石黒 浩(いしぐろ・ひろし)  1963年生まれ。大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。京都大学情報学研究科助教授、大阪大学工学研究科教授を経て、2009年より大阪大学基礎工学研究科教授。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。アンドロイドやジェミノイドなどのロボットを多数開発するなど、知的システムの基礎的な研究を行う。2011年に大阪文化賞を受賞。また、2015年には、文部科学大臣表彰受賞を受賞。主な著書に「ロボットとは何か」(講談社現代新書)、「どうすれば「人」を創れるか」(新潮社)、「アンドロイドは人間になれるか」(文春新書)などがある。

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人間のように会話ができるアンドロイドを開発するなど、最先端の研究を通して「人間とは何か」を考えている大阪大学の石黒浩教授。石黒教授いわく、「生身の体は、人類を制約するもの以外の何物でもない」。機械の力を借りてその制約から解き放たれた時、人類はいったいどんな進化を遂げるのか。

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ロボットを活用するのは、最も人間らしい行為

石黒浩(以下、石黒) 「人間とは何か」という問いを考える切り口として、「人間と猿はどう違うか」という問いを立てることができます。

武田隆(以下、武田) 遺伝子的にはほとんど変わらないと聞きます。生物としては、そんなに違いがないんですよね。

石黒 そうです。でも、人間は道具を使う。道具で技術を発展させる。だから、ぜんぜん違うんです。技術の最も進んだプロダクトがロボットだとすると、人間とロボットは切り離せない存在なんですよ。カメラマンはカメラを使うから、カメラマンなわけです。人間にとってのロボットは、カメラマンにとってのカメラと同じだと言えます。

武田 ロボットを使うのは、最も人間らしい行為だとも言えるんですね。

石黒 そして人間の歴史は、能力を技術で拡張してきた歴史でもあります。例えば、月に行くことを目標に設定するとします。その方法として、自然淘汰や遺伝子の突然変異の力で「宇宙に行ける体」を作ろうとしたら?

武田 いつまで経っても行ける気がしません。どんなに突然変異が起こっても、不可能だと思います。

石黒 たぶん体を変化させて宇宙に行くのは無理ですよね。でも人間には科学技術があるから、1969年の段階で月面着陸を実現させています。

武田 ホモ・サピエンスが誕生してから、20万年くらいで達成してしまった。

石黒 そうです。生物の進化の上に、人類の技術による進化を重ねたら、とんでもなく先に行けるんです。遺伝子では絶対に達成できないところまで到達できる。そうすると、生身の体って人間を定義する際に必要ないのでは、と思うんですよ。

武田 それはすごい発想です。生まれたときからこの体で生きているので、どうしても人間として存在するには生身の体が不可欠だ、と思ってしまいますが……。

石黒 でも、よく考えてみてください。義手や義足をつけている人を見た時、僕らはその人のことを100%人間として認識しますよね。さらに身近な例で言えば、メガネをかけることは最も簡単なサイボーグ化だと言えませんか?

武田 素の目ではなく、なにか物体を通して物を見ている。でも、メガネをかけているからといって、人間らしくないとは思いませんね。

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