便利機能を持て余してしまうことも

 いくらSUVがトレンドとはいえ、やっぱりまだまだ、子育てファミリーカーの花形はミニバンですよね。とくに日本人は「いざという時たくさん乗れる、たくさん積める」といった“最大公約数”を選ぶ傾向があると言いますから、ミニバンが持つその安心感を一度味わってしまうと、なかなか抜け出せないのも事実です。

 ただ、ミニバンを買ったもののあんまり活用できていない、むしろもて余してしまう……というファミリーも、なかにはいるんです。楽しく便利に乗るはずだったのに、後悔するなんて悲しすぎますよね。今回は、それがどんなファミリーに当てはまるのか、例を挙げてご紹介したいと思います。

1)スライドドア

 まず1つめは、ミニバンを買う理由の半分くらいはコレでしょうと言える、スライドドア。その便利さを享受できないファミリーの場合、後悔することが多いようです。小学校低学年くらいまでの子供がいると、自分でヒンジドアを開け閉めして安全に乗り降りすることが難しいので、保護者が抱っこしたり、手をつないで乗り降りさせるにはスライドドアがとても便利。

 ドアは自動で開くし、高さも横幅も大きく取れるし、ステップがあるから体を折り曲げる必要もないし、風が強い日に手で押さえなくていいなど、周囲に気を使わないのもいいところです。また、機械式の駐車場や壁際の駐車枠など、ドアを広く開けるスペースが取れない場所でも助かりますよね。

 でも、子供はもう保護者が手伝わなくても安全に乗り降りできる年齢だし、家の駐車場もとくに狭くないし、というファミリーの場合は、日常であまり恩恵がないわけです。そうなると、「べつにスライドドアじゃなくてよかったんじゃ?」と疑問に思うのも無理ないですよね。電動スライドドアは、完全に閉まるまでにどんなに早くても5秒以上は待つことになりますから、ヒンジドアみたいにパッパッと開け閉めできたほうが良かった、と思うこともあるようです。

2)3列シート&多彩なシートアレンジ

 2つめは、ミニバンの謳い文句に多い3列シート&多彩なシートアレンジです。これも、4〜5人家族でチャイルドシートが必要な子供がいる場合や、中学生の息子が部活をやっていて試合の時にたくさんの部員を乗せる、なんてファミリーなら大活躍するのですが、そもそも3人家族、4人家族で子供も大きいとなると、普段はまったく3列目シートって必要ないですよね?

 なのに、なんで買った? と思うわけですが、帰省した時に祖父母を乗せて一緒に移動できたら便利かなとか、たまには友達家族とキャンプ行ったりしたいなとか、買う前は夢が膨らむものなんですよね。でも結局、3列目はずっと折りたたまれたままだったり、荷物置き場になっていたり。それなら、3列目シートがない分、荷室が使いやすいクルマの方が良かったじゃん、ということになってしまうわけですね。

大きそうに見えるがフル乗車をしてしまうと荷物が積めない

3)リビングルームのような室内空間

 3つめは、リビングルームみたいに広大な空間もミニバンの魅力なので、家族そろって出かける際にはみんながゆったり過ごせて、快適なドライブになります。でもこれが、家族みんなにそれぞれ予定があって、なかなか一緒に出かけないファミリーの場合だと、いつも広大な空間にポツンとひとりきりでドライブ……という事態に。

 ボディが大きく重たい分、燃費も軽自動車やコンパクトカーには及びませんし、夏のエアコン、冬のヒーターも適温にするには効率が悪く、音楽を聴くにも外部からの雑音が多くなってしまいます。そうしたなかで運転していると、だんだん「ミニバンじゃなくても良かったな」と後悔してしまうようです。

4)思ったほど荷物が積めない

 4つめは、これはミニバンの盲点でもあるのですが、「思ったほどたくさんの荷物が積めない」問題。確かにミニバンは大きな荷室もウリにしていますが、それは大前提として3列目シートを倒した状態、もしくは2列目シートまで倒した状態で、これだけ積めますよ、というアピールが多いのではないかと思います。

 私も昔、7人乗りだからと1泊2日のスノーボードに7人で行くことにしたら、どうやっても7人分のボードと荷物が積めなかった、という大失敗をしたことがあります(笑)。そう、フル乗車をしてしまうと、ほとんど荷物は積めないのです。海へ山へと大人数で出かけて楽しみたいからミニバンを買ったのに、こんなことならSUVにしておけば良かった、なんて後悔することになってしまうので要注意です。

5)走りが物足りない

 さて、5つめは昔から、とくにパパが最後までミニバン購入に抵抗する理由としても定番ですが、やっぱり運転そのものを楽しみたい人には、ミニバンは物足りないですよね。スイッチ一つで「スポーツモード」に切り替えられるミニバンなんかもありますが、そもそもボディ形状的に空気抵抗は大きいし、重心は高いし、スライドドアの部分がぽっかりと開いているから剛性だって不利だし、気持ちよく走れる要素は皆無に近いですからね。

 それでも技術の進化とともにミニバンの走行性能が上がってきて、運転支援技術が搭載されているモデルも増えていますので、高速道路をながすと気持ち良かったり、安定感が増してロングドライブが快適になったりしています。でも相変わらず、市街地のストップ&ゴーや山道などでは、ストレスを感じてしまうことも。なので優先順位でどうしても「走りの楽しさ」が上位にくるようなら、ミニバンを買っても後悔してしまいそうです。

 というわけで、皆さんは当てはまる項目がありましたか? スライドドア、広い室内、3列目シート、それらを本当に必要としていますか? もしこれからミニバン購入を考えていて、1つでも当てはまる項目があったとしたら、もう一度、ちゃんと家族会議をしてみることをオススメします。