金利よりも「推し」で選ぶ時代? 韓国大手銀行が仕掛けるスター戦略と巨額の出演料
韓国のスターたちが手にする広告出演料が、破格の水準にまで高騰している。
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年間30億ウォン(日本円=約3億円)規模に達するK-POPスターをはじめ、1本あたり10億ウォン(約1億円)以上とされる国民的スポーツスター、さらには年12億ウォン(約1億2000万円)程度と伝えられる人気俳優までが存在する。
先日、韓国ではとあるメディアが銀行広告における出演料の推定額を具体的に書き立て、大きな話題を呼んだ。
通常、スターの広告料は契約条件によって異なるため、明確な金額が公にされるケースは珍しい。メディアによる報道でも、「業界最高水準」や「数億ウォン台」という抽象的な表現が使われるのが一般的だ。
それゆえに、今回判明した具体的な数値は人々の目を引く。その舞台となっているのが、韓国の銀行広告である。
以前の銀行広告といえば、安定性や信頼感、誠実なイメージを打ち出すために単一のモデルを起用することが主流であった。しかし昨今では、俳優やアイドル、スポーツ選手、歌手、タレント、さらには映画監督の夫妻に至るまで、多種多様な有名人を同時に起用するマルチスター戦略が普及している。
韓国メディアは、こうした動向を「金利競争を超えたファンダム競争」と表現している。
巨額の出演料が動く銀行広告の実態その中で最も注目を浴びているのが、やはりG-DRAGONだ。
『ファイナンシャルニュース』が報じたところによると、ハナ銀行はサッカー選手のソン・フンミンやIVEのユジン、歌手のイム・ヨンウン、タレントのカン・ホドン、そしてG-DRAGONといった特A級のモデルを数多く抜擢している。
広告業界の推定では、その中でもG-DRAGONの年間広告料は30億ウォン規模に上り、業界トップクラスと目されている。30億ウォンは、日本円に換算すると約3億円という巨額だ。

当然ながら、これは契約書に明記された確定値ではなく、あくまで業界内の推測値として捉えるべき数字である。それでも、金融機関がこれほどの高額を投じてまで彼を起用する理由は明快だ。
G-DRAGONはただのアーティストにとどまらない。K-POPの象徴であり、ファッションを牽引する存在でもあり、ブランドそのものの格調や話題性を高められる希有な人物だ。銀行広告のように商品そのものでの差別化が困難な領域において、彼の名前が出るだけで広告自体がニュースバリューを持つ。
銀行側が求めているものは、彼が擁する強固なファンダムや圧倒的な拡散力、借用できるブランド価値にほかならない。
破格の契約金を提示されているのは、G-DRAGONだけではない。KB金融は、フィギュアスケートの女王であるキム・ヨナや、女優のパク・ウンビンとの契約を継続している。『ファイナンシャルニュース』によれば、広告界においてキム・ヨナの出演料は1本で10億ウォン以上、パク・ウンビンは年間で最低でも7億ウォン(約7000万円)程度と見積もられている。
キム・ヨナは、現在でも韓国国内で絶大な信頼を集める存在である。スポーツ界のスターでありつつ、広告を通じてクリーンなイメージや品位、国民的な好感度を同時に表現できる。銀行が重視する信頼と安心感を体現するのに、最も適したスターの一人と言える。

