「伊勢志摩国立公園」は、食べても眺めても漕いでも驚きと感動の嵐!【前編】

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国立公園に行ったことはありますか? こう尋ねると、たいていの人は「いや、ないと思います」と答えます。本当にそうでしょうか。日本全国にいま、35もの国立公園(所管は環境省)がありますが、実は“公園内”は国有地ばかりではありません。神社やお寺、住宅や田畑など、民有地がたくさ〜ん含まれているのです。つまり、誰もが一度は国立公園に足を踏み入れたり、散策を楽しんだりしているはず。

今回はそんな国立公園のなかで、伊勢神宮など民有地の割合が圧倒的に高い(96%!)、人びとの暮らしと密接にかかわり続ける「伊勢志摩国立公園」に行ってきました。

まずは名物「伊勢うどん」でパワーチャージ

「伊勢志摩国立公園に取材に行ってみませんか?」

ある日、環境省の人からこう声をかけられた。2022年3月に同省の全面協力のもと、『FRaU S-TRIP MOOK ゆっくり、冒険。ニッポンの「国立公園」』を刊行し(いまも絶賛、発売中!)、出版界イチの国立公園ツウを自認するFRaUとしては断る理由がない。ふたつ返事で、環境省主催のプレスツアーに参加すべく、近鉄特急に乗って、伊勢志摩国立公園の最北部あたりに位置する鳥羽駅(つまり、ここも国立公園内!)に降り立った。気合十分!!

まずはツアーの案内役、「海島遊民くらぶ」代表取締役であり、「旅館海月」の女将でもあり、伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進協議会の会長でもある江崎貴久(えざき・きく)さんが、「私が一番好きな店で、しょっちゅう行きます」と語る伊勢うどんの名店「七越茶屋」へ。鳥羽駅から徒歩6分ほど、真珠島のほど近くにある、創業50年以上の老舗だ。

お得な「手こねずしセット・梅」を注文し、待つこと15分。湯気を上げるほかほか茹でたての伊勢うどんたち(切り昆布、出汁巻き卵の小鉢に名物・アオサ入りの味噌汁つき)がテーブルにやってきた。

まずは伊勢うどんから。見た目は“醤油ぶっかけ”のようだが、粘度のあるタレはタマリ醤油にカツオ出汁がきいた、節系の旨みが強いもの。シャクシャクの香り高い青ネギがとてもいい仕事をしていて、大変おいしい。伊勢うどんは「コシがない」「グニャグニャ」とよくいわれるが、どうしてどうして。しっかりコシというか弾力がある。みたらし団子に近い食感でもあるが、もっと表面がツルツル。噛みながらすする太麺が何とも心地よく、うどん自体の小麦の味と香りがいい。さすがは350年以上の歴史をもつご当地麺だ。

あっという間に伊勢うどんを平らげて、てこねずしへ。酢飯に醤油で“ヅケ”にしたカツオが載っていて、見た目どおりに旨い! いや〜、いきなり大満足だ。

「おいしいですね〜。実は、この七越茶屋さんは、同僚の奥さんの実家でして」

と語るのは、今回のツアーを率いる、環境省・国立公園課長の長田啓(おさだ・けい)さんだ。長田さんは前述のFRaU S-TRIP国立公園号にも登場いただいた、1995年の入省(当時は環境庁)以来、全国各地の国立公園に赴任したり、東京・霞が関の本省で働いたりを繰り返してきた自然環境のスペシャリストだ。

「この伊勢志摩は戦後最初に指定された国立公園で、今年で80周年。もっとも民有地を多く含む国立公園でもあります。各国立公園に駐在して、地域の人たちと協力しながらルールをつくり、自然や風景を守って、多くの人に利用いただくために働いているのが環境省の自然系職員『レンジャー』です。私自身も、いまは本省勤めですが、レンジャーですし、先ほど話に出た同僚もレンジャーです」

そのレンジャー長田さんらが、伊勢志摩の魅力を感じられるスポットのひとつとしてオススメするのが、これから向かう「志摩自然学校」だ。

リアス海岸のド真ん中でシーカヤックを操る

先ほどの鳥羽市から車で南下すること約1時間。志摩市南部、英虞湾の東岸付近にある志摩自然学校に到着した。ここでは複雑怪奇な海岸線=リアス海岸の風景や魅力を存分に味わえるマリンアクティビティを、老若男女、車イス利用者など、多彩な人びとに届けている。英虞湾は真珠養殖発祥の地であり、訪れた日は、収穫前のアオサが青々と海面に映えていた。何か初めてのことにチャレンジするには最適すぎる環境だ。

