その血圧、副腎が原因かも? 原発性アルドステロン症の診断に欠かせない検査と治療方針【医師解説】
血圧の上昇を引き起こすだけでなく、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなる原発性アルドステロン症。高血圧患者の中に一定数存在しますが、見逃されることも多いと言われます。今回は、原発性アルドステロン症の検査と治療について、ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島の中口先生にメディカルドック編集部が詳しく聞きました。
監修医師:
中口 裕達(ハートメディカルクリニックGeN横浜綱島)
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院 基本臨床研修プログラム修了。横浜市立大学大学院医学研究科 医科学専攻修了、医学博士号取得。国家公務員共済組合連合会 横浜栄共済病院 代謝内分泌内科、横浜市立大学附属病院 内分泌・糖尿病内科 助教、国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院 内分泌代謝内科 医長などを経て現職。医学博士、日本内科学会認定医、日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医。
編集部
スクリーニング検査と精密検査について教えてください。
中口先生
原発性アルドステロン症が疑われる場合、最初におこなうのがスクリーニング検査です。採血による血中アルドステロン/レニン比(ARR)の測定します。ARRが200以上の場合は陽性とされ、精密検査が必要です
ARRが100~200の場合は「暫定陽性」として、状況に応じて精密検査をおこないます
編集部
精密検査はどのような検査ですか?
中口先生
機能確認検査といって、複数あります。カプトプリルという薬を内服後、血中アルドステロンの変化を確認する「カプトプリル負荷試験」や静脈注射でアルドステロンの抑制を確認する「生理食塩水負荷試験」などです。これらの機能確認検査を通じて、本物であるかどうかを確認します。
編集部
陽性と判断された場合には?
中口先生
陽性と判断された場合、さらに副腎CTや、患者さんの希望により副腎静脈サンプリング(AVS)をおこない、総合的に評価しながら治療方針を決定します。副腎静脈サンプリングは、カテーテル(特殊な細い管状の器具を血管内に挿入しておこなう検査法)により両側の副腎から直接血液を採取し、アルドステロンの分泌を評価する検査です。この検査によって、左右どちらの副腎に異常があるのか(片側性か両側性か)を正確に診断できます。技術的に難しい検査ですが、診断精度が非常に高く、手術適応の判断に欠かせません。専門的な技術を要するため、実施できる施設は限られています。
編集部
治療方針はどのように決めるのですか?
中口先生
原発性アルドステロン症の治療の目的は、過剰なアルドステロン分泌を是正し、高血圧を改善することにより、心血管疾患リスクを低減させることです。治療方針は、片側の副腎に腫瘍(アルドステロン産生腺腫)がある「片側性」か、両側の副腎が過剰に働く過形成の「両側性」かによって異なります。片側性の場合は患者さんが手術を希望する場合、副腎摘出術が推奨されます。手術によりアルドステロンの過剰分泌がなくなるため、血圧の改善が期待でき、場合によっては降圧薬が不要になることもあります。ただし、血圧の正常化は年齢や高血圧の罹患期間など複数の因子に影響を受けるため、手術後も降圧薬が継続されるケースがあります。また、高齢者では手術の有益性を慎重に検討する必要があります。
編集部
両側性の場合は?
中口先生
両側性の場合は、左右の副腎を摘出するとホルモンの不足が生じるため、手術はできません。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(アルドステロンの働きを阻害する薬)による薬物治療が標準治療となります。この薬によって、アルドステロンの作用を抑えて血圧を下げ、心血管疾患の合併症リスクを減らします。治療方針は、患者さんの全身状態、年齢、希望などを考慮して決定します。いずれにしても継続的な血圧管理が必要となるため、専門医による経過観察が推奨されます。
編集部
手術の効果とリスクについて教えてください。
中口先生
片側性の原発性アルドステロン症では、腹腔鏡下副腎摘除術が有効な治療法です。手術により過剰なアルドステロン分泌がなくなるため、約30~50%の患者さんで降圧薬が不要になると言われています。手術のリスクとして、周囲の臓器損傷や出血、感染が挙げられますが、腹腔鏡手術の技術が向上したことで、重大な合併症は少なくなっています。また、術後に一過性のカリウム値上昇がみられることがありますが、通常は自然に改善します。
※この記事はメディカルドックにて<【近年増加】通常の「高血圧」より心不全・脳卒中リスクの高い特殊な高血圧をご存じですか?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
