『ユンヒへ』 ©2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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イム・デヒョン監督の『ユンヒへ』は、これまで韓国ではあまり正面から描かれてこなかったという中年女性の同性愛と彼女たちの経験を描いた作品だ。2020年の『コリアン・シネマ・ウィーク』で日本に紹介されると静かな話題を呼び、2022年1月、日本でも劇場公開されることとなった。

韓国の地方都市で娘のセボムと暮らすシングルマザーのユンヒ(キム・ヒエ)と、小樽で伯母のマサコと暮らす日本人女性ジュン(中村優子)の20年越しの再会──現在35歳のイム・デヒョン監督は本作に寄せたコメントで「男性中心的な社会秩序が強固に成立した国で生きてきたという点」で日本と韓国の女性には共通点があり、本作では「東アジアの女性たちが互いに連帯し、愛を分かち合う姿を見せたかった」と語る。

違う人生を生きるふたりの女性の愛を丁寧に描いた本作は、どのように生まれたのか? フェミニストを公言するイム監督に、自身より少し年上の世代の性的マイノリティーにフォーカスした理由や、本作の根底にあるフェミニズムの考え、また変化の速い韓国社会の現状について話を聞いた。

※本記事には一部本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

■1986年生まれの監督が、少し上の世代のクィアな恋愛映画を撮った理由

「私はいつも中年に対して高い関心を持っていました」と1986年生まれのイム・デヒョンは語る。

「理由は単純で、私もいつかは歳を取って中年になり、老年になるからです」

余命宣告を受けた父親が、疎遠だった映画監督志望の息子と共に、長年の夢だった映画制作のための旅に出る様を描いた長編デビュー作『メリークリスマス、ミスターモ』(2016)に続き、『ユンヒへ』もまた中年の主人公が過去を顧みる物語である。今回は母と娘の関係に焦点を当てているが、どちらも冬の旅を通して、親子関係の回復を描いている点でも共通するだろう。

「韓国には『コンデ』という言葉があります。『気難しく説教臭いわからず屋の大人』という意味ですが、いまの若者は中年に対して、そのように蔑んだり、あるいは会話をするのを避けたりする傾向があります。

もちろん、なかには尊敬できない大人もいますが、学ぶところの多い中年の人たちもたくさんいると思います。私よりも上の世代は、いま以上に秩序のない社会を生き抜いてきた方々です。もっと差別が激しかった大変な苦しい時代を生きていた人たちなので、若い人たちが学ぶべき点もたくさんある世代だと思っています」