3人の男を同時に弄んだ女に、天罰…!?一線を越えた男が、女に告げた残酷な言葉とは
最高の相手と結婚したい。誰もがそう思うだろう。
ときめき、安定、相性の良さ…。だけど、あれもこれも欲張って相手を探していると、人生は瞬く間に過ぎていくのだ。
「婚活は、同時進行が基本でしょ?」
そんな主張をする、強欲な女・与田彩菜。
―選択肢は多ければ多いほうがいい。…こっそり誰にもバレないように。
彼女は、思い通りに幸せを掴めるのか…?
◆これまでのあらすじ
彩菜は、経済力のある彼氏・直人、一目惚れした仕事仲間・蓮、相性抜群の友人・大輝と同時進行で交際し、ベストパートナーと結婚するつもりだったが、次々と別れてしまう。

「『しばらく会わない』って言ったのに、どうして連絡してくるの?」
彩菜の目の前で、大輝は不満そうに呟くと、エスプレッソを飲んでしかめ面をする。
エスプレッソが苦いのか、あるいは、感情が顔に出るほどに彩菜と会いたくなかったのか。
「私のワガママでごめん。会うのは、本当にこれが最後」
彩菜はそう前置きしてから、大輝の問いに答える。
「大輝に直接、確かめたいことがあって、会いたかったの」
「…いいよ。この際だから何でも聞いて」
観念したように大輝が言ってくれたので、彩菜は姿勢を正して、話を始める。
「私と大輝は『相性』が良かったと思うの。いろんなことの『相性』が本当にぴったりだった。友達の関係だった頃からそう思ってた」
「俺もそれは思っていた」
「でも、本当にそれだけだった?」
途端に大輝は、怪訝そうな顔をした。
「それだけって、どういう意味?」
「『ときめき』はあった?」
「…ああ…なるほど、そういうことか…」
どうやら、彼はすぐに話の本題に気づいたらしい。
「…『ときめき』だけじゃなくて、『安定』についても聞きたいわけだ」
彩菜がこの期に及んで気が付いた、自分の本心とは…。
これまで彩菜は、経済力のある直人を“安定くん”、一目惚れした蓮を“ときめきくん”、そして昔からの友達だった大輝を“相性くん”と内心で名付けていた。
直人、蓮、大輝を天秤にかけた交際。
それはまるで、「女にとって結婚に必要なものは“安定”か“ときめき”か“相性”か」というクエスチョンそのもののようにも思えた。
そして大輝は、そのことをすべて知っている。知った上で“3番目の男”として彩菜と付き合ってくれていたのだから。
彩菜は、大輝の言葉を素直に認めた。
「実は、そうなの。別れたあと、直人から『彩菜は結婚するのにはちょうどいい相手だと妥協していた』って言われたの」
「へー、彩菜と一緒だ」
こわばっていた大輝の表情が、しだいに緩んでくる。それにつられるようにして、彩菜の話し方も滑らかになっていった。
「蓮さんからは『与田さんは本命の相手ではなくて“ときめき”を感じるだけの相手だった』って言われた。私以外に恋人がいたみたい」
「彩菜とまったく一緒じゃん」
「そう。付き合う相手は自分を映す鏡だって言うけど、まさにそうなの。二人が私を見る目は、私が二人を見ていた印象とまったく一緒なの」
「だから、俺が彩菜に抱いていた印象も知りたいんだ?」
彩菜はゆっくりと、大きく頷いた。
「失礼を承知で聞きます。『相性』のこと以外に、私について大輝が感じていたことを教えてください」
腕組みをした大輝は、しばらく間を取ってから答える。
「…ごめん。それは出来ないかな」
「えっ」
彩菜の申し出は、あっさりと拒絶されてしまった。
「他人を頼りにするのは良くないよ。自分の恋愛の反省だよ?まずは彩菜自身が、俺と恋愛してどう思ったのか、考えた方がいい。それを聞いてから、俺の本音も伝えるよ」
諭すように言われ、内心では大輝にひれ伏していた。
―ごもっとも。おっしゃるとおりです。
「今、ここで考えた方がいい?」
彩菜が尋ねると、大輝はかぶりを振る。
「今じゃなくていい。いつでもいいよ。この店は俺が会計しておくから、残って考えてみて。考えがまとまったら連絡してよ。そのときは、すぐに会うからさ」
そこで彼は、やっと笑顔を見せたのだった。

