっかりとサービスを提供し、世界初のテクノロジーを用いたネットワークをベースにして、将来的には世界に我々のネットワークやサービスを展開していきたいとも思っています。

日本だけではなく、世界の業界も変えていくような、『世界初・日本発』というキーワードを念頭においてやっていきたい。

もちろん、まずは日本で確実に提供していくことが最優先ですが、世界へ挑戦ができる鍵が5Gの世界かなと思います。」

2014年からサービスを提供しているMVNOについても、今後どうしていくか検討中であり、自前のネットワーク整備についても、のんびりとはしていられない。

当初は、KDDI(au)とのローミングで全国カバーできるが、そのローミング契約も最長で2026年までの予定となっている。つまり、向こう6年の間に自前の設備で満足できるエリア展開をしなければならないのだ。


佐藤祐介氏

佐藤祐介氏
「事業拡大にあたっては様々なことが起きると思いますが、課題を確実に解決しながら頑張っていきます。

大変ながらも全社がひとつになってワクワクしながら仕事をしていますし、日本の携帯業界を変えられると信じています。」

通信大手3社が、これまで膨大な時間をかけて構築してきたネットワークを、そうやすやすと作り上げることができないのは明白である。

しかし楽天モバイルには、3社とは違うテクノロジーやアプローチにより、今後の携帯業界を一変させる可能性を有していることも確かな事実である。

楽天モバイルは、5GネットワークもMNO事業者としても、まだ産声を上げたばかりだが、見据えているのは5年後、10年後の未来だ。
楽天モバイルの今後の動向には、長い目で注目していきたい。


5G | 楽天モバイル株式会社


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