関連画像

写真拡大

職場でも価値観が多様化する中、トラブルになりやすいのが飲み会です。

5月には、大阪府警の警察官が、部下に飲み会への参加を強いたとして、懲戒処分になったと報じられました。時事通信などの報道(5月14日)によれば、50代の警部が、2023年から約2年間にわたり、当直明けの20〜30代の部下5人を月に1〜2回飲み会に誘っていたそうです。

断られると不機嫌になったり、行けない理由を問いただしたりして、参加を拒めない状況にしていたといいます。警部は「参加を嫌がっているとは思わなかった」と話しているそうです。飲み会に参加を求めることは、どのような場合にパワハラになるのでしょうか。

●「断れない状況」を作ることが問題

「パワハラ」とは、厚労省の指針や労働施策総合推進法30条の2によれば、
1)職場での優越的な関係を背景にした言動で
2)業務上必要な範囲を超え
3)働く環境を害する
ものをいうと考えられます。

今回は警察官という公務員ですが、パワハラの基本的な考え方自体は同じと考えて良いでしょう。

なお、人事院の(「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」平成27年(2015年)7月)では、人事院に寄せられた苦情相談事例から「忘年会の席で『お前を3月に辞めさせて後釜を探さないといかん』などと言いながら、首を絞める仕草をした」といった飲み会の場でのパワハラ事例を実際に挙げています。

今回のケースも、パワハラにあたると考えられます。

まず、上司から部下へ飲み会に参加させるものであり、(1)は明らかといえます。 次に、「断ると不機嫌になる」「行けない理由を問いただす」といった言動で、参加を拒めない状況を作り続けていました。業務上の必要性もなく、部下の働く環境を悪化させたと評価されやすい状況です(2、3)。

「あくまでも任意参加で、誘っただけ」という言い分はよくありますが、問われるのは「参加を断れない状況にしていたかどうか」です。

●「殴ってないなら大丈夫」ではない

なお、今回の警部は飲み会の場で部下の耳をつねるなどもしていたと報じられています。

身体的な攻撃はそれだけでパワハラですが、上で説明したように、暴力をふるわなくても、誘い方ひとつでパワハラになり得る点に注意が必要です。

●「嫌がっていると思わなかった」は通用するの?

このようなケースでは、加害者側から「嫌がっているとは思わなかった」という弁解がよくなされます。

しかし、パワハラかどうかの判断は、加害者の主観ではなく「一般的な労働者の感じ方」を基準にします。簡単にいえば、同じ状況に置かれた「ふつうの会社員」がどう感じるかが問われている、といえます。

上下関係のある上司から、断れば不機嫌になるとわかっていて毎月誘われれば、「断れない」と感じるのは自然なことです。

したがって、「自分は悪気がなかった」「嫌がっているとは思わなかった」という弁解は、基本的には通用しません。

●普通の会社でも同じこと

この問題は警察に限った話ではなく、民間の会社もパワハラを防止する義務を負っています。

飲み会に誘うこと自体は問題ありませんが、断りにくい状況を繰り返し作っている場合はパワハラのリスクがあります。「悪気がなかった」という言い訳も、上で説明したように通用しないことが多いといえます。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)