【砂川 洋介】大阪で起きた「異能」の暴走…!「パワハラ局長」が大阪府参与になったワケ

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やりたい放題の「大阪府人事」

大阪府吉村洋文知事が、大阪市の「パワハラ局長」を府の「特別参与」に起用した問題は、岡本圭司氏本人の退職申し出により、4月16日に雇用終了となった。

波紋を呼んでいたこの人事について、知事は「パワハラはあってはならないが、能力は間違いない」と起用を正当化したこともあって、批判が広がっていた。

このドタバタ劇の裏に、なにがおきていたのか。

「パワハラ局長」こと岡本圭司氏は、この3月末まで大阪市の経済戦略局長を務めてきた。

3月16日、弁護士などで作る大阪市公正職務審査委員会(以下、委員会)は、岡本氏によるパワハラを認定し、その数は26件にも上った。委員会は横山英幸市長に対して改善を勧告(以下、勧告文)し、大阪市は減給10分の1(6か月)の懲戒処分とした。

ところが、この処分の発令は3月30日。岡本氏は翌31日をもって任期満了で退職したことで、懲戒処分による給料減額は行われなかった。大阪市の説明によれば、懲戒後の給料にしか処分の効力はなく、翌日に退職した岡本氏に減給の影響はないのだという。

そして岡本氏は、新年度から大阪府特別参与に起用された。

「もう終わりや」

岡本氏のパワハラの具体的な内容は、部下に対する威圧的な発言だ。たとえば、昨年7月には次のように激しく部下を叱責したという。

〈局長レクの内容に腹を立て、説明者である担当課長に対し、「もう終わりや。こんな話もってくるな。部長にも言うとけ。」などと怒鳴りつける〉

〈当初予定していた局長レク等が遅れる場合や、次のレクが昼休みの時間や時間外に及ぶ際、「いつまで働かせるんや。」、「少しは休ませろや。」等、大声で怒鳴る〉

その他にも次のような行為が認定されている。

ミスや情報の行き違いでも、感情的になって長時間叱責する。しかも、数日にわたり同じ叱責を繰り返す。説明のやり直しを何度も求め、細部にわたる修正指示を繰り返す。そして、意に介さなければ大声で怒鳴りつけ、謝罪しようと担当者が来ても無視する――。

岡本氏はこのような言動について委員会に対して「ない」と強く否定したというから、現場職員の認識と大きな隔たりがあったのだろう。

この認識の乖離が、彼の評価の二重性を物語っている。事実、岡本氏は無能な管理職ではなかった。

大阪府職員として文化・観光政策などに携わり、市の公募を経て経済戦略局長に就任した経歴を見れば、現場遂行能力の高さや政策理解の深さは疑いようがない。大阪万博関連や都市の魅力発信といった分野での経験も豊富。吉村知事の評価は、一定の説得力を持つ。

ただし、問題は、その「能力の高さ」のあり方だった。

「担当者を外せ、あいつあかんやろ」

岡本氏は観光・国際・文化・産業振興など多岐にわたる局長業務を一手に担い、その実務能力の高さに定評があった。

しかしその結果、部下の業務に過剰介入し、判断・裁量を奪う行動が常態化していた。部下からみれば、典型的な「マイクロマネジメント型」の上司だったのだ。

勧告文にはそのことが具体的な行動として示される。

〈担当者の事業の進め方に激怒し、「担当者を外せ、あいつあかんやろ。」という趣旨の発言を大声で行った〉

〈過去の局長レクでイベント名称や内容を説明していたにも関わらず、報道発表当日の朝に、「聞いていない、勝手にするな。」と怒鳴り、イベント名称を変更するよう指示し、 急遽、報道発表の原稿等の修正を行わせる〉

細部への過剰な修正指示、納得しないと進まない意思決定――。特徴的なのは、暴言そのものよりも、威圧的態度と感情的な叱責、それを公の場で実行し、それを繰り返すこと。

支配関係を背景に、強権的に業務を進める手法に長けていた。結果として、強圧的な手法で業務を前に進めていた側面は否めない。

岡本氏の人徳のなさを物語るのが、「勧告文」のなかに委員会も認定できない数々の疑惑が寄せられていることだろう。

たとえば、「公正契約職務執行マニュアル」に抵触しかねない行為、具体的には関係業者との会食や差し入れ、イベントの座席の確保、公共交通機関の利用が可能な時間帯での市内移動でのタクシー利用などだ。こうした業者との関係は、違法性があるとまでは言えないが、少なくとも岡本氏に対して職員たちは疑念を募らせていたことがうかがえる。

委員会の調査は、公益通報による内部告発によって始まった。また、委員会のアンケートに答えるかたちで岡本氏のパワハラを告発したのは、経済戦略局の関係職員166名中、42名に上った。

意を決して告発する人物がいる一方で、アンケートに正確に応えることで〈情報が漏洩することの強い懸念や報復を恐れている〉と訴える職員もいたという。岡本氏を監督する立場にある局付の理事(局長級職員)たちは対策を講じておらず、部下たちは精神的なダメージを受けながら、問題を矮小化する組織への不信を募らせていった。

透ける「別の思惑」

委員会は、岡本氏のパワハラを認定したうえで、職場環境配慮義務に反したとして、次のように勧告した。

〈業務の目的を達成するため、熱意を持って職員を指導したとしても(中略)、就業環境が害されたのであれば、このような言動については、業務を遂行するための手段としては、不適正であったと言わざるを得ない〉

コンプライアンスが重視される現代において、岡本氏のような人物を真に優秀な人材として用いるべきかどうかは、悩ましい問題だ。

一方で、横山市長が、懲戒処分を岡本氏退任の当日に発表し、処分不履行のまま、吉村知事が「能力は間違いない」と参与に就けた背景をたどれば、また別の思惑も見えてくる。

それについては、後編『大阪市「パワハラ局長」に処分なし…!松井一郎元市長と維新人事の怪しい関係』で詳しく見ていくことにしよう。

【つづきを読む】大阪市「パワハラ局長」に処分なし…!松井一郎と維新人事の危うい関係