今回、私たちが体験するのは2人1組で乗るシーカヤック。私は長田さんとバディを組むことになった。よろしくお願いしま〜す。

乗降する際に結構濡れるということで、まずは長靴をレンタルし、浜辺でカヤックの乗り方、降り方、パドルのつかい方(前進、バック、左右への曲がり方、停止の仕方)などのレクチャーを受ける。アオサの養殖ネットの周囲にはポールが立ってるので近づかないこと、カヤック上で立ち上がらないこと(落下しちゃうそう)、などが厳命される。

長田さんが、あれこれやってくれてついに進水。前に座っているほう(私)は気楽なものだ。パドルの動きも、後ろに座る人(長田さん)が合わせてくれるし、間違っていたら声をかけて正してくれる。

スイスイと英虞湾内を進むカヤック。今日はスッキリ晴れているから、とっても気持ちがいい。たった30分ほどで浜に戻ったが、初めてのシーカヤックですっかりリフレッシュできた。

リアス海岸を“上から”見ると、またスゴイ!

さて、今度はこのリアス海岸(英虞湾)の姿を上から見てみようということで、志摩自然学校から北上し、やってきたのは「横山展望台」。

ふもと(標高62m)には環境省が運営する「横山ビジターセンター」があり、その上のP2駐車場からメインの標高140m「横山天空カフェテラス」までは、ウッドデッキのスロープが整備されているから車イスやベビーカーでもOK。天空カフェテラスからは、英虞湾の絶景を一望できる(冒頭写真)。いやいや、これはマジでスゴイわ。感動!

ここでさんざん自撮り、他撮りした後は、カフェテラスの名前どおり、併設された「カフェ・ミラドール」でソフトクリームやコーヒーを!

そして帰りには、ぜひ前述の横山ビジターセンターに立ち寄ってほしい。ここにある床と正面と左右3方の壁面がスクリーンになっている「4面シアター」(下写真)は、英虞湾の風景とともに必見だからだ。

4面のスクリーンには、英虞湾の干潟や海女(あま)さんたちが藻場(もば)でサザエを捕るようすなど、この国立公園のさまざまな場所が動画で映し出され、そのなかの丸で囲まれた部分にタッチすると、隠れていた磯の生き物がピョコッと顔を出したりする。こうして楽しんでいるうちに、この地の生態系や人びとの伝統的な暮らしを学べるというわけだ。ちなみに、ほかの展示も非常に充実しているので、ぜひ時間をたっぷり取って見学することをオススメする。

伊勢エビまるごと1尾、いただきま〜す!

そうこうしているうちに、すっかり日が暮れてしまった。鳥羽市に戻り、この日の宿「扇芳閣(せんぽうかく)」にチェックイン。早々に夕食をいただくことにする。前出の貴久さんが、「今夜はここの名物女将さんが、相当がんばってサービスしてくださったみたい」と言うだけあって、食前酒(梅酒)、先付け(からすみ、秋刀魚わた焼、黒胡麻豆腐ほか)の後に出てきたお造り(刺身)がこれ(上写真)。なんと伊勢エビが、ひとりにつき、まるごと1尾! 陳腐な表現で恐縮だが、ホントにプリプリで甘い。

その次には「松茸と鱧(ハモ)の土瓶蒸し」「一人鍋 桑名の蛤(ハマグリ)酒蒸し」なんて高級料理&地元のごちそうが出てくるし、さらに焼き物「扇芳閣名物宝楽焼」ときたら、なんとまた伊勢エビ半身が一人前の「伊勢エビタルタル焼」に牡蠣(カキ)にサザエ。続く蒸し物には地元名産のアオサのクリームソースが、揚げ物は「松阪牛カツ」「松阪豚コロッケ」、ご飯は「海鮮釜飯」と地域の高級食材が惜しげもなく詰め込まれている。デザートの牛乳プリン&りんごのコンポートまで、驚きの連続だった。

実は地酒までこっそりいただいちゃって、すっかり満足しながら客室に入ると……これまた広さに驚く。結構な大家族でも余裕で泊まれるだろう。畳スペースの壁には、いかにも子どもが喜びそうな遊び心=隠し部屋が。実際、「私、ここで寝る〜!」と言い出す子どもが多いのだとか(中は十分広い)。さすがは、「子育て家族に、もっとも愛される宿」を目指していると公言するだけのことはある。

客室の窓から眺めると、山の木々の向こうに鳥羽の夜景、さらにその先には海や離島が見える。大自然と人びとの暮らしが溶け合う伊勢志摩国立公園を象徴するかのような風景。さあ、明日の朝はどんな顔を見せてくれるのだろう。【後編に続く】

Text:舩川輝樹(FRaU編集長) Photo:環境省(カヤックレクチャー、横山展望台)、舩川輝樹

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