港区青山で「充電難民」になった話… インフラだけじゃない!? 充電設備は沢山あるのに充電できなかった理由とは

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急速充電器、たくさんあると思って安心していたが

 昨今、各自動車メーカーから多種多様な電気自動車(EV)が発売されてます。
 
 日本市場では、日産・三菱から約200万円の軽EVが登場したほか、海外ブランドでは1000万円超えの高級EVがラインナップされるなどユーザーは自分にあったものを選ぶことが出来ます。
 
 しかし、実際に使ってみるとEVならではの「充電インフラ」の課題が浮き彫りになってきます。

東京都港区でなぜ「充電難民」になったのか? 問題はインフラだけじゃない? 実際のEV課題とは(画像は筆者撮影)

 筆者(加藤久美子)は、2022年5月半ばから約2か月にわたって、さまざまなEV(日産アリア、日産リーフ、ホンダe、アウディe-tronGT 、ヒョンデアイオニック5、ボルボC40 、マツダMX-30EVなど)を乗り継ぎながらそれぞれ4−7日間ほど試乗しています。

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 これまでEVには何度か乗ったことはあっても、最後に充電したのはおよそ10年前ということで、最新の充電状況も知りたいと思ったのが理由です。

 そのような状況のなか、初めてホンダeを借りて返却する日に港区青山近辺で充電難民になってしまいました。

 ホンダの広報車(取材用に報道関係者に貸し出す車両)は青山一丁目にあるホンダ本社で借りて返却します。

 ガソリン車の場合は返却時にガソリン満タン+洗車をして返すのが一般的な広報車返却のルールです。

 これがEVになるとメーカーそれぞれで返却時のルールは異なってきます。

 ホンダの場合「返却の際には充電80%以上で返却」というルールでしたので、「返却前に周辺の急速充電スタンドで充電すればいいか。近くに急速充電スタンドはたくさんありそうだし」くらいに軽く考えていました。

 ホンダeの車内には近隣の急速充電器リストが記された紙が入っていました。

 もちろん、ナビ画面にも周辺の充電場所、充電器の「満空」情報などが表示されますが、位置関係がわかりやすいので紙に記された地図と充電器リストをもとに近い場所から行ってみることにします。

 なお、ホンダ本社にも敷地内(ホンダウェルカムプラザの前)に誰でも充電できる急速充電器がありますが、そのときはほかのEVが充電しており、充電はできませんでした

 次に訪れたのはリスト2番目にある「生長の家赤坂“いのちの樹林”」です。

 場所はすぐにわかりましたが、利用時間が10−16時まで。行ったときには16時15分でしたので充電はあきらめます。なお、こちらは無料で充電でき、スペースもゆったりしているのが良いのですが、「故障中」で使えない場合も多いそうです。

 リストの3番目以降は東京ミッドタウンや六本木ヒルズ駐車場などほとんどが「有料駐車場のなかにある急速充電器」です。

 充電器を設置する有料駐車場のなかには、「充電中(30分)に限り駐車料金無料」としているところもありますが、リスト内の駐車場はほぼすべて充電のために利用する場合でも駐車料金を支払う必要があります。

 なお、リストには「六本木スーパーチャージャー」という名前の充電器がグランドハイアット東京内の駐車場にありますが、ここは「スーパーチャージャー」の名前の通り、テスラ専用の充電施設です。

 ホンダeは使えません。ちなみにこちらは充電時間内(30分)であれば駐車料金は無料とのことでした。

 リストにある充電施設は有料駐車場内にあるもの含めて、いずれも充電できない、充電しにくい状況であったため周辺のディーラーをあたってみることにしました。

 なお、国産車、輸入車ディーラーでは多くが、「他社EVの充電」もOKとしています。

 とくに力を入れているのが日産ディーラーです。全国にある日産ディーラーのほとんどに急速充電器と「充電車用専用区画」が用意されており基本は24時間いつでも充電が可能です。(一部ディーラーでは駐車場の一角を充電車用区画としているところもあります)

 また、夜間はディーラー入口に柵をしているところがほとんどですが、夜間でも充電はできるように充電器用スペースにだけ入れる柵のレイアウトにしてあるとのこと。

 筆者が何度か充電気を利用した、神奈川日産のディーラーは夜間でも出入りがしやすく(チェーンや柵もなし)明るく操作もしやすい場所で充電することができました。

 ディーラーで他社EVの充電ができないのはポルシェやテスラです。

 ポルシェディーラーに設置してあるハイパワーな充電器はCHAdeMO(チャデモ・日本で使用されるEVは一般的にチャデモ規格を採用)規格ですが他社EVの充電は不可となっています。

 また、テスラはテスラ専用の「スーパーチャージャー」での充電が基本なのでテスラ販売店などで他社EVが充電することはできません。(テスラ用のチャデモアダプターを使って、テスラ車がチャデモ充電器で充電することは可能です)

近隣の輸入車ディーラー数か所に行ってみたが…玉砕

 話を戻します。ホンダeを充電するためにメルセデス・ベンツ、BMWなどの高級車ディーラーを含め回ってみたのですが、4軒ほど回りましたが結論からいうと、どこも充電はできませんでした。

 ホンダeのナビ画面に表示される充電器の「満空」情報では「空」を示していても、実際に行ってみると充電スペースにほかのクルマを駐車しています。

 おそらくディーラーを訪れているお客さんのクルマだと思われます。それをどかしてまで充電することはさすがにできません。

 なかには「急速充電器」の案内に従って店舗の敷地に入ってかなり奥まで進んでから、充電用スペースに充電していないクルマが駐車していたこともありました。
 進んでいく間にディーラーの人達に驚いた目で見られることもあり、こちらとしても「場違いなところに来てしまった」という居心地の悪さを何度も感じることになってしまいました。

 ナビ画面で「空」と表示されていてもディーラー設置の急速充電器の場合「満空」情報だけでは、実際に使用できるかどうかはわからないため、事前にディーラーに電話をして確認することをお勧めします。

 その場で充電が不可とわかれば、少なくとも、現地までいって場違いなところに来てしまった、という経験はしなくて済むでしょう。

ホンダが「ホンダe」の広報車に乗せている周辺充電設備の案内(画像は筆者撮影)

 今回の「充電難民」は都心に特有の状況だったかもしれません。都心にある輸入車ディーラーはどこも限られた敷地のなかで充電器を設置し、さらにお客様用の駐車スペースも確保しなくてはいけません。他社のEVが充電できる余裕などないと思ったほうがよさそうです。

 今回、色々なEVに乗って30か所以上で充電をしてみたわけですが、さまざまな充電経験を経て、やっと横浜市青葉区に全国で1か所だけ稼働している「公道設置充電器」(2021年6月にスタートした24時間利用可能な急速充電器2基)が、時間を気にせず、車種を問わず遠慮なく充電できるのはありがたいことだと感じました。

 ただでさえ道が狭い都心の公道に充電器を設置するのは困難かもしれませんが、都会ではEVのカーシェアも増加中ですが、自宅に充電設備を持たない人にとっても気軽に確実に利用できる充電器が増えることが望まれます。