(※写真はイメージです/PIXTA)

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駅近、高層階、充実した共用施設。利便性と資産価値への期待から、タワーマンションは人気を集めています。しかし、その暮らしには、購入時には見えにくい負担も存在します。収入が高くても、「維持し続けること」が想像以上に重くのしかかるケースは少なくありません。

共働き夫婦が選んだ“理想の住まい” 

東京都内に住む会社員の健一さん(仮名・42歳)と妻の麻衣さん(仮名・39歳)は、5年前、都心部のタワーマンションを購入しました。

当時の世帯年収は約1,300万円。夫婦とも大手企業に勤務しています。

「ずっと憧れていたんです。夜景が見える高層階で、便利な場所に住む生活に」

購入したのは、駅徒歩数分の高層タワーマンション。価格は約9,000万円でした。

住宅ローンはペアローンを利用。営業担当からは、「世帯年収なら十分返済可能な水準」と説明を受けていたといいます。

「最初は、本当に毎日が楽しかったですね。ラウンジもあるし、ゴミ出しも24時間できる。ホテルみたいな生活でした」

夫婦は共働きで忙しく、利便性を重視していました。通勤時間が短縮され、家事負担も減ったことで、「買って正解だった」と感じていたといいます。

しかし、生活が落ち着くにつれ、“想定外の負担”が少しずつ見え始めます。

最初に気になったのは、毎月の固定費でした。住宅ローンに加え、管理費、修繕積立金、駐車場代。合わせると月10万円近い負担になっていたのです。

「ローン返済ばかり気にしていて、“住み続けるコスト”を軽く見ていました」

さらに、築年数の経過とともに修繕積立金も増額されました。

国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、マンションでは築年数の上昇に伴い、修繕積立金の不足や値上げが課題となるケースも多く見られます。特に大規模マンションでは、設備維持費や将来的な大規模修繕費が高額になりやすい傾向があります。

「“タワマンは資産価値が落ちにくい”と思っていました。だから経済的だと。でも、“持っているだけでかかるお金”は想像以上でした」

さらに、5年の間に夫婦の生活も変化していきました。子どもが生まれ、麻衣さんは時短勤務に。世帯収入は以前より減少し、教育費も増え始めます。

「買った当時は、“ずっと今の働き方を続けられる”前提で考えていたんですよね」

「売ればいい、ではなかった」…直面した“身動きの取れなさ” 

夫婦が本格的に危機感を抱いたのは、家計を見直したときでした。毎月の住宅関連支出は、ローン、管理費、修繕積立金などを含めると20万円を超えていました。

「年収だけ見れば高いほうだと思います。でも、自由に使えるお金は想像より少なかったんです」

夫婦は一時、「住み替え」も検討しました。しかし、そこでも現実を突きつけられます。

住宅ローン残高、売却時の仲介手数料、相場変動…。さらに、タワーマンション市場は物件によって価格差が大きく、「買った価格で必ず売れる」とは限りません。

「“資産になる”と思っていたのに、実際は簡単に動けるものじゃなかった」

加えて、子どもの保育園や生活圏の問題もあり、簡単に引っ越せる状況ではありませんでした。

「“この生活を維持し続けなきゃいけない”ことが苦しくなっていったんです」

現在、夫婦は支出を見直しながら生活しています。外食や旅行を減らし、教育費や将来資金とのバランスを改めて考えるようになりました。

「買ったこと自体を後悔しているわけじゃないんです。でも、背伸びしすぎた部分はあったと思います」

住宅取得にあたっては、購入価格だけでなく維持管理費や将来のライフプランを踏まえた検討が重要です。

「憧れだけで決めるには、あまりにも大きな買い物でした」