新韓銀行のモデルを務めるパク・ボゴムも、年間12億ウォン程度に達すると報じられた。彼は俳優としての人気のみならず、誠実かつ柔和な印象が定着している。金融機関の広告においては、きらびやかさよりも堅実さが求められる局面も少なくない。そうした背景から、彼の広告価値が高く評価されるのは自然な流れだ。
さらに、ドラマ『21世紀の大君夫人』の出演で脚光を浴びた俳優のビョン・ウソクの動向にも関心が集まる。
NH農協銀行は、キアン84や俳優のパク・ジフンらを新たに起用している一方で、従来のモデルであるビョン・ウソクに関する話題も上っている。報道によれば、彼は作品のヒットを受けた2025年に出演料が従来の2倍へと急騰し、1年を基準として10億ウォンほどに達したという。これは、作品の成功が広告市場における価値を瞬時に引き上げる典型的な事例だ。
ドラマをきっかけに人気に火がつけば、広告業界での評価額も塗り替えられる。ビョン・ウソクの事例は、現在の韓国エンターテインメント界において、スターの市場価値がいかに急速に上昇するかを物語っている。
銀行広告において影響力を拡大しているのは、俳優やスポーツ選手にとどまらない。K-POPアイドルもまた、現在の銀行広告を象徴する重要な役割を担っている。
ハナ銀行はIVEのユジンを抜擢しており、広告業界では彼女の年間出演料が約7億ウォンと推測されている。また、ウリ銀行はIVEのウォニョン、ウリ金融はIUとそれぞれ契約を結んでいる。さらにKB国民銀行は、年間で3億5000万ウォン(約3500万円)を上回るとされるガールズグループのHearts2Heartsを起用中だ。
金融機関がアイドルを重用する理由は明快である。若い世代によるアプリの利用促進や、ブランドの知名度向上、SNS上での拡散、そしてファンダムのリアクションが、現代の金融界における競争で欠かせない要素となっているためだ。
銀行の広告は、単に信頼性をアピールする場から、それぞれの世代のファンダムを囲い込むための舞台へと変貌を遂げつつある。

このようなスターの囲い込み合戦の背景には、銀行が投じる広告宣伝費そのものの増大が存在する。
各種報道によれば、2025年における韓国の5大市中銀行による広告宣伝費の総額は、初めて8000億ウォン(約800億円)の大台を突破した。さらに、金融持株会社まで合算した広告宣伝費は、総額1兆1649億ウォン(約1160億円)にのぼったとされる。
銀行別の内訳を見ると、ハナ銀行が1776億ウォンで首位となり、次いでウリ銀行が1673億ウォン、新韓銀行が1576億ウォン、NH農協銀行が1458億ウォンを記録した模様だ。
『マイデイリー』も、銀行の広告展開が「ファンダム競争」の局面を迎えていると分析している。
同メディアの指摘によると、各銀行はこれまでの保守的なイメージを脱却し、アイドルやスポーツ選手、タレント、さらには映画監督の夫妻までを並行して起用している。1人のモデルに頼る従来の手法から、ターゲットとなる世代や趣味嗜好に応じて異なるキャラクターのモデルを並行運用する方針へ転換している模様だ。
金利の設定だけでは他社との差別化が難しくなった昨今、アプリの操作性やブランドへの愛着、若年層の取り込みこそが競争の鍵を握る。そのために、スターが持つ影響力が不可欠となっている。
著名人の認知度を借りて注目を集め、ファンを牽引し、SNSでのバイラル効果を生み出すことで、お堅い金融ブランドを身近に感じさせる。その実現のために支払われる広告費用が、数億ウォンから十数億ウォン、最高峰のクラスでは30億ウォン規模にまで高騰している。
しかしながら、莫大な費用を伴うスターの起用には相応のリスクも付きまとう。広告を担うモデル個人のプライベートな問題が、金融機関のブランドイメージに飛び火する恐れがあるからだ。
『ファイナンシャルニュース』の報道では、新韓金融がチャウヌの税務に関する議論や、キム・スヒョンをめぐる騒動、NewJeansの内部紛争などによって、対応に苦慮した事例が挙げられている。著名人を起用すれば大きな話題性を獲得できる反面、その人物に不祥事や法的なトラブル、イメージダウンが生じた場合、銀行もその影響を免れない。とりわけ信頼を第一とする金融機関において、モデルが抱える問題はブランドの根幹を揺るがすリスクとなり得る。
それにもかかわらず銀行がスターの起用を継続するのは、もたらされる恩恵が極めて大きいからに他ならない。宣伝コストが増大したとしても、若年層の新規開拓やブランド認知の向上、アプリのダウンロード、SNSでの拡散といった成果に結びつくのであれば、金融機関にとっては価値ある投資となる。
さらに、この獲得競争が過熱すればするほど、スターたちの広告価値は一段と引き上げられる。
現在の韓国において、銀行広告は単なる堅苦しい金融商品の宣伝にとどまらない。それはスターの背後にいるファンダムを奪い合う戦いであり、同時にトップスターたちのブランド力を証明する指標として機能している。
今や銀行という組織さえもが、スターの力を頼りとする時代を迎えている。
(記事提供=スポーツソウル日本版)
