【太田 差惠子】高級老人ホームに「田舎親」を入居させたら大後悔した3つの理由 家族が破綻する

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介護の「落とし穴」

核家族化が進んで家族の人数が減ったことで、どの家庭も「介護ができない事情」を抱えています。

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それなのに現在の入院期間は非常に短くなっています。これは患者が長期間入院すると病院の収入が減る仕組みになっているためです。

しかし、高齢の親が支援や介護を必要とする状態なのに「退院」を急かされると、家族は「どうしよう、誰が看るの?」という問題を突きつけられることに……。

このとき時間的猶予がなく、情報もないまま、「ええい、ままよ」とことを進めたことで大きな落とし穴がハマってしまって……という事例は後を絶ちません。

大失敗したタダシさんのケースを紹介します。

脳梗塞で倒れた母

タダシさん(55歳:仮名、東京都在住)には故郷岡山で1人暮らしをする母親(85歳)がいます。3年半前のこと、母親は脳梗塞で倒れました。早期発見、治療が功を奏し、リハビリ病院に転院後、不安定ながらも杖をつけば1人で歩けるところまで回復しました。

「回復したとはいえ脳梗塞は再発しやすいと言われました。それに、いかんせんおぼつかない足取りで……」

タダシさんは母親を実家に1人で戻すことはできないと考えました。かといって、東京のタダシさんの自宅に呼び寄せるのも現実的ではありません。

母親の部屋を用意することはムリだし、百歩譲って連れてくることができても、共働きで母親を看ることなどできません。

老人ホーム

タダシさんは千葉県内で暮らす弟と2人兄弟です。同じく弟も会社員。

「弟と相談して、有料老人ホームを探しました。東京のホームより、実家近所のホームのほうが料金的に安いことが分かりました。それはそうですよね、土地の価格も人件費も違いますから。それでも、何だかんだと月額18万円近くかかります」

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母親の年金は月々6万円ほど。その差額は12万円と少なくない金額でした。

「ただ、母親の弱り具合から、もっても、あと2年ぐらいだろうと考えました。そこで、弟と月に6万円ずつ出し合って、母親にはホームに入居してもらうことにしたのです」と、タダシさんは話します。しかし、そこに大きな誤算があったのです。

どんどん元気になる母親

母親は岡山の有料老人ホームに入居しました。最初は「家に帰りたい」と文句を言っていましたが、次第にホームに馴染み、友人もできたそうです。

1人暮らしのときとは違い、3食しっかり食べます。施設でのリハビリやレクリエーションにも参加するせいか、母親はどんどん元気になりました。筆者がタダシさんと会った時、想定していた2年を軽くオーバーしていました。

「元気になったのは結構なことですが、月々6万円を支援するのは2年間の計算でした。そろそろ経済的に限界です」とタダシさん。

月に1回は母親に会いに行くので、その交通費もかかります。

100歳まで生きると、さらに「2000万円」…

タダシさんの声は上ずっていました。

「母親の死を願っているわけではありません。でも、このままではこっちが経済的に破綻します」――。

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日本では100歳以上の高齢者が7万人を超えています。タダシさんの母親も100歳超まで生きる可能性はあります。月6万円の援助をあと10年続けると720万円。15年だと1000万円を超えます。弟の分と合わせると2000万円超です。

当然のことですが、有料老人ホームの月額利用料を支払えないなら、退去となります。

通常、退去となっても、一旦施設に入って生活していた親を在宅に戻すことは躊躇します。そこで、特別養護老人ホーム(特養)に移ってもらうことを考えます。特養などの介護保険施設には、所得が低いと料金が軽減される仕組みがあるからです。介護費、食費まで含めて月額6万円くらいで済む場合もあります。

しかし、タダシさんの母親は介護保険で「要介護2」。原則、特養は「要介護3」からしか申し込めません。

では、タダシさんは母親を自宅に連れてくるしかないのでしょうか。

「老人保健施設」という選択肢

このケースでは方法があるとすれば、所得によって利用料が軽減される介護保険施設の1つの「老人保健施設(老健)」に申し込むことです。こちらは「要介護1」から申し込むことができます。

ただしこれも万全の方法ではありません。

長期的に入る施設ではなく、滞在できる期間は3か月程度。本来、老健は入院していた高齢者が、在宅復帰を目指すことを目的としています。だから期間限定なのです。

通常、住まい続けることはできないので、自宅に戻らないケースでは、複数の老健を行ったり来たりしつつ、特養への入居を目指すケースが多いのです。

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しかし、それはご本人にとっても、家族にとっても、精神衛生上、辛いことです。

常に「次はどうなるのだろう」と不安になります。しかもタダシさんの母親は、入居中の有料老人ホームで友人もできて、幸せに暮らしていたのですから……。

タダシさんの例からは事前に親が長生きすることを前提に、プランを組み立てることの大切さがわかってきます。

親へのムリな経済的援助は厳禁

読者の皆さんは、タダシさんの二の舞を演じないように、親の余命を見誤らないようにしてください。

素人判断があてにならないのはもちろん、医師の言葉も正しいとは限りません。つい先日も、「医師から『あと半年』と言われた母親が、そろそろ3年になります」と話す人と会いました。

ムリな経済的支援はしないことも大切です。親のお金だけでは有料老人ホームの利用が困難なのであれば、多少難しいと思っても、特養に入居できるまで在宅での1人暮らしを継続してもらうことも考えましょう。

そのために地域包括支援センターがあります。ケアマネジャーと相談してさまざまな介護サービスを利用すれば、意外と1人暮らしも継続できるものです。

そして、声を大にして言いたいのは100歳超まで生きる可能性があるのは、親だけではないということ。あなた自身も、100歳、105歳と生きる可能性は十分あります。

いま、親のためにお金を使い果たすと、あなたが要介護となったとき、かかる介護費用を誰に負担してもらうのでしょう。年々、社会保障の分野は厳しい方向に向かっています。自分自身の人生設計も考慮したうえで親の介護を考えるようにして欲しいと思います。