近年、『私の少女』(2014)、『恋物語』(2016)、『お嬢さん』(2016)、『Fantasy of the Girls(英題、2016)』、『はちどり』(2018)、『アワ・ボディ』(2018)、『最善の人生』(2020)とレズビアニズムを描く、あるいはレズビアン・セクシュアリティを取り上げ、さまざまな女性同士の関係を見つけようとする映画が韓国でも増えている。『ユンヒへ』は、その系譜のなかでもまだ類を見ない、中年女性のクィア映画である。典型的なカミングアウトの物語でも恋に落ちるまでの物語でもなく、かつて愛し合ったふたりの再会の物語を儚い雪景色のなかでナチュラルに綴る。

「私たちよりも前の世代の性的マイノリティーを描くときに、私が描くことができる範囲はあまり多くないと考えていました。その数少ない選択肢のなかから今回このような映画をつくって、正しかったと思っています。

『ユンヒへ』は、いま現在燃え上がるような恋や愛を描いた映画ではなく、過去の一時期、お互いに強く愛し合っていた人たちの物語です。以前の世代のレズビアン──レズビアンだけでなく、性的マイノリティーの人たちは、さまざまな抑圧や差別を受けていました。その実態がどういったものだったのかを描きたいと思い、自分なりに悩んで、いろいろ思いを巡らせてつくり上げたのがこの映画です。

じつはこういったテーマは長いあいだ、私のなかで温めていていたものでしたが、もうこれ以上自分の心のなかだけにしまっておくのは耐えられない、実際に映画を撮ろうと思って今回の作品がスタートしました」

■描かれる三世代の女性たち。「過去に家族から心の傷を負わされたふたりが、新しい家族によって癒されるという物語でもある」

約20年前、ユンヒ(キム・ヒエ)──この名前は、イム・デヒョン自身の母親が若い頃、恋愛していたときに使っていた偽名なのだという──とジュン(中村優子)は深く愛し合う仲だった。しかし、異性愛規範の下で周囲からセクシュアリティーを否定され、その愛は決して尊重されることがなかった。

ふたりの関係が切り離されて以降、ユンヒは、家族からの圧力で早くに結婚を強いられたものの、ジュン不在の残りの人生を自らが耐えなければならない「罰」だと考えて生きてきた。一方、ジュンはすべてひた隠しにしながらひとりで暮らしていくことを選択した。

傷を胸に埋めた彼女たちは、お互いへの想いを押し殺し、自らを疎外させてきたのだ。故に、いつも物思いに耽る表情を浮かべる彼女たちは、しばしばタバコを吸っては沈黙を貫き、あるいは心の内を隠すようだ。