「スマホ知らない」「家族に絶縁された」長期受刑者2129人調査で見えた“社会との断絶”
社会を震撼させた凶悪事件の加害者たちは、刑務所の中で何を思いながら日々を過ごしているのか──。
無期懲役を含む長期刑受刑者を対象にした大規模調査の結果が、龍谷大学の研究報告冊子(龍谷大学 矯正・保護総合センター 研究年報第15号)で公表された。
調査では、約9割の受刑者が出所への意欲を示した一方、すでに社会復帰を諦めている受刑者も約3%存在することが明らかになった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●調査協力者の約6割が「無期懲役囚」
調査は「長期受刑者実態調査」として、2022年6月に法務省と龍谷大学犯罪学研究センターが共同で実施した。
調査に協力した受刑者2129人のうち、1244人(58.43%)が「無期懲役」だった。また、1238人(58.15%)には、過去に刑務所や少年院への入所経験があった。
年代別では、「20代」83人、「30代」329人、「40代」504人、「50代」516人、「60代」331人、「70代」249人、「80代以上」51人、「無回答」66人──だった。
●「社会でやり直したい」約7割
「出所したいと思うか」という質問に対して、「強く思う」「思う」と答えた受刑者は計1898人(89.15%)に上った。
出所を希望する理由(複数回答)では、「社会でやり直したい」が66.91%と最も多く、「自由な生活に戻りたい」(47.52%)、「親族と過ごしたい」(46.31%)、「治療を受けられる」(31.40%)、「刑務所での生活が苦痛」(30.35%)──と続いた。
一方、「思わない」「まったく思わない」と回答した受刑者も59人(2.77%)いた。
その理由(複数回答)としては、「仕事につける自信がない」(28.81%)が最多で、「刑務所外での生活が想像できない」(23.73%)、「一人で生活する自信がない」(20.34%)、「医療費が払えない」(15.25%)、「連絡がとれる親族がいない」(11.86%)、「連絡がとれる友人がいない」(8.47%)──などが挙がった。
●家族と「疎遠・絶縁」が最多
過去3年間に外部の人と面会や手紙のやり取りがあったかについては、両方ともあった受刑者は1319人(61.95%)、手紙のみが645人(30.30%)、面会のみが20人(0.94%)だった。
また、判決確定の前後で、家族・親族との面会が「かなり減った」と答えた人は839人(46.77%)にのぼり、「変わらない」は501人(27.93%)だった。
家族・親族と交流がなかった理由(複数回答)では、「疎遠になった・絶縁された」が193人(51.19%)と最も多く、「自ら連絡を絶った」125人(33.16%)、「高齢化・病気・死亡のため」107人(28.38%)が続いた。
さらに、刑務所内で「友人と呼べる人がいない」と答えた人は800人(38.76%)に達した。
●医療への不満は過半数、スマホ未経験者も多数
社会復帰に向けた課題も浮き上がった。
医療への満足度をたずねた項目では、「とても満足している」「満足している」と答えた受刑者は292人(13.72%)にとどまった一方、「とても不満だ」「不満だ」と答えた受刑者は計1072人(50.35%)と過半数を占めた。
また、入所時と比べて体調が「とても良くなった」「良くなった」と答えた人は397人(18.65%)だったのに対して、「とても悪くなった」「悪くなった」は915人(42.98%)に上った。
さらに、社会生活に欠かせない存在となったスマートフォンについても調査された。
スマホの利用経験があると答えた受刑者は682人(31.79%)にとどまり、「利用したことない」は993人(46.29%)だった。「スマホを知らない」と回答した受刑者も135人(6.29%)いた。
●「社会復帰への不安を和らげる支援が必要」
調査結果をまとめた論文は、次のように指摘している。
「長期受刑者の多くが、単に自由な生活をしたいと望んでいるわけではなく、更生(やり直し)への意欲を持っていることが示唆される。他方で、出所を希望しない理由には、仕事や社会生活への不安を挙げる者が多かった。更生の意欲を維持し、社会復帰への不安を和らげるような支援の必要性が示唆された」
また、スマホ利用経験者が約3割にとどまった点については、「受刑中から使用方法を学ぶなどの機会の必要性が示唆された」と言及。
そのうえで「スマートフォンに限らず、長期受刑者の社会復帰には、社会で用いられるテクノロジーとの乖離が課題となる」としている。