彼が会計して店を出ていったあとも、彩菜はひとりで店に残り、考えた。
―私にとって、大輝は相性抜群の相手だった。
それは間違いない。学生時代に出会い、仲の良い友達となり、一線を越えてしまった夜も一度きりで、その後も友情は続いた。
嫌なことも、不快な思いも、まったくなかった。
だからこそ、「3番目でもいいから付き合いたい」と突然言われたときも、驚きはあったが、すんなりと受け入れることができたのだ。
そうして次第に、直人とも蓮とも交際を続ける中で、大輝の良さばかりが際立っていった。気づけば、大輝こそが結婚相手だと思うようになっていった。
蓮に抱いたような“ときめき”は、いつか消えてしまうかもしれない。
直人が持っていた“安定”という名の経済力もまた、パートナーと二人で頑張っていれば、いつか得られるものかもしれない。
だが大輝と共有していた“相性”は、そう簡単に手に入るものではない。
ゆえに大輝こそが…。
そこまで考えて「いや、ちがう。そういうことじゃない」と彩菜は思考をストップさせる。
―どうして私はこうやって、物事を難しく考えてしまうんだろう?
恋愛だからシンプルに考えればいい。
大輝のことが好きだと気づいた。それだけでじゅうぶんではないか。
今までは「友達」という関係を盾にして、誤魔化していた。「彼氏」として付き合えば、いつか別れてしまう。大輝を失いたくなかったから、自分の本当の気持ちに蓋をして、「友達」を続けていた。
―私は一線を越えてしまった夜から…ううん、本当はそれ以前から、大輝のことが好きだったんだ…。
今考えてみれば、天秤恋愛“3番目の男”として大輝と付き合うことになったあとも、「相性の良さ」という言葉をふりかざすことで、本心を誤魔化していただけだったのかもしれない。
ー相性じゃない。運命だった。
大輝は“相性くん”ではなく“運命の相手”だった。
それに気づいていたのに、気づかないフリをしていたのだ。
本当はずっと前から答えが出ていたのに、その答えに自信がなくて、直人や蓮をダシに使っていた。
大輝が好きなのに、直人や蓮と比べなければ、それを素直に認めることすらできなかった。
彩菜の一世一代の告白。しかし大輝は、悲しい答えを出す…!
「連絡をくれたら、すぐに会うとは言ったけど、店を出てから10分も経ってないんだけど?」
大輝は笑いながらそう言った。
自分の本心に気づいた彩菜はいてもたってもいられず、すぐに大輝に連絡をしてしまったのだ。そして彼は、快く店に戻ってきてくれた。
「俺と恋愛してどうだったか。考えがまとまったの?聞かせてほしい」
うながされて、彩菜は真摯に想いを伝えた。その間、大輝はただただ静かに耳を傾けていた。
頭を整理し、考えをまとめて、つとめて冷静に話すつもりだったが、言葉を紡いでいくと次第に感情が溢れ出てしまう。
「とにかく大輝のことが好きだって気づいた。いまさら遅いけど」
「そっか…」
「『もう一度、付き合ってほしい』なんて言わないし、言えない。でも大輝と恋愛して、ずっと好きって気持ちを我慢してたんだって気づいた。だから、それだけはどうしても伝えたかった」
大輝は、穏やかな笑みを浮かべて聞いていた。そして頷くと、大きく息を吐いてから語りだす。
「ありがとう。正直に想いを伝えてくれたから、俺も正直に答えようと思う。まずは…彩菜と付き合えて本当に良かった」
その様子は、丁寧に言葉を選んで話しているように見えた。
「俺もずっと彩菜が好きだった。友達だから、付き合っちゃいけないって思いながらも、心のどこかではずっと惹かれてた。だから、彩菜が複数の男性と同時に付き合って、天秤にかけて、結婚相手を見つけるって聞いて…黙っていられなかった」
「うん…」
「で、付き合ってみて…まあ、いろいろあって…最終的には男としてのプライドがズタズタになって、正直疲れちゃって…」
「ごめんなさい」
「いや、謝らないで。こうなることも覚悟してたから、仕方がない。とにかく俺は『彩菜のことがずっと好きだった』と気づけて良かったと思ってる。それは彩菜の想いと一緒だよ」
胸が痛くなってしまい、彩菜は思わず俯いた。
「でも俺の場合はそれだけじゃない。もっと大事なことに気づいた」
ーもっと大事なこと…?
大輝が何を語ろうとしているのか、まったく予想がつかなかった。彩菜は首を少しかしげて、言葉の続きを待つ。
「今から言うことは、彩菜を嫌な気持ちにさせるかもしれない。だけど聞いてほしい。もしかしたら彩菜も、まだ気づいてない本心かもしれないから」

「俺が彩菜を好きになったのは“消去法”なんだ」
「えっ」
ショッキングな言葉に絶句した。だが、大輝は取り繕う様子もなく淡々と説明している。
「言い方は悪いけど、“消去法”以外に適切な言葉が見つからないから“消去法”って言うしかないんだけど…」
「…消去法」
彩菜はうわ言のように呟いた。
胸がギューッと締めつけられていく。自分でもどういう表情をしているか分からない。しかし視界が滲んでいくことだけは理解できた。
―私、泣いている。
もはや大輝を真っすぐ見ることもできない。
「俺だけじゃない。彩菜もそうだと思う。俺たちは“消去法”で互いのことを好きになったんだ」
涙を浮かべている彩菜に向かって、彼は容赦なく、きっぱりと言った。
「そんな二人が最初からうまくいくはずもない」
▶Next:3月1日 日曜更新予定
次週最終回。消去法の意味とは? 天秤恋愛に手を出した女・彩菜は、最終的にどうなるのか…。

