4月15日は「遺言の日」意外と知らない書き方、「財産の分配」より「家族の争いを防ぐ」を心がけて
4月15日は「遺言の日」です。各地で無料相談会やセミナーなどが開催されます。
そろそろ自分も遺言を書こう──。そう思い立ったときに、まずは何から始めたらよいのでしょうか? 真っ白な紙の前で、大切な家族の顔を思い浮かべ、筆が進まなくなることもあるのでは。
「遺言の書き方」のさらに前段階、心構えのところから、相続問題などにくわしい伊藤勝彦弁護士に聞きました。
●書こうと思ったことが素晴らしい
──遺言を書こうと思い立った人がまず向き合うべきことは
遺言を書こうと決意されたこと自体、まず素晴らしいことだと思います。
ただ、いざ紙を前にすると、「何を書けばいいのか」「誰かを傷つけてしまわないか」という不安から、筆が止まってしまう方が少なくありません。
最初に向き合っていただきたいのは、財産の一覧ではなく、「自分は家族に何を伝えたいのか」という問いかけです。
●ざっくばらんに「自分の気持ち」書き出そう
遺言は法律文書である前に、残される人への意思表示です。
財産を誰にどう分けるかという「結論」を急ぐ前に、「なぜそう分けたいのか」「家族にどうあってほしいのか」という思いを、まず自分の中で整理することが大切です。
そのためにも、遺言を書く前に、終活ノートや無地のノートを使って、ご自身の気持ちをざっくばらんに書き出してみることをお勧めしています。
ノートに書き出すだけでは遺言としての法的効力はありませんが、頭の中を「見える化」すると、遺言の輪郭が自然と浮かんでくるものです。
●「財産の分配」より「家族の争いを防ぐ」という視点
──「遺言を書く目的」をどう設定すべきでしょうか
遺言の目的として多くの方がイメージするのは「財産の分配」ですが、私が特にお伝えしたいのは「家族の争いを防ぐ」という視点です。
相続トラブルは、必ずしも大きな財産がある家庭だけで起きるわけではありません。
むしろ、不動産一件、預金口座一件をめぐって、長年仲の良かった兄弟姉妹の関係が壊れてしまうケースが後を絶ちません。
遺言があれば、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」を経ずに相続手続きをスムーズに進めることができます。つまり遺言は、残された家族が揉めないための「道しるべ」を遺してあげることでもあるのです。
●意外? 自由にメッセージを書ける
また、遺言には「付言事項」といって、法的効力はないものの、家族へのメッセージを自由に書き添えることができます。
財産の分け方に込めた思い、感謝の言葉、家族への願い──そうした言葉が、時に法律の条文よりも深く遺族の心に届くことがあります。
いわば、遺言書の存在は、故人の「最期の思いやり」とも言えるでしょう。
生前に自分の意思をしっかりと示しておくことで、残された家族の負担を減らし、故人を偲びながら円満に相続を進めることができるのです。
●「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違い
──法的に有効な「遺言」を作成するにあたり、注意すべきことは
遺言には、大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
自筆証書遺言は費用がかからず手軽に作成できる反面、全文を自筆で書くなどの厳格な方式が求められており、形式や内容に誤りがあると無効となるおそれがあります。
また、自宅で保管している場合には、死後に発見されない、紛失する、あるいは偽造・改ざんされるといったリスクもあります。
なお、現在はこれらのリスクを軽減するために、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することもできます。
一方、公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、法的な有効性が高く、紛失や偽造の心配もほぼありません。費用はかかりますが、確実に遺志を実現したい場合にはこちらをお勧めします。
●「山田太郎に全財産を遺す」遺留分トラブルも
自筆証書遺言、公正証書遺言、共通して特に注意していただきたいのは、遺留分の問題です。
配偶者や子など一定の相続人には、法律上最低限保障された取り分(遺留分)があります。
特定の人に全財産を遺すといった内容の遺言は、後から遺留分をめぐるトラブルに発展することがあるため、専門家への相談をお勧めします。
遺言は一度書いたら終わりではなく、状況の変化に応じて書き直すこともできます。「完璧な遺言を書かなければ」と気負わず、まず書いてみる。その一歩が、大切な家族を守ることにつながります。
【取材協力弁護士】
伊藤 勝彦(いとう・かつひこ)弁護士
1973年静岡県生まれ。1997年東京大学法学部卒業、同年司法試験合格。2000年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。2003年みお綜合法律事務所のパートナー弁護士(共同経営者)。弁護士活動の初期から「終活」関連分野に注力。遺産分割や遺留分侵害額請求に関する調停・訴訟に多数取り組む。著書に『モメない相続でお金も心もすっきり!親子終活』(あさ出版)など。
事務所名:弁護士法人みお綜合法律事務所
事務所URL:https://www.miolaw.jp/
