「中国に完全に負け越してきている」この国の大人たちが知らない中華発スマホゲームのニッポン浸食
成長を続ける中国のエンタメ市場
スマホでニュースサイトなどを開いているときに、パズルゲームのようなアプリの広告に苛ついたことはないだろうか。実は、これらのほとんどが中国製ゲームをプレイさせるための「誘導装置」だ。そして、知らずのうちに日本の若者たちは没頭している。
「エンタメ業界において、日本は厳しい状態に置かれています。すでに音楽やドラマで韓国に遅れを取っていますが、ゲームの領域では中国に完全に負け越してきているのです」
こう警鐘を鳴らすのは、エンタメ社会学者の中山淳雄氏だ。中国のエンタメ市場は、世界を圧倒する規模とスピードで成長を続けている。
「いまの中国は、アニメやゲームなどの二次元関連市場が急激に成長しています。だいたい13兆円規模とされており、これは日本のコンテンツ産業がすべて入ってしまうほどの経済圏です」(中山さん)
特にゲーム産業に関して言えば、昨年の国内売上高が約3508億元(約7兆8000億円)、海外売上高は約205億ドル(約3兆2000億円)と過去最高額を更新。ユーザー数は6・8億人に達し、米国の人数の約2倍という巨大な基盤をつくりあげている。
「中国製」と気づかせない戦略
もともと中国では'00年から約15年間、「青少年への悪影響」という理由で家庭用ゲーム機の販売が原則禁止されていた。その結果、若者はネットカフェへ流れて、脱法的な形でオンラインゲームが流行するようになる。また、海賊版が横行しているためソフトを売るビジネスも成立しにくかった。
そこで生まれたのが「ゲーム自体は無料だが、少額ずつ課金させる」という巨大なエコシステムだった。このノウハウは、スマホの普及に合わせて爆発的に拡大されていく。
「中国のゲームが世界的に認知されるようになったのはスマホゲームの『荒野行動』('17年)と『原神』('20年)です。この2つが大ヒットしたことを機に、ゲーム業界の勢力図は塗り変えられました。日本の市場のシェアを見てみると、売れ筋のゲームの約3割は中国製です」(前出・中山氏)
家庭専用機が許されない国だからこそ、PCとスマホを使ったゲームが独自の進化を遂げたのだ。『ラストウォー:サバイバル』『キノコ伝説』『ホワイトアウト・サバイバル』など、いまや中国製ゲームは、日本の若者にとって、遊んで当たり前の存在となっている。
「こうしたスマホゲームの強みは、日本が得意とするストーリーテリングや物語の深さにはありません。プレイのメカニクス(仕組み)と、ゲームに没頭させる機能性、そしてマーケティングの力で日本市場に浸透していきました。
その背景には驚異的な人員と資本力、意思決定スピードがあります。日本でゲーム産業に従事している人は約5万〜6万人と言われていますが、中国はその3倍の約20万人はいるとされています」(中山氏)
たしかに、こうしたゲームに登場するキャラクターデザインは、日本の流行アニメとなんら遜色ない。日本の人気声優が起用されている作品もある。「中国製」と気づかせない戦略も、若者に受け入れられている理由だろう。
【後編を読む→「中華エンタメが日本のポップカルチャーを超える日」ゲームだけでなく、3000億円規模の大ヒットアニメも誕生していた】
「週刊現代」2026年3月30日号より
【つづきを読む】「中華エンタメが日本のポップカルチャーを超える日」ゲームだけでなく、3000億円規模の大ヒットアニメも誕生していた
